2001年1月12日(金)
ウィリー・ディクスン「ビッグ・スリー・トリオ」(SME)
身も心も疲れはてて家にたどりついたとき、一杯の酒を掌中に耳を傾ければ、「まあ、気分をかえて、明日もがんばろうか」という気にさせてくれるのが、このアルバムである。
シカゴ・ブルース界の名プロデューサー、ウィリー・ディクスンにも現役プレイヤーだった時代があり、数々のレコーディングを残している。
それが、この「ビッグ・スリー・トリオ」である。
ピアノと歌のレナード・”ベイビー・ドゥ”・キャストン、ギターとコーラスのバナード・デニス(のちにオリー・クロフォードに代わる)、そしてベースとコーラスのウィリー・ディクスンの3人組は、1946年から52年にかけて、レコードそして巡演で大人気を博していた。
そのサウンドはブルースとジャズがまだ完全に分化しておらず、けっこうポップスっぽい要素もあり、後年のディクスンが生み出したハードなシカゴ・ブルースを期待して聴くと見事にズッコケるが、それはそれでなかなか聴きごたえがある。
特にキャストンの気合いの入ったスウィンギーなブギウギ・ピアノと、ディクスンのパーカッシヴなスラップ・ベース(パチンパチンとスナップをきかせた奏法)のかけ合いはなかなかカッコいい。
バラードあり、コミカルなノヴェルティ・ソングあり、もちろん、ディープなブルース曲もある。三人の息の合ったコーラスもまた、このグループのウリだ。美しいメロディ、生き生きとしたリズム、豊かなハーモニーがこの一枚につまっている。
いい音楽にジャンルわけなんて不要、このアルバムを聴くとそう思う。