ダムの訪問記

全国のダムと溜池の訪問記です。
主としてダムや溜池の由来や建設の経緯、目的について記述しています。

上麻生堰堤

2016-10-19 17:25:33 | 岐阜県
2016年10月16日 上麻生堰堤
 
上麻生堰堤は岐阜県加茂郡白川町の木曾川水系飛騨川にある中部電力の発電用重力式コンクリートダムです。
水量が豊富で急流が続く飛騨川水系は戦前から電力開発が進み、飛騨川上流部は日本電力が、中下流部は東邦電力により発電事業が進められました。
上麻生堰堤は1926年(大正15年)に東邦電力系列の岐阜電力によって建設され運用開始直後に東邦と合併しました。戦中戦後の日本発送電を経て戦後は中部電力が事業継承しました。
ここで取水された水は細尾谷ダムを経由して上麻生発電所に送られ最大2万7000キロワットの発電を行っています。
またダム湖には水資源機構が管理する木曽川用水の白川取水口があり上流の岩屋ダムで放流された水はここで取水され灌漑、上水道、工業用水として利用されます。
上麻生堰堤は飛騨川流域でも初期に建設された堰堤で、洪水吐のローリングゲートは日本最古とされるほかゲートビアは石貼りとなっておりその技術的、歴史的価値から近代土木遺産に選定されています。
 
上麻生堰堤は国道41号沿いにあり国道からその姿を見ることができます。
日本最古のローリングゲートからは放流が行われています。
石貼りのゲートビアとシックな機械室がレトロチックな雰囲気を一段と引き立てています。
 
ゲートをズームアップ。
 
右岸にスイッチバック式で魚道が設置されています。
 
天端は立ち入り禁止。
 
上流面。
 
左岸にある塵芥流路
木製の角落で水止めされています。
 
右岸の取水口。
 
魚道を遠望。
 
上流から。
 
S508 上麻生堰堤(0655)
岐阜県加茂郡白川町河岐
木曽川水系飛騨川
13.18メートル
74.54メートル
千㎥/千㎥
中部電力(株)
1926年

下原ダム

2016-10-19 13:31:19 | 岐阜県
2016年10月16日 下原ダム

下原ダムは左岸が岐阜県下呂市金山町福来、右岸が同市同町中切の一級河川木曽川水系飛騨川にある中部電力(株)が管理する発電目的の重力式コンクリートダムです。
急流河川で水量冨な飛騨川では戦前の5大電力のうち東邦電力(株)と日本電力(株)が競うように電源開発を進めていました。
下原ダムは東邦電力(株)の下原発電所の取水ダムとして1933年(昭和8年)に着工、1938年(昭和13年)に竣工し、併せて完成した下原発電所で最大出力2万2000キロワットのダム水路式発電が開始されました。
しかし、完成直後の電力管理法の成立により東邦電力・日本電力の飛騨川水系の電力施設は日本発送電に接収され、1951年(昭和26年)の電気事業再編成により中部電力(株)が事業継承し現在に至っています。

下原ダムは国道41号線沿いにあり国道から上下流面を望むことができます。
またダム左岸をJR東海高山本線が走り鉄道ファンにとっても人気の撮影スポットになっています。

国道41号線からダムと正対。
ローラーゲート7門で飛騨川を閉め切ります。


河川維持放流のため1門から放流中
このゲートの下流には減勢目的の叩きが設けられています。


左岸には魚道のほか流筏路が設けられています。
慣行流木権に配慮して設置されましたが、皮肉なことにダム着工直後に高山本線が開通し材木輸送は鉄道輸送に移り無用の長物に。


右岸から。
管理橋の桁はアーチ状の鉄骨トラスで、飛騨川下流に2年早く完成した川辺ダムと同じ意匠。


放流をズームアップ。


天端、ダムサイトは立入禁止。


上流面。




(追記)
下原ダムは洪水調節容量を持たない利水ダムですが、治水協定により台風等の襲来に備え事前放流を行う予備放流容量が配分されました。

1066 下原ダム(0654)
左岸 岐阜県下呂市金山町福来
右岸        同町中切
DamMaps
木曽川水系飛騨川


23.9メートル
102.5メートル
2936千㎥/684千㎥
中部電力(株)
1938年
◎治水協定が締結されたダム

岩屋ダム

2016-10-19 11:25:43 | 岐阜県
2016年10月16日 岩屋ダム
 
岩屋ダムは左岸が岐阜県下呂市金山町岩瀬、右岸が同町乙原の一級河川木曽川水系飛騨川右支流馬瀬川にある水資源機構が管理する多目的ロックフィルダムです。
水量が豊富で急流が続く飛騨川水系は戦前から電力開発が進み、飛騨川支流の馬瀬川では1938年(昭和13年)に日本電力が西村ダムを建設していました。
戦後新たな電源開発を目論む中部電力、濃尾平野への灌漑用水の確保を目指す農林省、伊勢湾台風を受け木曾川流域の洪水調節の見直しをはかる建設省がそれぞれの思惑で馬瀬川中流域でのダム建設を模索します。
各者調整の中、『木曽川水系水資源総合開発計画(フルプラン)』により木曽川水系の河川総合開発は水資源開発公団(現水資源機構)が担うことになり、1976年(昭和51年)に竣工したのが岩屋ダムです。
岩屋ダムは馬瀬川及び飛騨川の洪水調節、木曽川用水を通じ木曽川上流右岸地域及び濃尾平野への灌漑および上工水・名古屋市への上水・三重県への工水供給、岩屋ダムを上部池、馬瀬川第二ダムを下部池とする馬瀬川第一発電所での混合揚水式発電(最大出力28万8000キロワット)を目的としています。
 
岩屋ダムは大規模ロックフィルダムとしては最後に建設された傾斜コア型ロックフィルダムです。また洪水吐に設置された2門のラジアルゲートは扉高18.312メートル、回転半径18メートルはそれぞれ日本最大で日本一のラジアルゲートと言われています。
 
木曽川用水概要図(水資源機構HPより)
 
下流の馬瀬川第二ダムの天端から辛うじて岩屋ダムを望むことができます。
 
下流から
あいにく洪水吐が陰になってしまいました。
 
右岸から上流面。
 
下流面。
表面からはわかりませんが日本で最後に建設された傾斜コア型の『巨大』ロックフィルダムです。
 
日本最大と言われる巨大ラジアルゲート。
 
天端は車両通行可能。
 
下流の眺め
地下に馬瀬川第一発電所があります。
地上にあるのは変電所です。
 
 
ダム湖(東仙郷金山湖)
飛騨川流域最大の人造湖です。
 
揚水発電の取水設備
中空式ダムの様な形状です。
 
地下にある馬瀬川第一発電所の通風口のようです。

(追記)
岩屋ダムには洪水調節容量が配分されていますが、治水協定により台風等の襲来に備え事前放流を行うための予備放流容量が配分されました。
 
1116 岩屋ダム(0653)
左岸 岐阜県下呂市金山町岩瀬
右岸        同町乙原
木曽川水系馬瀬川
FAWIP
127.5メートル
366メートル
173500千㎥/150000千㎥
水資源機構
1976年
◎治水協定が締結されたダム

馬瀬川第二ダム

2016-10-19 10:13:01 | 岐阜県
2016年10月16日 馬瀬川第二ダム
 
馬瀬川第二ダムは岐阜県下呂市金山町岩瀬の一級河川木曽川水系飛騨川右支流馬瀬川にある中部電力(株)が管理する発電目的の重力式コンクリートダムです。
水量が豊富で急流が続く飛騨川水系は戦前から電力開発が進み、飛騨川支流の馬瀬川では1938年(昭和13年)に日本電力が西村ダムを建設していました。
戦後中部電力、農林省、建設省がそれぞれの思惑で馬瀬川中流域でのダム建設を模索する中、『木曽川水系水資源総合開発計画(フルプラン)』により木曽川水系の河川総合開発は水資源開発公団(現水資源機構)が担うことになります。
中部電力は同公団による岩屋ダム建設事業に発電事業者として参加するとともに岩屋ダム下流に馬瀬川第二ダム建設を進め、岩屋ダムと同じ1976年(昭和51年)に竣工しました。
岩屋ダムを上部池、当ダムを下部池として馬瀬川第一発電所で最大キロワットの混合揚水式発電を行うほか、馬瀬川第二発電所で最大6万6400キロワットのダム式発電を行います。
 
馬瀬川第二ダムは県道86号線沿いにあり、まずは下流からアプローチします。
下流からの展望スポットはほとんどなく、樹間からこの写真を撮るのが精一杯。
落葉すればもう少しきれいに見えるかもしれません。
中電らしい3門のラジアルゲートを備 えています。
 
左岸から。
馬瀬川第二ダムをまともに見ることができるのはここだけです。
 
中部電力のダムとしては珍しく天端は立ち入り可能です。
 
高い導流壁。
 
ダム湖の奥にかすかに岩屋ダムが見えます。
揚水発電の下部池のほか、岩屋ダムの逆調整池の役割も持っています。
 
一般水力発電の馬瀬川第二発電所。
厳密には発電所は地下にありこれは変電施設です。
電力会社のダムの名前は導水先のダムの名前を付けることが多く馬瀬川第2ダムはこの発電所の名前を採用しています。
馬瀬川第一ダムは岩屋ダムとの揚水式発電となるので第二ダムはあるけど第一ダムがないという状態になっています。
 
フローティング方式の取水設備。
揚水式発電の下部池で水位の変動が大きいのでフローティング方式の取水設備となっています。
 
上の取水設備で取水された水はここを通じて河川維持用水として放流されます。
サージタンクの様な役割があると思われます。
 
上流から。
 
岩屋ダムの天端から辛うじて馬瀬川第2ダムを見ることができました。
 
展望スポットは少ないのですが、フローティング方式の取水設備などなかなか面白い施設が多い馬瀬川第二ダムです。

(追記)
馬瀬川第二ダムは洪水調節容量を持たない利水ダムですが、治水協定により台風等の襲来に備え事前放流を行う予備放流容量が配分されました。
 
1115 馬瀬川第二ダム(0652)
岐阜県下呂市金山町岩瀬
木曽川水系馬瀬川
44.5メートル
263メートル
9736㎥/6100㎥
中部電力(株)
1976年
◎治水協定が締結されたダム