ダムの訪問記

全国のダムと溜池の訪問記です。
主としてダムや溜池の由来や建設の経緯、目的について記述しています。

岩出頭首工(岩出統合井堰)

2020-10-01 16:14:05 | 和歌山県
2020年9月26日 岩出頭首工(岩出統合井堰)
 
岩出頭首工(岩出統合井堰)は和歌山県岩出市清水の一級河川紀の川本流にある灌漑目的の可動堰です。
江戸時代より紀の川は流域の貴重な水源として多数の灌漑用取水堰(井堰)が設けられ、岩出周辺でも4つの井堰が設置されていました。
1952年(昭和27年)より農林省(現農水省)の十津川・紀の川土地改良事業が着手され、紀の川流域の井堰の統合が計画俎上に上がりました。
しかし、翌1953年(昭和28年)7月の紀州大水害、9月の台風13号により井堰がことごとく破損・流出という事態となり、急遽農林省による国営災害復興事業が採択され、流域に11基あった井堰は4基の頭首工に統合されることになりました。
岩出頭首工もこのうちの一つで1957年(昭和32年)に竣工、左右両岸の取水口より紀の川下流域約2000ヘクタールの農地に灌漑用水の供給を行っています。
管理は紀の川土地改良区連合が受託し、実際の管理は受益団体である六箇井土地改良区、紀の川左岸土地改良区が行っています。
なお岩出頭首工は河川法上のダムの要件は満たしていませんが、紀の川水系最大規模の頭首工ということでダム便覧には参考掲載で登録されています。
 
京奈和道岩出根来インターから県道63号を南下、紀の川にかかる岩出橋を渡って左折し東に進むと岩出頭首工左岸に到着します。
 
ピアのアーチ状鉄骨トラスが特徴的。
昭和20年代後半着工、昭和32年竣工ですが、この時期は発電用ダムなどでも鉄骨トラスのピアが多用されています。
 
堰堤中央に洪水吐4門、その左右に土砂吐各1門が並んでいます。
また写真では分かり辛いですが、左右両岸に魚道が設置されています。
訪問時は前日のまとまった雨で水位が上昇、中央の洪水吐2門と左右の土砂吐が開放されていました。
 
頭首工のすぐ下流にはJR和歌山線紀ノ川橋梁が架かっています。
 
JR和歌山線紀ノ川橋梁
1930年(昭和5年)に架橋されたワーレントラス・ガーダー橋
橋脚基部は1900年(明治33年)の初代紀ノ川橋梁のものです。
本当は頭首工と紀ノ川橋梁を一緒に撮りたかったのですが、超広角レンズを持ち合わせていなかったのであきらめました。
 
天端は立ち入り禁止。
 
左岸の水利使用標識。
 
上流から
手前に紀の川左岸土地改良区向けの取水ゲートがあります。
 
頭首工のトラスとJRのワーレントラスを重ねて撮ってみました。
 
右岸の取水ゲート
こちらは六箇井土地改良区向けのゲート。

S005 岩出頭首工(岩出統合井堰)(1558) 
和歌山県岩出市清水
紀の川水系紀の川
MB
2.9メートル
258.2メートル
ーーーー/ーーーー
紀の川土地改良区連合
1957年

新池

2020-10-01 14:27:54 | 和歌山県
2020年9月26日 新池
 
新池は和歌山県岩出市東坂本の紀の川水系山田川にある灌漑目的のアースフィルダムです。
ダム便覧では1872年(明治4年)に小田井水利組合の事業により竣工と記され、現在は受益者で組織される新池水利組が管理を行っています。
池の敷地はフェンスに覆われ厳重に立ち入りが制限されており、撮影スポットも少なく手掛かりの少ない溜池です。
ダム便覧では堤高16メートル、堤頂長95メートルとなっていますが、和歌山県のため池データベースでは堤高12.3メートル、堤頂長188メートルになっています。
実際に地図の縮尺と照らし合わせてみると堤頂長はデータベースのほうが正しいように思われます。
仮に堤高が12.3メートルならば新池はダムの要件を満たさなくなります。
 
岩出市の植物公園緑花センターを下ると左手に新池が現れます。
池の直下には太陽光パネルが並んでいます。
 
下流面中ほどにコンクリート構造物があります。
かつての底樋吐口でしょうか?
 
真横から見た下流面。
 
上流面はコンクリートで護岸されています。
対岸にお寺があります。寺まで行けば天端に上がれたかも?
 
堤体中央に斜樋。
 
右岸洪水吐。
 
アングルを変えて
奥に越流部が見えるので横越流式で間違いないでしょう。
 
現在の管理者は『新池水利組』。
 
帰宅後確認したところ、ダム下から堤体に上がれることがわかりました。
またダム下には由来碑があるようで池の来歴についても詳細がわかるかもしれません。
 
1634 新池(1557) 
ため池コード 302090047
和歌山県岩出市東坂本
紀の川水系山田川
12.3メートル(ダム基準未達)
188メートル
98千㎥/98千㎥
新池水利組合
1872年

桜池

2020-10-01 00:42:57 | 和歌山県
2020年9月26日 桜池
 
桜池は左岸が和歌山県紀の川市北長田、右岸が同市北志野の紀の川水系松井川にある灌漑目的のアースフィルダムです。
桜池の歴史は古く、徳川御三家紀州藩祖である徳川頼宜の命により1653年(慶安5年)に築造されたとされています。
1966年(昭和41年)に県営事業により大規模な改修工事が竣工し、ダム便覧ではこれを竣工年度としています。
また総貯水容量56万6000立米は灌漑用溜池としては和歌山県最大規模です。
改修記念碑では桜池土地改良区の管理となっていますが、現在は土地改良区の統合により紀の川用水土地改良区が管理を行っています。
また、桜池は有料の管理釣り場となっており、県下有数のバス釣りスポットとして人気があり訪問時も多数の釣り師が竿を立てていました。
 
京奈和自動車道紀の川インターチェンジから紀ノ川広域農道を東に向かうと左手に桜池の堤体が見えてきます。
和歌山県らしく堤体下にはみかんや栗などの果樹園が広がります。
 
下流面を管理道路が斜行しています。
堤体は稲刈り後に草刈りが行われるようで、今はまだ草が伸び放題。
 
左岸の取水設備からの底樋樋門。
 
右岸にある立派な改修記念碑。
立ち入り禁止のフェンスの内側なので解読に苦労しました。
 
上流面と対岸の斜樋。
上流面はコンクリートで護岸されています。
管理釣り場ということで、入場料を払えば溜池内に立ち入りるようです。
 
もう少し引いて撮ります。
手前が洪水吐になります。
 
アングルを変えて
溝のように見えるコンクリートが洪水吐越流部になります。
総貯水容量は56万6000立米と溜池としてはやや大きめと言ったところですが、和歌山県下では一番大きな溜池です。
 
こちらは洪水吐導流部
堤体とは違う方向に流下してゆきます。
 
右岸上流から
右手は釣り場事務所
管理釣り場ということで多くのボートが置かれています。
 
写真撮影のため、中への立ち入りをお願いしましたが釣り入場料1500円払えとのことでやめました。
 
コロナによる不要不急の外出自粛の影響もあり、遅ればせながら9月にして今年最初の初訪ダムとなりました。
そして気がつけば、故郷の隣県でありながら和歌山県初ダムでもあります。
 
1629 桜池(1556) 
ため池コード 
左岸 和歌山県紀の川市北長田
右岸 和歌山県紀の川市北志野
紀の川水系松井川
16メートル
320メートル
566千㎥/540千㎥
紀の川用水土地改良区
1966年