ダムの訪問記

全国のダムと溜池の訪問記です。
主としてダムや溜池の由来や建設の経緯、目的について記述しています。

二川ダム

2020-10-06 13:16:08 | 和歌山県
2020年9月27日 二川ダム
 
二川ダムは和歌山県有田郡有田川町二川の有田川本流中流部にある和歌山県県土整備部が管理する多目的重力式コンクリートダムです。
1953年(昭和28年)の7・18水害(紀州大水害)により和歌山県各河川で甚大な洪水被害が発生し、県は各河川の治水対策に乗り出します。
流域面積が和歌山県全体の1割を占める有田川では1959年(昭和34年)に有田川中流部への治水ダム建設事業が着手され1966年(昭和41年)に二川ダムが竣工しました。
二川ダムは建設省(現国交省)の補助を受けて建設された補助多目的ダムで、有田川の洪水調節、関西電力岩倉発電所《2005年(平成17年)に県企業局から関西電力に移管》での最大出力1万1000キロワットのダム水路式発電を目的としています。
なお、河川法改正により河川維持放流が義務付けられたことにより1998年(平成10年)に新たに河川維持放流用設備が増設されました。
さらに2016年(平成28年)には河川維持放流を利用した小水力発電所である有田川町営二川小水力発電所が新設され、最大199キロワットの小水力発電を行っています。
 
二川ダムは国道480号線沿いにあり、下流に架かる日物川橋からダムを遠望できます。
クレスト2門、オリフィス2門のラジアルゲートを装備していますが、ゲートの並びが特徴的です。
 
左岸クレストゲート(写真上段右手のゲート)にはフラッシュボードがついています。
現在はダムで捕捉した流木やゴミの下流への流下は禁止されており、フラッシュボードを使う機会はありません。
 
ダム右岸下流側に展望公園がありますが、訪問時は草が繁茂しとても立ち入れる状態ではありませんでした。
こちらはダム右岸のダム諸元碑。
 
上流面
ゲート手前の設備が1998年(平成10年)に追加された河川維持放流用の取水設備。
 
ちょっとわかりづらいですが右岸にインクラインと浮き桟橋があります。
 
上流から遠望。
 
天端から
右手奥が2016年(平成28年)に新設された有田川町営二川小水力発電所。
手前の建屋は旧来の放流設備。
 
ダム湖は総貯水容量3010万立米と県ダムとしてはそこそこ大きなサイズ。
左手は関西電力岩倉発電所の取水ゲート。昭和30年代初頭の代物ということでかなり大掛かりなゲートです。
 
天端は歩行者のみ通行可能
ゲート部分が上流側にクランクしています。
 
下流面
左奥に管理事務所が見えます。
 
堤体は脆弱地盤があるため左岸のみ僅かに湾曲しています。
 
追記(追記)
二川ダムには洪水調節容量が配分されていますが、治水協定により台風等の襲来に備え事前放流を行うための予備放流容量が配分されました。
 
1647 二川ダム(1565)
和歌山県有田郡有田川町二川
有田川水系有田川
FP
67.4メートル
222.8メートル
30100千㎥/19200千㎥
和歌山県県土整備部
1966年
◎治水協定が締結されたダム

山田ダム

2020-10-06 03:05:03 | 和歌山県
2020年9月27日 山田ダム
 
山田ダムは和歌山県海草郡紀美野町長谷、右岸和歌山県紀の川市貴志川町高尾の紀の川水系貴志川右支流野田原川中流部にある灌漑目的の重力式コンクリートダムです。
ダム便覧では所在地が紀の川市貴志川町高尾になっていますがこれは山田ダムの右岸です。通常ダムの所在地はダム左岸を基準とするため便覧は誤りであり、正しくは和歌山県海草郡紀美野町長谷となります。
 
1952年(昭和27年)に農林省(現農水省)が事業主体となる『十津川・紀の川総合開発事業』が策定され、のちに『吉野熊野特定地域総合開発計画』に発展、この中核事業として『国営十津川・紀の川土地改良事業』が着手されました。
同事業は奈良盆地および紀の川流域の紀伊平野における灌漑施設の整備充実を目的とし、奈良盆地への灌漑及び上水道用水源として津風呂ダム大迫ダム、新宮川水系から紀の川水系への流域変更目的で猿谷ダム、和歌山県内での灌漑用水源として山田ダムの建設が決定しました。
山田ダムは1950年(昭和30年)に着工、4ダムのうち最も早い1957年(昭和32年)に竣工し、運用開始後は受益農家で組織される山田ダム土地改良区が受託管理を行い、貴志川流域の農地651ヘクタールに灌漑用水の供給を行っています。
 
ダム右岸を県道129号線が走っており、ダムサイトには地元コミュニティーバスの『山田ダム』バス停があります。
 
残念ながら下流からの展望ポイントはありません。
こちらは上流からの眺め
クレストには3門のラジアルゲート、その右手に取水ゲートがあります。
 
ゲートと取水設備をズームアップ
1957年(昭和32年)竣工ということで、ゲート操作室、取水設備操作室ともに大がかりなものとなっています。
 
天端は車両通行可能。
ここから見ても巨大な取水設備操作室。
 
右岸に艇庫とインクラインがあります。
背後のトラス橋は県道129号、手前のコンクリート構造物はケーブルクレーン台座と思われます。
しかし立ち入り禁止エリアで平気で釣りをする釣り師。さすが関西、モラルというものがないんでしょうか?
 
ダム湖は総貯水容量340万立米。
一般には山田貯水池と呼ばれています。
 
天端ゲート部分は昭和20~30年代のダムらしく前面にクランクしています。
 
天端から
上から見る限り直線状の導流壁
右手は取水設備からの用水路。
 
アングルを変えて。
 
左岸から上流面。
天端高欄は白く塗装されています。
 
左岸の竣工記念碑。
奈良県から和歌山県にかけての紀の川南岸は三波川変成帯が露頭しており、竣工記念碑も緑色片岩製。
 
農業用ダムでありながら昭和20~30年代のダムということで立派なラジアルゲートを装備しています。
ただ下流からの展望ポイントがないのが惜しい所。
 
(追記)
山田ダムは洪水調節容量を持たない利水ダムですが、治水協定により台風等の襲来に備え事前放流を行う予備放流容量が配分されました。
 
1645 山田ダム(1564) 
左岸 和歌山県海草郡紀美野町長谷
右岸 和歌山県紀の川市貴志川町高尾
紀の川水系野田原川
34メートル
139.4メートル
3400千㎥/3370千㎥
山田ダム土地改良区
1957年
◎治水協定が締結されたダム