僕らはニャンコとはそういう生き物だから当然そうだろう(餌付けや環境により変わる)と思い知っているつもりであるならば、生きものである人は一体どうなのか、と自分のことを思う事までにはなかなか押し入って考えることなどしないのではないかなぁ。
人なれしたリコのように小さい体でも、この子は賢いな、餌を完食しないでいつも残して去るのは、後の誰か(猫)に残しているためだった、とかという理由は、本人は話せないから(言葉がつうじないから)分からないけれど、こちらの僕が思っているだけなのかもしれない。
けれど、彼女が去った後には必ず、しばらくして他のニャンコがくるのであった。それで残した餌をカリカリ食べて静かに消え去る。
「あのおじさんちでご飯くえるよ。いってごらんなさい。私が残して来ているから。」という会話をしたかどうかだが・・・。
そういう物語ができるように、決まってしばらくすると他のニャンコが現れるのだ。
ある日、それでも臆病な猫には、「わたしについてきなさい」とエスコートしたのかなのだが、あの茶と白のブチ色のニャンコは、リコがカリカリ食べている30センチほど離れたところで両手を揃えて黙って傍で見ているのだった。
無論、それを見ている僕の存在は二匹は分かっている。
「わたしが食べるの見てて!その後で食べたらいいよ。このおじさん、怖くないでしょ!」
そういう猫会話をしてから来たかどうかは分からないけれど、そのとおり、リコが食べて去ったあとに、その残りを体が大きく、玉々ある雄にも拘わらず、臆病な茶と白の謎ニャンコは恐るおそる食べ始める。『ブチ』と名付けることにした。
前にはカメラを向けてもさっと身を隠すほどの臆病なこの雄ニャンコはどういう生涯を過ごして来たんだろうなぁ。
その後、ある日、縁側のカーテンを開けると、ブチはニャンとも言わず一人(一匹)で、両手をついて朝食を待っていた。