わさびは山奥の清流で栽培されていることはご存じと思いますが、
その前に苗をつくるという大切な仕事があります。
秋から春にかけては苗づくりの時期です。
早春、わさびは一斉に花芽をつけます。
5月、その花軸が1メートル以上に伸び、たくさんの種子をつけます。
種子の入ったさやを、一つひとつ採り、更にさやから一粒一粒の種子を
丁寧に取り出します。種子は直径1~2ミリほど。
吹けば飛んでいってしまうくらい小さなものなのでとても神経を使います。
夏の間、その種子は冷蔵庫に保存しておき、
秋風が吹きはじめた頃に種子を冷蔵庫から出しビニールハウス内の苗床に蒔きます。
寒い所から出てきた種子は「春が来た」と思い、芽吹きはじめます。
米粒よりも小さな種子から発芽した幼苗は瑞々しい緑色で、
とても可愛いらしいものです。
幼苗はふとしたことで立ち枯れてしまうデリケートなものなので、
水や温度の管理にたいへん気を使います。
そうして冬の間はビニールハウス内で苗を育て、春になってから山のわさび田に苗を植え付けます。
このように種子から育てた苗のことを実生苗(みしょうなえ)と言いますが、
わが家ではそれを主流にしています。
ただやたらに種子を採ればいいというのではありません。
品質の良いわさびの株を選抜し、種子を取り苗を育てる…。
毎年その作業を重ねることによって優れた質のわさびを受け継いでいくことができるのです。
最近ではバイオの技術を利用して、より高品質なわさびを増やしていくことが可能になり、
わが家でも実生苗と並行して取り入れています。
この時期、毎日山のわさび田とビニールハウスを行ったり来たりの
忙しい日々を送っています。「これで満足」ということはなく、
よりよいものを作りたいという探求は、一生続いていくだろうと思います。
母ちゃん
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