演劇書き込み寺

「貧乏な地方劇団のための演劇講座」とか「高橋くんの照明覚書」など、過去に書いたものと雑記を載せてます。

花嫁の父

2011年11月03日 23時38分21秒 | 脚本

こんなのを書いたことすら忘れていました。


出来は、何もいわないでってやつですか。

この脚本のいいところは、連作の練習とか結末のつけ方の練習に向いているところです。
要は、続きも書きやすいし、最後の台詞もどうにでも変えられるというところがいいところでしょう。

逆に欠点は、うまく演じないと面白くならないことでしょうか。
「えっ」とか「はあ」とかいう台詞は、きちんとした台詞があれば
省略してもいいし、アドリブで入れてもいいので
本来書くべきものではないのですが、この作品は気楽に書いたので
そこら辺の処理がいいかげんです。
脚本どおりやろうとすると役者の技量が問われます。

追記:リンクがいつの間にかできなくなっていました。

いかんなあ。

全文のっけておきます。

 

「花嫁の父」

CAST 男(アツシ)/女(チサト)

場所 女の部屋



  女性の一人暮らしの部屋。取り敢えずテーブル。あとクッションとか。
  男女が部屋に入ってくる。二人は婚約している。


女  ごめんねー散らかってて。一応掃除はしたんだけど。
男  いいよ別に、俺の部屋よりはきれいだし。
女  適当に座ってて。コーヒーでいいでしょ?
男  あ、うん。


  女、コーヒーをいれにキッチンへ


女  資料読んでてよ。友達がわざわざ取っといてくてれたんだ。
男  二ヶ月前に結婚したっていう?
女  うん、なんかね、私もこの式場にしたいなぁって言ったら、資料とか取っといてくれてさ。
   料金とか細かく書いてくれたし、一応当初の見積も、もってておけって封筒に。
男  どこ?
女  棚にあるでしょ、緑のでかい封筒。
男  棚のどこよ。
女  右の方! 右上! 緑でさ、あるでしょ。とにかく緑のでかい封筒だから。
男  ああはいはい、これね。「プラザホテル」って書いてるやつでしょ。
女  そうそうそれそれ。(コーヒーを持ってくる)
男  どこだっけ、ここ。
女  あの、駅近くの。ほら、目の前が高架線でさぁ。電車乗ると窓から見えるじゃない。
男  あーはいはい、あそこね。いいね、駅から超近いじゃん。
女  うん、うちもさ、親新幹線でくるから。レンタカーとかタクシーとかいらないじゃない。
男  前見た式場はダメなの? 気に入ってたっぽいのに。
女  内装とかコースは凄いオシャレでいいんだけどさ、ちょっと駅から遠いじゃない。
   少し高いし、なんかね、そこまで気張らなくてもいいかなぁって。
男  気張ってもいいんじゃない、一生に一度なんだし。
女  ううん、いいよここで。別に悪いとこあるわけじゃないし、もともとこぢんまりとやろうって話だったでしょ。
   それにほら、街にも近いから二次会場までの移動も楽だよ。
男  二次会誰に任せた?
女  あの、ほら、こないだ会ったでしょ。中学からの友達の、なっちゃん。
男  全部任せておいて大丈夫?
女  バッチリ。なんか飲み屋関係に知り合い多いみたいでさ。色々手配してくれるらしいから。
男  わかった。じゃあ任せとく。
女  やっぱさ、早めに挙げたいよね。
男  早めって言っても、秋がいいかな。
女  そうだねー、冬になっちゃうと雪がね。こっちはあんま降らないけど、あっちゃんの実家、秋田でしょ。
男  そうなんだよな。実家が田舎だからさ、まず家から駅までの道程がね。ハンパない。
女  雪降る前にはさ、取り急ぎ式だけでも挙げちゃおうよ。引越しはそれからでもいいんだし。
男  部屋いつ決めに行く?
女  ほら、友達が不動産の事務してるでしょ。だから今のうちにいい部屋とか探してもらってるの。
男  あ、そうなんだ。
女  うん、だからその辺は。
男  あ、じゃあ任せる。悪いな任せっぱなしで。
女  いいよいいよ。入籍いつにする?
男  希望とかある?
女  うーん、八月中にはしたいなぁって思ってたけど…
男  じゃあいいんじゃない? 俺は特に、あれだし。
女  うん。
男  八月中の、大安の日で。
女  大安っていつ?
男  いつだっけ、後で見とく。
女  じゃあ八月で決まり?
男  決まりでいいでしょ。
女  …そっかぁ。


  間

  
男  なに、どうしたの? 重要な話ってそれ?
女  いや…。
男  どうしたの? 何か話があるって呼んだのそっちじゃん。
女  うーん…。
男  言いにくいこと?
女  そりゃ言いにくいよ、今まで黙ってたんだから。
男  止めてよ、こっちまで緊張してくるんだけど。
女  実はね…
男  ちょ、タンマタンマ! あのさ、俺から当てていい?
女  あ、うん。どうぞ。
男  …浮気してたとか。
女  違う。
男  できちゃってたとか。
女  それも違う。
男  …借金があるとか。
女  無い。
男  えーと、宝くじ当った。
女  当ってたらいいねぇ。
男  身内に不幸があって式挙げられない。
女  ハズレ。
男  実は男だった。
女  …。
男  ごめん冗談。
女  アタリ。
男  はぁっ!? マジで!?
女  なワケないじゃん。ふざけないでよ、こっちは真剣なんだから。
男  なになに、マジなの?
女  マジなの。いや、黙ってても良かったんだけど。
男  それは良い話? 悪い話?
女  …受け取り方次第かなぁー。
男  えぇー? 怖いなぁ。
女  あっちゃんには絶対予測つかないと思う。話していい?
男  …いいよ。なに?


  間


女  今まで黙ってたけど、…本当はずっと黙ってようと思ったんだけど、言うね。
   私…秘密があるの。…実はね、私お父さんがいるの。
男  えっ。って、…知っているけど。
女  そうよね。前に両親が離婚した話は言ったんだったわよね。
男  高校2年の時だっけか。
女  そう。
男  で。
女  どこで聞きつけたのか、お父さんが式に出たいって言い出したのよ。
男  まあ、俺は別にかまわないけど。でも、お母さんが嫌がるかな。離婚した夫が、式に参列するなんてのは
女  基本的には、お母さんはとやかく言える立場じゃないからいいんだけど。
男  何だよその基本的にはってのは。
女  お母さんが、自分の都合で別れただけだから。
男  娘と父親の絆は残っているわけか。
女  娘は特別だって言うからね。
男  父親ってそういうもんだよな。いいんじゃないの、お母さんさえ反対しなけりゃ。
女  まあ、それだけだったらね、そんなに、問題でもないんだけど。
男  なに、どういうこと。
女  はあー。

    女は立ち上がって、ビールを持ってくる。

女  あっちゃんはどんな事があっても、チサトの味方だよね。
男  まあな。
女  じゃあ、乾杯。
男  ちょっと待て、これなんにも入っていないだろうな。
女  口が滑らかになるように飲もうっていうだけよ。心配しない心配しない。
男  酔わないと話せないようなことなのか?
女  そんなことないけどさ。よく考えると、異常なんだけど、まあ、私にとっては嬉しくもあるのよね。
男  俺さ、なぞかけってだめなんだけど。
女  そんなんだから、あっちゃんはもてないんだぞ。
男  おれは、別にチサトさえいればもてなくてもいいわけだし。もともと、そんなにもてないし。
女  なに言ってんの、女心がわかればあっちゃんはきっともてもてだって。
男  おまえさあ、初めて外で飲んだ時の事憶えている?病院の中で一番もてないのはだれか、って話になったときに、「ダントツであっちゃん」って言ったのはお前だろ。
女  ごめん、…でも私は好きになったよ。
男  だから最初に言っただろ、別にチサトさえいれば他の女にもてなくてもいいって。
女  でも、少しはもててもらいたい気持ちもあるわけだしさ。
男  てか、そういう話じゃないでしょ。話を戻して。で、何が問題なの?
女  ひとつは、あっちゃんが看護師だってってことが問題だったんだけど。
男  それなに。いまさらその問題を言い出すわけ。
女  落ち着いてよ。だったって言っているでしょ。医者と看護師が結ばれるってなんて話になると、ただでさえ、世間はとやかく言うんだから。
男  分かっているさ。だから、一度は身を引こうかっていったじゃん。
女  だから、私はあっちゃんがホンとに好きだから一緒になりたかったんだよって、ちゃんとお父さんに説明しておいたから。
男  まあ、医局の皆さんにも散々冷やかされましたから。ある意味慣れてますけど。
女  次に、収入が問題になってね。
男  そりゃ、医者のチサトに比べれば少ないかもしれないけどさ。
女  なに言ってんのよ。研修医なんて看護師さんよりも安いんだから。
男  まあ、それでも二人だったら暮らしていけるって、そう、話し合ったんだろ。
女  でね、パパが結婚するなら、援助した金返せって言い始めちゃって。
男  それなに。
女  うち離婚して母子家庭だったでしょ。国立に受かればよかったんだけどさ、なかなか、思うようにいかなくて。滑り止めで私学受けたのが受かっていて、パパがね、援助してあげるから浪人はしないでって言うもんだから、つい援助してもらちゃったのよね。
男  パパって、援助交際かなんか?
女  ばかね、れっきとしたホントのパパよ。一応、私の親。
男  なーんだ。でも、さっきお父さんって言ってなかった。
女  そしたらさ、親父が怒り始めて。
男  はあ?
女  援助したのはお前だけじゃない。俺たちだって、援助したんだ。それだって、いやいやしたんじゃないんだ。してあげたかったから、したんじゃないのか。って、もう、パパったら気が弱いもんだから、何にも言い返せなくてさ。
男  はあ。
女  そしたら、父がさ、ますますややこしくなるようなこと言い始めたのよ。
男  チサト、ちょっと待って。
女  はーい。
男  おまえ酔っている?
女  まだ、ぜんぜん。
男  おれさ、話がよく飲み込めないんだけど。
女  お馬鹿なあっちゃんって可愛い。
男  チサト!
女  はい。
男  正直に言え。
女  はい?
男  何が問題なんだ。
女  お父さん達が、結婚式に出たがっているのよ。
男  それはさっき聞いた。
女  お父さんと、パパと、親父と、父がそろって出たがっているのよね。
男  はあ?
女  そのうえ、みんながそろいもそろって、バージンロードを娘と歩きたいって言っているの。誰か選ばなくちゃならないなんてのは、私には出来ない。
男  チサト、まず問題を整理しよう。あ、でも、その前に、ビールまだある?
女  入っている。

   男、ビールを持ってきて。

男  まず、お父さんってだれだ?
女  実の父。私が生まれてすぐに離婚したの。
男  高校2年の時離婚したんじゃなかったのか?
女  それは父。育ての父ね。
男  もしかして。
女  パパは私が小学校入学するまで。親父は中学までね、それで、父が高校2年生まで、私の親だったの。
男  はあー。…きみのお母さんて、そんなに何回も結婚しているの?
女  恋多き女っていえば聞こえはいいけど、親切にされるとついふらふらってなびいちゃの。だからいつもお母さんが悪いんだけどさ。
男  で、4回結婚したわけだ。
女  ホントは6回なんだそうだけど。
男  はあ?
女  これは短すぎて、私も記憶していないから。
男  6回結婚したんだ。
女  大変なのよ、そのたんびに苗字が変わるじゃない。高校進学の時に提出する戸籍謄本とかも、真っ黒でさ。それに、連れ子とかいると、兄弟が増えたり減ったりするわけで。
男  チサトはずっとつらい思いをしてきたんだ。
女  変化があって面白かったけど。説明が面倒なのよね。だから、今日まで、延ばし延ばしになっちゃったんだけどさ。
男  獣のようなママ父に陵辱される日々。つらかったんだろうなー。
女  あのさ、妄想を巨大化させるのはかってだけど、人のことを天然記念物って言った人に言われたくない。
男  いや、あのー、ごめん。
女  忘れたとは言わせませんからね。
男  感謝してます。
女  当然よ。天然記念物に会えたんだから。
男  でもさ、普通離婚してから会うのって、本当のお父さんだけなんじゃないの?
女  お父さん達はみんなやさしかった。お母さんもお母さんで、手近なところで男作るもんだから、お父さん達みんな知合いなんだよね。だから、なんとなくネットワークが出来ていて、その上、お母さんに新しい男ができると、私の事なんてほっぽらかしになっちゃうじゃない。だから、お父さん達が心配してね、夕食に呼んでくれたりしてさ、ほら、一時兄弟だったりした子とかもいるし、新しい奥さんも妙に気に入ってくれてさ、ご飯の面倒とかみてくれて。私が医学部受けるって言った時も、親父の嫁さんのミハルさんが「援助してあげる」って、言ってくれたんだよね。で、結局、お父さんの奥さんも、親父の奥さんも、父の奥さんも「あのお母さんじゃ、行きたい大学にも行けないわよね」って、言い出して。まあ、すったもんだの挙句、みんなで援助してくれる話になって。国立受かれば、みんなに迷惑かけることもなかったんだけどさ。
男  奥さん達も、呼ぶんだよね。
女  え。
男  当然呼ばなきゃ。
女  呼びたいけど。説明が。
男  いいじゃん、そんなこと。みんな、チサトのお母さんだろ。
女  うちのほうの席親族だらけになっちゃうよ。
男  ただ、チサトの本当のお母さんがなんって言うかだよな。
女  まあ、私が可愛がられていた事は知っているから、多分大丈夫だとは思うけど、交換条件で、新しいお父さんを出席させたがるんじゃないかな。
男  なに、それ、どういうこと。
女  先週結婚したらしいの。
男  やるなー。
女  さすがに、年だから籍だけみたいだけど。
男  とりあえず、おめでとうございます。(乾杯)

   ビールを飲んで。

男  で、問題って、なんだっけ?
女  お父さん達が、みんな私とバージンロードを歩きたがっているってこと。
男  いいよ、みんなに歩いてもらおうよ。5m置きに、お父さんに立っててもらって、それぞれがチサトの手を取って。だって、娘の結婚式なんだから。最後に、みんなに前にきてもらって、紹介しよう。この人たちがチサトのお父さんだって。
女  あっちゃん。
男  ひとつだけいい?だれがだだこねても、チサトは俺のところへ来るんだからな。
女  あたりまえでしょ。…バカ。

   アツシ、ビールをぐっと呑み。

男  実は、俺も話があるんだけど。

(幕)


ラストピクチャーショー

2011年06月27日 21時47分43秒 | 脚本

「はりこのトラの穴」というサイトに脚本を登録している。
まあ、たいした作品ではないからアクセスもさほどではないのだが
先月ぐらいからなぜか「ラストピクチャーショー」という作品だけ
アクセスが増えている。
なぜだ?


http://www.infonet.co.jp/apt/march/Aki/LastShow/index.html

 

追記:はりこの虎の穴だとパスワードを要求されるようなのでリンクを変更しました。


福の神あります

2011年05月12日 09時41分59秒 | 脚本

 


映画のシナリオです。
5分間ぐらいの映画を実習で撮りたいという友人の要望で書きました。
瀬戸物屋にはモデルがあります。
写真は2003年に撮影したものです。
映画の撮影が実際に行われたかどうかは、しりません。
連絡が来なかったので、撮らなかったのだと思います。


瀬戸物屋の写真。張り紙には「福の神あります」と書いてあります。

「福の神あります」

1 不幸が続いた

K「よくないことはたてつづけに起きる」

K「うちを出ようとしたら、靴のひもが切れた」

K「アイスクリームが落ちた。……あっ」

K「彼氏に振られた」
A「ごめんな。好きなんだ、あいつのほうが」

K「バイトを首になった」
店長「高校生の方が時給が安くてすむんだよ。うちもたいへんなんだ」

K「おやじが勤めていた会社が倒産した」
電話の向こうで
父「というわけで、悪いが今月から仕送りはちょっと厳しいかもしれない。すぐなんとかするから」

K「ぼーぜんとして、歩いていたら自転車にはねられた」
W「(声だけ)大丈夫」
K「はい」

K「私はなにか悪いことをしたのだろうか」

2 福の神あります

すぐ目の前の瀬戸物屋のウィンドウに「福の神あります」の張り紙。
店に入っていこうとするK、店の前でこける。Wがついて店に入る。

K「福の神っておいくらですか」
店主「○○円です」
K「(財布の中を確認して)じゃあください」
振り向くとW。
W「病院とか、いかなくていい?」
店主「(Wのことはまるで見えていないかのように)はいおつり」

店を出ていくK。後ろからWがついてくる。

3.アパートへ行く道
W「俺、石神っていうんだ」
K「福の神さんですよね」
W「えっ、いや……」

4.Kのアパート

K「どうぞ」
W「いや、送ってきただけだから」
K「それじゃ意味ないでしょ。」
W「はっ?」

部屋の中で、見つめ合う二人。
K「おなか空きましたね。」
W「はあ」
K「ご飯食べましょうか」
W「はあ」
K「やっぱり私が作るのよね」
W「えっ」

食べ終わった二人。
置物の福の神と見比べて
K「福の神がある。福の神がいる。福の神がある。福の神がいる」
W「帰ります。大丈夫みたいだから」
K「神様、帰っちゃうんだ」
W「いや、だから」
K「また明日。待っているから」
W「(独白)こないって」

5 Wの帰り道

W、コンビニのレジで金を払おうとするが、財布がないのに気づく。
W「財布忘れたんでやっぱりいいです」
時計を見て
W「明日の朝早くいけばいいか」

6 (なくてもいいシーン)

Kが財布を見つけて
K「福の神も貧乏なんだ」

7 Kのアパート

翌朝6時半。ドアをノックするW。
W「朝早くごめん。たぶん、個の部屋に財布忘れちゃって、出かけちゃう前じゃないとまずいかなって、あれないと飯も食えなくて」
K「朝御飯食べます」
W「はっ、はい」

8 道を歩く二人

K「で、お父さんが勤めている会社が倒産しちゃって……どうなっちゃうんだろう」
W「はあ」
K「神様、なんとかしてくれますよね」
W「本当に神様がいれば、何とかしてくれるんじゃないですか」
K「ずいぶん他人事なんですね」
W「一応他人だから」
K「あの、神様ってあるだけでも、いるだけでもだめだと思うんですよ。人間だってがんばっているんだから神様もがんばってもらわないと」
W「それってもしかして俺」
K「はい。それで、とりあえずはアパート代なんですけど」

9 病院

W「なぜか神様は私を、病院に連れて行ったが、入り口で引き返した」
K「医者にかかる金なんてないしさ、とりあえず、バイト探して金用意してからだよな」

10 道路工事現場

旗振りをしているW。
W「(ふっとわれに帰り)俺なんでこんなことしているんだろう.」

11 1ヶ月後、Kのアパート

W「(金を渡して)これで病院に行ってください」
K「でも、その前にアパート代が……ご飯食べていきます?これで何か買ってきますから(とWの持ってきた金をつかむ)」

12 2時間後

W「ごちそうさまでした」
K「どういたしまして」
W「ところで、仮に俺が福の神だとして、もちろん違うんですけど福の神だとしたら、努力しない人にはご利益をもたらさないと思うんですよね」
K「はあ」
W「あなたも働くべきです。いや、働きなさい」
K「でも、バイト首になっちゃったんですよね」
W「観つける努力をしてみなくちゃ」

13 コンビニ

Kが出てくる.WにOKサイン.

14 道路

にこやかに買い物をする二人.これを見ている中年の男。

15 部屋の中

電話。
K「はい」
男「すみません。あの、そちらにですね、うちの貧乏神がお世話になっていませんか」
K「いえ……福の神さんだったらいらしてますけど。いえ福の神さんです、」

16 翌日アパートの部屋

男「ちょっとした事故で、記憶をなくしたらしくて、人間界で研修中の身だったんですが。まあ、連絡が取れなくなったのでこうして探していたというわけで」
K「そう言われても。福の神だと思っていたら貧乏神だったなんて」
男「……あいつも、今が大切な時ですから……それに今返して頂かないと、今後ますます貧乏になる可能性もあるわけで」
K「はあ」
男「人間と同棲なんて、まったくあいつにも困ったもんだ」
K「貧乏になるんですね」
男「もちろんです」

17 夜

K「福の神がある。貧乏神がいる.」
W「俺って、やっぱり貧乏神なのかな.働けど働けど暮し楽にならないもんな。でも、貧乏なのはおまえの分の家賃まで働いているからだぞ」
K「でも、一緒にいるとなんとなく幸せな感じだよ」
W「そうだよな」

18 2時間後

一緒の布団で寝ている二人.天井を見つめて。
K「結局、私は福の神が貧乏神でも一緒にいたほうがいいと決心をした。貧乏と幸せとは関係ないはずだもの」


19 働く二人

20 3ヶ月後。アパート

K「3ヶ月がなんとか過ぎた。貧乏神にも昇級試験があるらしい。」

Wが封筒を広げると「じゃん」内定合格。
次に宝くじを新聞で確認し
W「1等1億円。やったー」(電話をかけ)
W「親父、就職内定。おまけに宝くじ1億円ゲットだぜ。彼女は出来るしさ……えー、会ったことがある。いつだよ」

K「どうやら、昇級して本当に福の神になってくれるかもしれない」

21 瀬戸物屋の前

福の神ありますに×がしてあり朱文字で「売りきれました」

END


伊奈かっぺいさんが好きだ

2011年01月08日 23時50分48秒 | 脚本

伊奈かっぺいさんの「詩」や「お芝居」が昔から好きだった。
初めてというか、それが最後だったけれど観たのは「酔いどれの雪街」という芝居だった。
その演出をされていた牧良介さんが
「高木恭造」さんの一人芝居を栃木県の大谷の洞窟で上演された際にちょっとだけ
かかわらせてもらったこともある。

伊奈かっぺいさんの作品で「無口な二人」という脚本があるのだが
原本がほぼ絶版だろうからここに引用させていただく。
この脚本で、舞台が想像できたら尊敬する。

舞台では見たことがないがテレビでは堺正章と山瀬まみが演じていた。


戯曲(おしばい)
 「無口な二人」一幕一景

  の~  
  ・・・   
  の~    
  ん?    
  の~    
  わ?    
  な!    
  あ?    
  さ~    
  ん?    
  い・・・  
  ふ     
  の? 
  あ   
  く?   
  く?
  ん・・・ 
  の!! 
  く~! 
  て  
  て?
  て!
  ん
  か
  ん
  け!
  く
  め?
 
 め 
 
 ん・・・

 ~幕~・・・

意味はここで確認してください。
http://yume-peterpan.cocolog-nifty.com/blog/2007/05/post_46af.html
私のもっている本では「津軽だべッ!」に収録されています。絶版だろうなあ。


粗雑と感動は関係ない

2010年02月01日 20時00分00秒 | 脚本
韓国ドラマの「冬のソナタ」を観ると、
脚本の前後のつじつまが合わなかったりして
突っ込みどころが満載なのだが
かといって、「冬のソナタ」に心を動かされる人はたくさんいる。

つまり、脚本に少しぐらい矛盾やおかしいところがあっても
観ている人はほとんど気にならない、ということだ。

それでも、中には気になる人もいるわけで
一旦気になるとそういうところにばかり
目が行ってしまうということになる。

また、細かいところを本当で重ねたほうが
大きな嘘がつける、というものだ。

発想の転換

2010年01月28日 08時12分58秒 | 脚本

さて、前の「他人の評価」はこれまでの書き込みに対して某ブログにあったものだが、同時にそこには「みんなお前のことなんて嫌いだったんだ」ともあった。なるほど、そうだったのか。とはいうものの、いまさら生き方を変えるのもなんだし、これはこれでなるほどというしかない。彼は、面識もあまりないし、私のある一面を見ているのかなとも思う。
ただ、こういう発言はなんだかの瑕を心に残すのだが、発想を変えれば脚本の材料として使えるし、自分を客観的に見ることも可能となる。高校生のために書いた「ミュージカルをやりたい」という作品では嫌われる自分を描いてみた。
小説を書くとか脚本を書く、あるいは表現行為全体がある意味、病気の治療のようなものだと考えるときがある。ただ、そこに留まっていると他人に見せるものとはならない。こういう見方もあるのだと意識して、今書いている作品を見直してみるのもひとつの方法といえる。

追記
記憶をたどっていくと、やっぱり、誤解のようだ。
まあ、「半分」はというところだろうか。
昔からのことだが、いつも尾を引くな。
「だまされる」、あるいは「惑わされる」まわりもまわりだが。
ほとんど、「ミュージカルをやりたい」の話に近いので笑ってしまった。

 


連作

2009年12月08日 22時49分25秒 | 脚本
何人かで適当に書き出したものを繋いでいく脚本の書き方。
大筋を決めておかないととんでもないことになることも。
過去には一回だけ「誰が殺した」という作品を東堂巡と作ったことがある。
ほとんど私がまとめたのだが。