新型コロナウイルスによる休校で生じた授業の遅れを取り戻すため、兵庫県内の学校でも奮闘が続く。行事や掃除など、学習以外の活動を取りやめたり、「7時間目」を設けたりして学ぶ時間を確保するが、慌ただしさに一部の児童生徒からは「ついていけない」との声も。例年より短い夏休みの直前、マスク姿の生徒や教師が奔走する、神戸市内の中学校を訪ねた。(鈴木久仁子)
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7月下旬、神戸市兵庫区の市立夢野中学校。「味けのない、せちがらいスタートになった」。戎(えびす)豊一校長はため息をついた。
小中学校は、休校で約200時間失われた。本来、新学期は4月から大型連休を挟んでゆっくり進むが、今年は6月に“急発進”。新入生の歓迎行事も縮小して早速、授業が始まった。
■モジュール学習活用
授業時間確保の手だての一つは、朝20分、放課後15分のモジュール学習(短時間授業)の活用だ。これまで授業時間に入れていなかったが、再開後は積み重ねて授業時間としている。
この時間は、市が導入するインターネットの学習支援ツール「みんなの学習クラブ」に取り組む。主要5教科の基礎学習が中心で、反復できるよう、放課後と翌日の朝に同じプリントを使う。登校早々、頭をフル稼働させる生徒たち。
「従来、朝は読書などに充て、心が落ち着くいい時間だったのだけど」と戎校長。「掃除の時間も削り、余裕を持てる時間はなく、息継ぎせずに泳ぎ続けているような日々」だという。
■様変わりした授業
授業の進め方も様変わりした。同校は、2021年度に始まる新学習指導要領に沿うよう、数年前から「対話的な学び」に力を入れてきた。グループで意見を出し合い、分からない部分を互いに教える。「分からへん」と気軽に言えるスタイルで、生徒たちもすっかりなじんでいた。
しかし、新型コロナの感染防止のため、教師が教壇から講義するかつての形に戻さざるを得なくなった。「分からなくても言いにくい。いつの間にかどんどん進んでいる」「でも、高校入試の対象範囲は縮小されず、変わらへんから」。生徒から愚痴が漏れる。
さらに水曜日は1時間増える。この日の7時間目は作文だった。「さすがに朝から詰め込みで7時間は厳しく、主要教科外にしている」と戎校長。
個々の学習は放課後に支える。教員免許を持つ支援員が担任と連携し、一人一人のつまずきを見つけ、プリントを渡す。添削して返す際、手書きで「できるまで一緒に頑張りましょう」と添えた。
戎校長は実感を込めて語る。「生徒に強いる忍耐は計り知れない」
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神戸市教育委員会によると、市内の他の中学校も同様の対応を取っている。夏休みは8月1日から17日までと、他市町よりも長い。同市教委は「行事の見直しや簡素化、卒業式の後ろ倒しも進め、年度中に休校中の授業分を補う。暑さへの懸念から、夏休みの時期にも配慮した」としている。
【兵庫県の学校休校】新型コロナウイルスの感染拡大を受けた政府の要請で3月初旬、兵庫県など全国の小中学校や高校で休校が始まり、春休みを挟んで5月末まで約3カ月に及んだ。県内の公立小中学校では本年度、必要な授業の約2割に当たる約200時間分が失われた。県や市町は夏休みを例年の半分以下に短縮したり、1学期は通知表による評価を見送ったりするなどの影響が出ている。
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