maruの下手の横好き写真とつぶやき
写真を撮ったり、音楽(クラシック・ロック)をよく聴き、読書は古典(主に哲学中心)がメインです。全体主義社会の動きに警戒。
 



最近読んだ本

脳は世界をどう見ているか

結構前から本屋で見かけていて、いつか読んでみようと思っていた本です。あのワクチンで一部から冷ややかな目でみられているビルゲイツも満足した本ですが、目的はそちらではなく、仏教の唯識思想との兼ね合いで、読んでみようかなと思った訳です。

唯識の考え方では、人間が物事を見ると、その映像が人間に入り込んできますが、そこには意味もなにもなく単なる映像であって、心の深層部分にある阿頼耶識がそれに対して情報を追加、さらに末那識が利己的な味付けをする事で、判断していく・・・まあ、大きくとらえるとこうなるかな・・・と。


同じ花を見ても、綺麗だと思う人もいれば、単なる花で特に印象も持たない人もいる・・・カントの純粋理性批判も似たような事を言っており、さらに脳科学の研究で似たような事が分かってきたのは知っていたので、本で読んでみようとなるわけです。

脳内の情報処理でも、目で見たものは単なる電気信号で、しかも歪んだ映像になっていて、そこから大脳新皮質へ送られ、そこでの神経ネットワークで色々な情報や判断が追加されていメカニズムは、非常に興味深かったです。

新皮質の構造や、神経ネットワークの話から、物事を予測する仕組みや、座標系を持って行動するメカニズムなど、最新科学の雑学本としても楽しい。脳は新しい部分の大脳新皮質が70%を占め、知性や理性を担い、残りの古い部分は欲望や本能みたいな原始的な部分を担っている。

そして、今のメディアでも大きく取り上げらている人工知能はまだ不完全なもので、人間のように新たな情報が入ってきても、さらに自分で考えて処理できるようなものではないので、これからの課題だという事です。そこまでなら、知的好奇心を得られてよかったなと言う本ですが、そこから先の後半部分では読む人によって判断が分かれてきそうです。


人工知能を完全なものにする為に、まさしく人間の脳をリバースエンジニアリングで再現するのが目標で、人間にとっても役立つ事だと考えています。最新の脳科学者が考えている事が、これでした。疑似脳を作る・・・

火星に人間を送り込むのは寿命のある人間だけだと大変なので、進化した状態のロボットを使えば、何か問題が起きても対処できるし、管理する人は必要かもしれないけれど、作業効率も上がるという例を引き合いに出して、人間の未来(著者は恐らく近い将来に地球に住めなくなる事を想定している)に役立つという訳です。

さらに、地球文明の記録という面から、宇宙に情報発信するにも役立つと。確かにそうなんですけれど・・・そこまで人工知能が発達した場合の、社会的・経済的な影響については、スルーしていたので物足りなかったです。後の事は経済なり他の専門家が考えてという事でしょうか。

与える影響の大きさから考えると、ちょっとコワイ話ですが、著者は楽観論の立場です。脳科学者の立場からは、自分の関心ある分野を突き詰めていきたいのは分かりますが、それが与えるポジティブな影響だけしか見ていない(これ、ワクチンにも言える)。科学者という存在が、自分の立場から未来を考える時、得てしてネガティブな影響については過小評価してしまう典型に思えるのです。

著者曰く、人間の世界で戦争や権力争いのようなものが終わらないのは、脳の古い部分が持っている欲望や本能があるからだという。この研究に警鐘を鳴らすのも、古い考え方であって、著者の考える新しい脳の部分を使えば問題ないという考え方のようです。少しは反論も認めているようではあるけれど、大筋こんな印象でした。

気付くと、自分の思考と違う人を排除しようという最近の思考パターンが目に浮かんでしまう。そのうに、古い部分を人工的に制御する方法なんてのを考えるんじゃないかな・・・今の世界をリードしているリベラルっぽさが全面に出ている気がする。

人間にとって、脳の機能が分かるという知的好奇心は抗えないものがあるのですが・・・人間の体について、何もかも科学で丸裸にする必要があるのかな?とか思ってしまう。

ただ、進化を止める事もできないし、難しい。現代になって、科学万能主義みたいな世の中になり、文系分野は終わった感がありますが、科学は万能ではない(と分かっているのに、科学を信仰してしまっているのが今の世界)です。科学の進歩に哲学や思想が追い付いていない今は、危険がいっぱい。著者がオルテガの言うような科学者の大衆でない事を祈る。

この著者の言うような未来が来たら、人間幸せになれるのか? 違う気がします。これは科学ではないので、話が合うはずもない・・・
読み終わったときに感じたのは、そんな事でした。ますます、生きるとは?みたいな事を考えてしまう・・・



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本当に、本当に多くの人が、

健康が生きる目的になっている・・・

健康は手段ですよね・・・



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