ダムの訪問記

全国のダムと溜池の訪問記です。
主としてダムや溜池の由来や建設の経緯、目的について記述しています。

夏瀬ダム

2022-12-15 20:22:29 | 秋田県
2022年10月26日 夏瀬ダム
 
夏瀬ダムは左岸が秋田県仙北市角館町広久内、右岸が同市田沢湖町卒田の一級河川雄物川水系玉川にある東北電力(株)が管理する発電目的の重力式コンクリートダムです。
昭和10年代に入り玉川水系では東北振興電力(株)による電源開発と、農林省による田沢疎水農業水利事業が計画され、1937年(昭和12年)に発電・灌漑を目的とした『玉川河水統制事業』が着手されます。    
具体的には強酸性で灌漑に不適であった玉川の水を田沢湖で希釈し、生保内・夏瀬・神代各発電所で発電したのち、農業用水として仙北平野に導水するという壮大な事業です。    
神代・夏瀬両ダムは東北振興電力を接収した日本発送電によって1940年(昭和15年)に完成、同時に神代発電所も稼働しますが、夏瀬発電所は戦況悪化に伴う物資不足もあり事業は中断、 稼働は1953年(昭和28年)の東北電力による事業継承後ににずれ込みました。    
夏瀬発電所では最大2万キロワットのダム水路式発電が行われています。    

国道46号線から夏瀬温泉の標識に従って市道夏瀬線を4キロ東進すると夏瀬温泉入口に到着します。
この先は東北電力管理道路となるため徒歩で500メートル進むと夏瀬発電所に着きます。
発電所裏手から河原に下りることができ、約300メートル遡上するとダム下に出ます。
いかにも戦前戦中の発電ダムと言った作りで、6門のラジアルゲートが並び豪雪地帯ということでピアは被覆されています。
訪問時は放流はなく、穏やかな水面にダムが映り込んでいました。


同時に建設された神代ダムは近代土木遺産に選ばれていますが、こちらは未選定。
どこが異なるんでしょう?


ゲートは竣工当時のものではなさそう。


ダムサイトは立ち入り禁止。


左手には分割式予備ゲートが積まれています。
正面は除塵機。


水利使用標識。


門扉手前のコンクリートの柱
クレーンの台座でしょうか?


ダム手前のサージタンクと水圧鉄管。


こちらは夏瀬発電所
最大2万キロワットのダム水路式発電を行います。


神代ダムは田沢疎水の調整池になっており、神代発電所の放流水が灌漑用水となるためその稼働は必要条件だったのでしょう。
一方で夏瀬発電所は、ダム完成から発電所稼働まで13年もの空白期間を置きます。

(追記)
夏瀬ダムは洪水調節容量を持たない利水ダムですが、治水協定により台風等の襲来に備え 事前放流を行う予備放流容量が配分されました。

0367 夏瀬ダム(1920)
左岸 秋田県仙北市角館町広久内
右岸     同市田沢湖卒田
雄物川水系玉川
 
 
40メートル 
115.8メートル 
5959千㎥/1735千㎥ 
東北電力(株) 
1940年
◎治水協定が締結されたダム


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