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TAのブログを読んでいて印象に残っていた
重松清の『その日の前に』をお正月休みに読もうと思っていたら、
暮れの29日に飲み会の席からかけてきた電話で
(飲んでいるはずなのにかなりしっかりした声で)
「絶対に読んでください。」と念押しされた。
30日実家に帰る途中で本を買って、
ランチを食べながら読み始めたら、静かに胸に迫ってくる話で面白い。
先が気になって本を閉じることが出来ないのだ。
「こりゃ困った、年越しの支度で忙しいのに…。」と思ったが、
予想していなかった短編集の形だったので、
初めの『飛行機雲』を読んだところで止めることができた。
その後、大晦日の紅白歌合戦があまりにもつまらなかったので、
居間で本を開いたらもうそこからは一気呵成」、
NHKには申し訳ないが紅白など全く目にも耳にも入らず、本に集中してしまった。
誰にでもいつかは訪れる「その日」、
特に最後の3編、『その日の前に』『その日』『その日の後で』は
人生の折り返し地点を確実に過ぎてしまった自分の「その日」を自然に考えながら読んでいた。
私はどんな気持ちでその日を迎えるだろうか。
27歳の時、「甲状腺腫瘍」と診断された時の恐怖が蘇ってきた。
夏の終わり、台所で皿を洗いながら庭に目をやり、
その時「来年、この花が咲くのを見られるだろうか?」と言う考えがふとよぎり、
ボロボロ涙が出て止まらなかったこと、
手術後の細胞検査で「良性」であったと知らされた時の力が抜けるような安堵感。
今も、再発した腫瘍を薬で鎮めているところなので、
他の人よりもこの小説に対する思い入れは強いかもしれないが、
死を目前にしながらも、
家族や友達と心を通わせて今日を生きる主人公たちの気持ちの切なさが伝わってきて泣けた。
読み終わってから、
何が起きても悔いないように生きることが出来るだろうかと自分に問いかけた。
何かを成し遂げたと言えるものがないので、まだまだ死ねないぞと思った。
自分を誤魔化さず、今やりたいことをちゃんと毎日やっていこうと思った。