つづきます。(『神の国の証人ブルームハルト親子』〔井上良雄 著:新教出版 より)
※(私見)今までの話は架空の物語ではなく、実際にその記録が残されていることです。著者は、冒頭に書きましたが、20世紀最大の神学者カール・バルト全集を翻訳された、その道の大家であり、そのカール・バルトにも決定的な影響を与えた事件であったということです。
※(〃)今まで書いた記録の間に、著者の思いが述べられており、僕らはそのまま、読んで過ぎ去ってしまう事件ではなく、今も、命あり生存している、尚且つ、死亡率100%の我々は、真摯に思ってみなくてはならないことであると同時に、信仰における敬虔さ深く思わされます。
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(今までの記録に、更にブルームハルトの「戦い」は続いていきます。)
ゴットリービン自身の苦しみは、この出来事があっても、それで終わったのでもなければ、軽減したのでもなかった。
その日の夜の十時には、再び前にもまさる苦しみが始まり、ブルームハルトが駆けつけて、彼女に祈らせると、覚醒するが、やがてまた発作が始まる。
そのような状態が継続して行く。そして、ゴットリービンは、単に悪霊に苦しめられるというだけでなく、彼女自身が悪魔と一つになって、彼女の口から悪魔の言葉が語られるようになる。
そして、ブルームハルトは、そういう悪霊たちと、会話を交わす。時には、彼女が恐ろしい形相でブルームハルトに襲い掛かろうとすることもあり、また時には、マタイ伝8章の悪霊のように、ブルームハルトに愁訴する悪霊も出現する。
さらに1843年になると、ゴットリービンの病気は、一層異常の度を加えて、砂やガラスの破片を吐いたり、普通の人間なら当然死ぬほど大量の鼻血が出て、それがいつまでも止まらないというようなことが起こる。
そして、彼女は時には全くの錯乱状態に陥って、度々自殺の誘惑に駆られて、死の寸前に至る。
彼女の病気の不可解さは、ブルームハルト自身が、「それはすべての思いや理解を超えているのだから、上に述べたことを信用しない人がいても、私は、悪く思うわけにはいかない」と、書いてるほどである。
実際、彼の宗務局宛ての「報告書」は、荒唐無稽ともいうべき奇怪な出来事に満ちていて、「これまで馬鹿馬鹿しい民衆の迷信として考えられてきたすべてのことが、童話の世界から現実に移行したような」ゾッとする気持ちだと、彼自身が言っているとおりである。
しかし、我々にとって重要なのは、そのような個々の異様な現象そのものではないだろう。むしろ重要なのは、そのような現象の背後に、ブルームハルトが何を見たかということであり、それに対して彼がどのような対応をしたかということであるにちがいない。
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・・・(この間に著書の洞察が書かれています。) ・・・つづきます。