ダムの訪問記

全国のダムと溜池の訪問記です。
主としてダムや溜池の由来や建設の経緯、目的について記述しています。

岩洞ダム

2022-11-26 16:00:00 | 岩手県
2022年10月21日 岩洞ダム

岩洞ダムは岩手県盛岡市薮川の北上川水系丹藤川にある岩手県企業局が管理する灌漑・発電目的のロックフィルダムです。
滝沢市から盛岡市一帯の岩手山麓東裾地帯は透水性の高い火山堆積物で形成され水田には不向きで、戦前まで零細な畑作が営まれるのみでした。
さらに水源となる北上川は松尾鉱山の鉱毒に侵され、大規模な農地開発には新たな水源確保が必須課題となっていました。
こうした中、1941年(昭和16年)に国営岩手山麓開拓建設事業が着手され当地域の本格的な農業開発が開始されます。
戦後事業は『北上特定地域総合開発計画(KVA)』に組み込まれ、農林省により1960年(昭和35年)に灌漑用水源として建設されたのが岩洞ダムです。
岩洞ダムはわが国最初のゾーン型ロックフィルダムで、中規模ロックフィルダムとしては希少な傾斜コア方式を採用、また下流面も犬走を挟んだ階段状になっており外見上も異形のロックフィルダムとなっています。
また総貯水容量6560万立米は本州の農業用ダムとしては最大規模を誇ります。
運用開始後は発電事業者として事業参加した岩手県企業局が管理を受託し、幹線支線合計約300キロの用水路で岩手山麓東裾地域約1500ヘクタールの農地に灌漑用水を供給するとともに、落差530メートルを利用して岩手県企業局岩洞第1及び第2発電所で合わせて最大4万9600キロワットのダム水路式発電を行っています。
事業の竣工により同地域では稲作のほか果実や畑作が盛んとなり、滝沢すいかや寒冷地用サツマイモのクイックスイートなどの特産物も多数誕生しています。
一方ダム湖の岩洞湖は豊かな自然に包まれ、ワカサギ釣りのほかキャンプ、カヌーなど多様なレクリエーションの場となっておりダム湖百選に選ばれています。

盛岡市街から国道453号を東に約35キロ進むと岩洞ダムに到着します。
国道はダム右岸を通っています。
下流面は犬走を挟んだ3段構成、ロックフィルダムでこのような形状は北海道の日新ダムしか思い浮かびません。
対岸の白いコンクリートは洪水吐導流部の法面です。


上流面。


右岸ダムサイトの記念碑。


ダム下は芝生の広場になっていますが立入禁止。
一方天端は徒歩のみ開放。


ダム下の建屋は監査廊入口。
竣工以来50年以上が経過しダムをはじめ灌漑設備の多くで老朽化が進んでいるため、農水省による『国営岩手山麓農業水利事業』により大規模な改修工事が進められています。
駐車中の車や人もそのためのもの。

右岸の繋留設備と巡視艇
奥は管理事務所で岩手県企業局の職員が常駐し、ここでダムカードがもらえます。


左岸下流側の丹藤川。
河川維持放流が行われていますが、この水の取水口がわかりません。


ダム湖の岩洞湖
農業用ダムとしては本州最大の総貯水容量6560万立米を誇り、ダム湖百選に選ばれています。
流域面積219.6平方キロのうち直接流域は48.6平方キロに留まり、集水の約8割は周辺河川からの導水に依ります。
また堆砂がほとんどないのが特徴で、計画堆砂容量を満たすには約70万年かかるとされています。


左岸の洪水吐導流部
訪問時は改修工事が行われていました。


洪水吐のローラーゲート。


上流から。

取水設備はダムから5キロ西側のダム湖インレット近くにありますが、今回は時間の関係でパスとなってしまいました。

(追記)
岩洞ダムは洪水調節容量を持たない利水ダムですが、治水協定により台風等の襲来に備え 事前放流を行う予備放流容量が配分されました。
 
0242 岩洞ダム(1885)
岩手県盛岡市薮川
北上川水系丹藤川
AP
40メートル
351メートル
65600千㎥/46300千㎥
岩手県企業局
1960年
◎治水協定が締結されたダム


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