ダムの訪問記

全国のダムと溜池の訪問記です。
主としてダムや溜池の由来や建設の経緯、目的について記述しています。

引原ダム(元)

2018-10-14 03:34:37 | 兵庫県
2018年10月7日 引原ダム(元)
 
引原ダムは兵庫県宍粟市波賀町の揖保川水系引原川上流部にある兵庫県県土整備部が管理する重力式コンクリートダムです。
建設省(現国交省)の補助を受けて建設された補助多目的ダムで、引原川および揖保川の洪水調節、安定した河川流量の維持と既得取水権への用水補給、姫路市・太子町への工業用水の供給、関西電力原発電所での最大5000キロワットのダム水路式発電を目的としています。
1939年(昭和14年)に姫路で広畑製鉄所が操業を開始し、安定した工業用水確保を目的として揖保川河水統制事業が着手され引原ダム建設が開始されました。
しかし戦況悪化により事業は中断、戦後、建設省の補助を受けた揖保川総合開発事業として再開され、1957年(昭和32年)に引原ダムが竣工しました。
引原ダムは兵庫県営の多目的ダム第1号となっています。
 
一方揖保川流域では平成以降も3度の大規模な出水があり、引原ダムは2度の異常洪水時防災操作を余儀なくされその洪水調節能力の増強が課題となっていました。
これを受け新たに『引原ダム再生事業』が採択され2029年(令和11年)竣工をめどに、洪水調節能力強化を目的としたダム再開発事業が着手されました。
具体的には堤体の2メートル嵩上げと死水容量の予備放流容量への転用による洪水調節容量の増大(565万立米⇒805万立米)、放流設備の新設と既存放流設備の改造などとなっています。
 
ダム一帯は国定公園に指定され豊かな自然が残るほか、1993年(平成5年)建設省より「地域に開かれたダム」に指定されたことを契機に積極的な湖面利用が進められ、現在では近畿地方有数のカヌーのメッカとなっています。
 
引原ダムは国道29号線沿いにありアプローチは簡単です。
ダムサイトから徒歩でダム下に降りることができます。
非常用洪水吐として真っ赤なラジアルゲート2門、常用洪水吐として導流壁わきにジェットフローゲートを装備しています。
5~11月の第4日曜にはジェットフローゲートから観光放流が行われます。
 
減勢工にある不思議な遺構、棒状のコンクリートに木が何本も填め込まれています。
これが何なのか?ずっと謎のままでしたが、帰宅後調べたところ木造橋梁の橋脚を支える底板(フーチング)であることがわかりました。
ダム建設以前、ここには木造の橋が架かっていたのです。
 
左岸から
 
以前使われていたハウエルバンガーバルブがダムサイトに展示されています。
 
上流から。
ゲート操作室は豪雪地帯のように屋根付き。
 
インクラインや艇庫はなく左岸の浮桟橋に巡視艇が係留されています。
 
天端から。
 
左岸にある関西電力原発電所への取水設備。
運用開始以降、兵庫県企業庁が運営していましたが、2010年(平成22年)に関西電力に譲渡されました。
昭和20~30年代施工の取水口ということで、大掛かりな設備になっています。
 
右岸展望台から
天端は車道で車両通行可能
ゲート部分だけ上流側に張り出したクランクになっています。
 
右岸には建設当時のプラントなど各種遺構が残されています。
写真は建設当時コンクリート運搬車が通る線路が敷かれていたバンカー線跡。
 
バッチャープラント跡
天蓋のドーム部分は母校明治大学の旧記念館を彷彿とさせます。 
 
竣工から60年以上経過する古いダムですが、各所に遊歩道が整備され見所の多いダムとなっています。
 
追記
引原ダムには洪水調節容量が設定されていますが、治水協定により豪雨災害が予想される場合には事前放流によりさらなる洪水調節容量が確保されることになりました。
 
1479 引原ダム(元)(1386
兵庫県宍粟市波賀町引原
揖保川水系引原川
FNIP
66メートル
184.4メートル
21950千㎥/18400千㎥
兵庫県土木部
1957年
◎治水協定が締結されたダム
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1479 引原ダム(再)
兵庫県宍粟市波賀町引原
揖保川水系引原川
FNIP
68メートル
206.5メートル
22850千㎥/20800千㎥
兵庫県土木部
2020年~


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