ダムの訪問記

全国のダムと溜池の訪問記です。
主としてダムや溜池の由来や建設の経緯、目的について記述しています。

八田原ダム

2017-05-15 17:49:47 | 広島県
2017年5月7日 八田原ダム 
 
芦田川は広島県東部を流下し福山市中心部で瀬戸内海にそそぐ全長86キロの一級河川です。
もともと流量が少ない中で下流域での水需要が大きく下流よりも上流のほうが流量が大きいといういびつな構造になっていました。また流域全体が保水力の小さい花崗岩質となっているうえに、下流域の土地の大半が洪水水位よりも低い地盤高となっており、ひとたび洪水が発生すると多大な被害が発生するため、利水・治水ともに難しい河川として知られていました。
1964年(昭和39年)に福山市周辺が『備後工業特別整備地域』に指定され、日本鋼管(現JFEスチール)が福山に高炉を建設したのをきっかけに、瀬戸内海沿岸地域の工業化、都市化が一気に進展、水需要が急速に高まりました。
新たな水源を確保するため広島県はすでに竣工していた灌漑専用の三川ダムを嵩上げ再開発して多目的ダム化する一方、建設省中国地方建設局により新たに八田原ダムおよび芦田川河口堰の建設がすすめられ、1981年(昭和56年)の芦田川河口堰に次いで1997年(平成9年)に八田原ダムは竣工しました。
八田原ダムは芦田川の洪水調節、慣行水利権分の用水補給と安定した河川流量の維持、備後地域への上水道用水及び工業用水の供給を目的とするほか中国電力府中発電所で最大出力1万2700キロワットの発電を行っています。
また利水放流を利用して八田原ダム管理用発電所で最大出力670キロワットの小水力発電を行っています。
 
八田原ダムはダム湖の芦田湖左岸を県道52号線が通っており、八田原ダムの標識に従って東に折れるとダム左岸の管理事務所に到着します。
左岸から
堤体は左岸側がわずかに屈曲しています。
 
天端は車両通行可能
国交省直轄ダムらしく多くの建屋が並んでいます。
左手前エレベーターは開放され堤体直下に降りることができます。
 
減勢工は左に大きくカーブ 左手は利水放流設備と管理用発電所です
右下の副ダムが変わった形状をしています。
 
右岸高台から俯瞰。
 
上流面と管理事務所。
 
エレベーターで下に降ります
コンジットゲートを真横から見ることができます。
 
利水放流設備や管理用発電所の四角い建屋越しに堤体を見上げます
なんとなくオリエンタルチックな眺め。
 
さらに下流から
減勢工がカーブしているためダムを真正面から見ることはできません
しかし他のダムでは見られない、面白い構図が広がります。
 
こちらは芦田湖上流にある中国電力の取水塔
もともとここには府中発電所の取水ダムである宇津戸川ダムがありましたが八田原ダムの建設により水没、新たに取水塔が建設されました。
現在でも渇水期になると宇津戸川ダムが姿を現すそうです。
 
夢吊橋
地元住民が宇津戸川ダム堰堤を生活通路にしていたためその代替として架橋されました。
このタイプの吊橋としては世界最長で、現在では地元住民の利用はほとんどなく観光施設となっています。
 
上流からゲートを遠望
クレストはラジアルゲートが2門あり、その間にオリフィスゲートの予備ゲートがあります
左にはコンジットゲートの予備ゲートが2門あり一番左手が取水設備となります。
 
追記
八田原ダムには3400万立米の洪水調節容量が設定されていますが、治水協定により豪雨災害が予想される場合には事前放流によりさらに2510万5000立米の洪水調節容量が確保されることになりました。
 
1997 八田原ダム(0985)
広島県世羅郡世羅町小谷
芦田川水系芦田川
FNWI
84.9メートル
325メートル
国交省中国地方整備局
1997年
◎治水協定が締結されたダム


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