ようやく編纂中だった「にしてつポストカードブック」シリーズ3冊が
印刷へ廻った。校正刷りの段階で納得がいかず二転三転、最新の製版技術
である「FMスクリーニング」を採用したことで思わぬ苦労もしたが、そ
れでも写真が命の本だけに納得のいく仕上がりとなりそうである。
従来のカラーオフセット印刷は網点が大きく均一であるため、青や赤な
ど版が0.1mmでもズレると、モアレと呼ばれる斑模様のようになってい
た。また細部までなめらかなトーンの表現が難しく、写真プリントのよう
な仕上がりは夢の夢であった。それがFMスクリーニングでは再現できる
訳である。網点は簡単に言えばインクジェットプリントの細かいドットと
同じで従来の網点と比べるととにかく細かくランダムに並ぶ。
そうしたことで、従来は重ね版をすると黒が勝っていたものが、馴染ん
でしまい各色が自己主張しすぎて色味の調整が必要となった。納得いく色
味と写真のしまりは数回目の色校正でやっと確認。印刷会社にはとても苦
労をかけてしまった。
今回の3冊は、戦後の写真プリントからのアーカイブデータを活用した
ものと、戦前の絵葉書からスキャンして画像補整したものを併用した。そ
こで確認できたのが、戦前の写真絵葉書は石版刷りなどが多いことで製版
そのものは今回のFMスクリーニングとほぼ同一、非常に細密なドットで
構成されていたことである。
大量印刷を可能にしたオフセット印刷であるが、印刷画質は戦後60年
を経てやっと昭和初期並になったということだろうか。大正初~後期、関
東大震災以前の絵葉書やカラー刷りのポスター、商船会社などのパンフが
今も色鮮やかに残る理由がそこにある。吉田初三郎の手がけた鳥瞰図折図
は昭和になってオフセット印刷が導入されてもそこに拘った。
今、当時の初三郎折図を複製復刻しようとしても、当時の色彩や細部ま
で拘ったトーンを完全には再現できない。現在の印刷は通常は4色刷り、
頑張ってもせいぜい8~10色刷りである。特色インクを多様し、まるで
浮世絵のように10数版を重ねて印刷していた初三郎鳥瞰図を同じように
再現するには、印刷原価も製版補正技術も相当頑張らねばならず、複製品
は多く発行されているが納得いく仕上がりのものは殆ど無い。
今回のポストカードブックは実は自費出版である。手を上げてくれた出
版社もあったが、悩んだ末に自社で出版することにした。当然リスクを抱
える訳であるが、出版を薦めていただいた周囲の方々の御尽力のおかげで
書店ルート以外で発行部数の3分の2がすでに販路が確定。直販の予約も
好調で、動いてサンプルを見せると5~10部単位で買取してくれ、気が
つけば書店用となる残数がギリギリであった。
まだ通常の書店ルート(販社を通さず直接交渉)は2件だけ依頼。それ
以外の西鉄さん関係(駅売店やインキューブなどグループ各社)、協力先
のウイッツジャパンさんルート、ブラジレイロなど地元博多の喫茶店や菓
子店などで店頭に扱ってもらう。今回はネット書店ルートも試みようと思
っていたが、最低限のテスト販売に留まりそうだ。
ポストカードブックシリーズ解説・予約
10日の鉄道友の会「ローレル賞」受賞式に間に合わせての発売である
が、結果としては絶妙のタイミングかも、と思っている。今日3日からは
「ALWAYS・続・三丁目の夕日」も公開。まさに今回のポストカード
ブックには昭和30~40年代の福岡・博多のまちを走っていた路面電車
と沿線風景、そして急行電車の相性で親しまれていた懐かしい西鉄電車が
多数掲載されている。
なぜその写真を選んだか、厳選した各24枚の写真は詳細に理由を解説
した。1枚の写真に盛り込まれた「物語」があるかどうか、それが選ぶ理
由である。今回選んだ写真はそれぞれ、2~5つのストーリーが盛り込ま
れている。
例えば、福岡と博多を結ぶ西大橋を渡る市内電車、それを見送る人々の
後ろには懐かしい映画館やホテル群。その一つがマリリン・モンローとジ
ョー・ディマジオ夫妻が新婚旅行で宿泊した国際ホテル。彼らが宿泊中に
通ったのが今のロイヤルホストの最初のお店である、中洲川縁の花の関ビ
ルにあったレストラン「花の木」という具合。
それぞれの掲載写真の解説は、発売日に合わせてサイトで紹介予定。ス
ペースの関係から、ポストカードブックには「物語」の1編しか収録して
いないが、サイトに掲載する内容と合わせれば、これを見せながら人に話
すだけで「博学」になれること間違いなし(笑)。とくに居酒屋やスナッ
クではモテるかもしれない…(保障なし!)。
各3000部限定、すぐに売り切れても増刷は一切無し!次のシリーズ
の用意にすでに掛かっている。まずはサイトで予約するか、西鉄さんの売
店などで多くの人に見てほしい。サイトからの予約には特典・未掲載ポス
トカード2種プレゼント。
今日の写真は、昭和戦後編(20~50年代編)掲載の1枚。西鉄さん
等所蔵の写真は掲載許可が別途必要なため、私の所蔵品で勘弁を!
場所は博多・土居町の通称「博多銀座」。昭和28年、復興し最盛期を迎
えた頃である。左手の重厚なビルは今、博多座がある場所。旧西日本銀行
ビルである。福岡大空襲ではここで多くの市民が空襲の犠牲になった。か
の故村田英雄さんは生き残り者だったように記憶。犠牲者を祀る「じゅう
ご地蔵」は地元民が設立。今は寺が西区へ移転してしまい、地元には無い。
「じゅうご」は西日本銀行が「第十五銀行」だったことに因むもの。
電車に目を向ければ、ちょうどポール式からパンタグラムへの変換時期
で、すでに電線はパンタグラム用に切り替わっている微妙な時期の撮影。
撮影・発行者は右手に映っている大崎周水堂、この後すぐに場所を現在地
(博多銀座の東角・土居町交差点)へ移転し盛業中。
と、この1枚について少し書いただけで解説は10行、エピソードは4つ
になる訳である。
アンティーク絵葉書に観る懐かしの風景・町並み
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鳥瞰図絵師・前田虹映
オールド地図鳥瞰図コレクション・吉田初三郎ほか
印刷へ廻った。校正刷りの段階で納得がいかず二転三転、最新の製版技術
である「FMスクリーニング」を採用したことで思わぬ苦労もしたが、そ
れでも写真が命の本だけに納得のいく仕上がりとなりそうである。
従来のカラーオフセット印刷は網点が大きく均一であるため、青や赤な
ど版が0.1mmでもズレると、モアレと呼ばれる斑模様のようになってい
た。また細部までなめらかなトーンの表現が難しく、写真プリントのよう
な仕上がりは夢の夢であった。それがFMスクリーニングでは再現できる
訳である。網点は簡単に言えばインクジェットプリントの細かいドットと
同じで従来の網点と比べるととにかく細かくランダムに並ぶ。
そうしたことで、従来は重ね版をすると黒が勝っていたものが、馴染ん
でしまい各色が自己主張しすぎて色味の調整が必要となった。納得いく色
味と写真のしまりは数回目の色校正でやっと確認。印刷会社にはとても苦
労をかけてしまった。
今回の3冊は、戦後の写真プリントからのアーカイブデータを活用した
ものと、戦前の絵葉書からスキャンして画像補整したものを併用した。そ
こで確認できたのが、戦前の写真絵葉書は石版刷りなどが多いことで製版
そのものは今回のFMスクリーニングとほぼ同一、非常に細密なドットで
構成されていたことである。
大量印刷を可能にしたオフセット印刷であるが、印刷画質は戦後60年
を経てやっと昭和初期並になったということだろうか。大正初~後期、関
東大震災以前の絵葉書やカラー刷りのポスター、商船会社などのパンフが
今も色鮮やかに残る理由がそこにある。吉田初三郎の手がけた鳥瞰図折図
は昭和になってオフセット印刷が導入されてもそこに拘った。
今、当時の初三郎折図を複製復刻しようとしても、当時の色彩や細部ま
で拘ったトーンを完全には再現できない。現在の印刷は通常は4色刷り、
頑張ってもせいぜい8~10色刷りである。特色インクを多様し、まるで
浮世絵のように10数版を重ねて印刷していた初三郎鳥瞰図を同じように
再現するには、印刷原価も製版補正技術も相当頑張らねばならず、複製品
は多く発行されているが納得いく仕上がりのものは殆ど無い。
今回のポストカードブックは実は自費出版である。手を上げてくれた出
版社もあったが、悩んだ末に自社で出版することにした。当然リスクを抱
える訳であるが、出版を薦めていただいた周囲の方々の御尽力のおかげで
書店ルート以外で発行部数の3分の2がすでに販路が確定。直販の予約も
好調で、動いてサンプルを見せると5~10部単位で買取してくれ、気が
つけば書店用となる残数がギリギリであった。
まだ通常の書店ルート(販社を通さず直接交渉)は2件だけ依頼。それ
以外の西鉄さん関係(駅売店やインキューブなどグループ各社)、協力先
のウイッツジャパンさんルート、ブラジレイロなど地元博多の喫茶店や菓
子店などで店頭に扱ってもらう。今回はネット書店ルートも試みようと思
っていたが、最低限のテスト販売に留まりそうだ。
ポストカードブックシリーズ解説・予約
10日の鉄道友の会「ローレル賞」受賞式に間に合わせての発売である
が、結果としては絶妙のタイミングかも、と思っている。今日3日からは
「ALWAYS・続・三丁目の夕日」も公開。まさに今回のポストカード
ブックには昭和30~40年代の福岡・博多のまちを走っていた路面電車
と沿線風景、そして急行電車の相性で親しまれていた懐かしい西鉄電車が
多数掲載されている。
なぜその写真を選んだか、厳選した各24枚の写真は詳細に理由を解説
した。1枚の写真に盛り込まれた「物語」があるかどうか、それが選ぶ理
由である。今回選んだ写真はそれぞれ、2~5つのストーリーが盛り込ま
れている。
例えば、福岡と博多を結ぶ西大橋を渡る市内電車、それを見送る人々の
後ろには懐かしい映画館やホテル群。その一つがマリリン・モンローとジ
ョー・ディマジオ夫妻が新婚旅行で宿泊した国際ホテル。彼らが宿泊中に
通ったのが今のロイヤルホストの最初のお店である、中洲川縁の花の関ビ
ルにあったレストラン「花の木」という具合。
それぞれの掲載写真の解説は、発売日に合わせてサイトで紹介予定。ス
ペースの関係から、ポストカードブックには「物語」の1編しか収録して
いないが、サイトに掲載する内容と合わせれば、これを見せながら人に話
すだけで「博学」になれること間違いなし(笑)。とくに居酒屋やスナッ
クではモテるかもしれない…(保障なし!)。
各3000部限定、すぐに売り切れても増刷は一切無し!次のシリーズ
の用意にすでに掛かっている。まずはサイトで予約するか、西鉄さんの売
店などで多くの人に見てほしい。サイトからの予約には特典・未掲載ポス
トカード2種プレゼント。
今日の写真は、昭和戦後編(20~50年代編)掲載の1枚。西鉄さん
等所蔵の写真は掲載許可が別途必要なため、私の所蔵品で勘弁を!
場所は博多・土居町の通称「博多銀座」。昭和28年、復興し最盛期を迎
えた頃である。左手の重厚なビルは今、博多座がある場所。旧西日本銀行
ビルである。福岡大空襲ではここで多くの市民が空襲の犠牲になった。か
の故村田英雄さんは生き残り者だったように記憶。犠牲者を祀る「じゅう
ご地蔵」は地元民が設立。今は寺が西区へ移転してしまい、地元には無い。
「じゅうご」は西日本銀行が「第十五銀行」だったことに因むもの。
電車に目を向ければ、ちょうどポール式からパンタグラムへの変換時期
で、すでに電線はパンタグラム用に切り替わっている微妙な時期の撮影。
撮影・発行者は右手に映っている大崎周水堂、この後すぐに場所を現在地
(博多銀座の東角・土居町交差点)へ移転し盛業中。
と、この1枚について少し書いただけで解説は10行、エピソードは4つ
になる訳である。
アンティーク絵葉書に観る懐かしの風景・町並み
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鳥瞰図絵師・前田虹映
オールド地図鳥瞰図コレクション・吉田初三郎ほか