内海君のアパートは東久留米にあった。電車で通っていた内海君らは東久留米の駅で降り、連絡橋を渡り、のぼりホームの北に一箇所しかない改札口を出て、駅の狭い道を池袋方面に戻る、道が狭いのでバスを回転させる装置がある。ホームの端なでいくと、車が1台やっと通れる一方通行の踏切がある。駅員が見ていないとここからホームに這い上がるものもいた。駅の西に住んでいる者は、北側のバスが通れる踏切か、この狭い踏切を渡らなければならなかった。駅の西側は、広い畑が続いていた。踏切を渡りすぐ左折して、道なりに歩き、変電所の先の坂をくだりきったところで、落合川にぶつかる、近くには竹林公園があって、山にでも来たような錯覚になる風景であった。つい先ごろには川沿いに桜の花が咲いていて、その木の下でお花見をしたことが思い出された。
橋の手前左の畑の中に、狭い道が続き、奥に2階建てのアパートが一軒だけ建っていた。左の鉄の階段を上り一番奥の部屋が、内海君の部屋であった。
車で行くと、所沢街道から六角地蔵を右に行き、笠賭松の坂を下り、落合川の橋の先を右折してまっすぐ行くと、突き当たりの畑がそのアパートのある畑であった。
畑に乗り上げるようにして車を止め、K子と内海君のアパートへ行った。
小さくノックして名前を告げると、しず子が出てきた。内海は机の前に腰掛けてすぐれない顔色をして振り返った。
「寝ていなくって良いのかい」と訊くと、彼のかわりに「横になると、苦しがって、はいてしまうので、椅子に座ったまま、ずうっと寝ているの」と、しず子が答えた。
寝ようと思って布団に横になると苦しくて眠れない、こうして、椅子に腰掛けていると楽なんだといっていた。
しず子とK子がお茶を入れて、テーブルにおいた。
内海君は椅子に腰掛けたまま机に寄りかかってこちらをむいている。ひげも剃れないらしく、無精ひげがのび放題であった。
結婚式の打ち合わせになると、少し元気が出たらしく近くの自動車教習場で免許を取った話や、新婚旅行車で行くのに、まだ運転が不安など冗談を言った。
「もう、一週間も無いんだから、まず、病気をなおさなければ」と話が体の心配に移る。
「私も何回も、病院にいくように勧めているんですが」としず子
「病人でみてもらったの」と尋ねると
「前に一度山田さんに」
だいぶ前に見てもらっただけという。
「町医者じゃだめだ、もっとおおきな病院で検査してもらおう」
「また山田さんで見てもらうから」と内海君が言うが
「いや大きい病院で見てもらったほうが良い、行って来いよ」
「かれ、病院嫌いなんで」しず子が困りきって言う。
「小さい医者じゃなおせないんだから、田無の大きい病院へ行こう」つい声が大きくなる
「隣が」と声を落とすように。窘められる。
「バイトなんかも、しちゃあだめだ、今はまず、なおすことが第一、式の資金で心配してるんなら、そのぐらいならなんとかできるよ」
「人に迷惑かけたくないって、2人だけで何とかしよう、頑張ろうって」としず子
「馬鹿野郎、めいわくかけたって良いじゃないか、友達だろう、もっと迷惑かけろよ」
つい声が大きくなってまた注意を受ける。
「今、バイトはしてないわ」しず子
「できる状態じゃないんだろう」
「甘ったれてないで、病院行って来いよ」
また昂奮して大きな声となった。
「そんなに、怒んないで」弱々しい声で、彼が謝る。
気が付くと、時間はすでに12時を回っていた。
「彼女だって、心配でしょうがない、このままじゃ、結婚式だってできないぞ、あした、必ず、病院行って来いよ」
「うん、必ず行くよ」彼が答えた。
ドアまで、しず子が送ってくる。
「彼、必ず行くって言ってるから、心配だろうが、頼むね」といってアパートをあとにした。
K子を送っていく、車の中で「なぜ、強引にでも病院へ、連れてかなかったの」とK子が行った。「二人の問題だし、いろいろあるのかもしれないし、そこまで強引にはできないよ」と答えた。
「救急車でも呼ぶとか」
「うーん…….。」どうも歯切れが悪い、K子がいらいらするほど、優柔不断である。K子の家を超えて深大寺まで行く、そこの駐車場へ車を止めて、話し合った。
ドアを叩く者が居た、自転車に乗った2人の若いおまわりさんだった。
「こんな遅い時間、どうかしましたか」と一人が尋ねる。不審尋問である。
「話をしていました」
「今、凶悪犯が、この辺をうろついているという、情報が入って、警戒中です、危険ですので家に帰ってください」と言うのであった。それは、嘘の情報と言うことは、わかっていたが、車を移動しなければならなくなった。
K子の家に着いたが、すでに電気は消えていて、家族は寝ているようであった。
内海君のことで、話がぶり返し、近くの道路に車を止めてまた話し合っていた。前に車が止まった、おりて来た男が何か因縁をつけてきた。助手席にの一人乗っていたが、動く様子は無かった。少しいらだっていたので、車から降りて、相手と向き合った、酔っているようにも見えたが、因縁をつけてくる、つじつまが合わないことを行ってくるのであった。
後ろに車が止まり、男が優しそうな声で、「どうかしましたか、」と声をかけこちらに歩いてきた、「この人が、変な因縁を付け」
助けが来たと思いながらそう、答えたがその男右手に、棒のようなものを隠しているのがわかった。運転席に飛び乗り、止めようとする、先ほどの、男をすり抜け逃げた、カンはやはり当たっていて、2台が追いかけてくる。2人はぐる、4人で追いかけてきた。まくのは簡単だった、いつも銀行からの、給料運びでなれている。(過激派に付け狙われたらしい?)
K子を家に送ったときは夜も明け7時になっていた。「今日徹夜で撮影出しがあるので、会えないね」といってわかれた。
まったく最低である、自分に腹が立った、もっと決断力を持たねばいけない、痛いところを突かれて腹を立て、その上喧嘩をしそうになり、それが暴漢で襲われるところだった。K子を危険な目にあわせるなんて、最低な男だ、と自分を責めながら会社に戻った。
山本暎一さんが、お見えになったところで、「日本誕生」の撮影だしが始まる。だから昨夜集めておいた、背景とセルを会わせておかなければならなかった。その作業に取り掛かり昼前から撮影出しを始めた。9時近くまで撮影出しが続き、暎一さんは、疲れた体を癒しに仲間と飲みに行った。栄一さんも最近疲れからか足を引きずっているように見える、私も捻挫で痛めた足を引きずっている、捻挫ってうつるのかな、出かける暎一さんの後姿を見て思った。
あしたのために、仕上外注から集めたセルと、背景さんから、上がってきた背景を、あわせる。本来なら、演助がやってくれる仕事だが、「日本誕生」は、私一人である。11時ごろ、2階で何人も暴れているような音が聞こえたが、いつもの事、と気にも止めなかった。
「日本誕生」の部屋は第二スタジオ1階の一番奥の部屋で、尋ねてくるものもいなかった。
撮影出し準備の作業を続けていた、それにしてもいつまでも2階がうるさい、注意しておこうかなと思ったが、体が疲れていてその元気もなく、椅子を並べて4時前寝てしまった。
橋の手前左の畑の中に、狭い道が続き、奥に2階建てのアパートが一軒だけ建っていた。左の鉄の階段を上り一番奥の部屋が、内海君の部屋であった。
車で行くと、所沢街道から六角地蔵を右に行き、笠賭松の坂を下り、落合川の橋の先を右折してまっすぐ行くと、突き当たりの畑がそのアパートのある畑であった。
畑に乗り上げるようにして車を止め、K子と内海君のアパートへ行った。
小さくノックして名前を告げると、しず子が出てきた。内海は机の前に腰掛けてすぐれない顔色をして振り返った。
「寝ていなくって良いのかい」と訊くと、彼のかわりに「横になると、苦しがって、はいてしまうので、椅子に座ったまま、ずうっと寝ているの」と、しず子が答えた。
寝ようと思って布団に横になると苦しくて眠れない、こうして、椅子に腰掛けていると楽なんだといっていた。
しず子とK子がお茶を入れて、テーブルにおいた。
内海君は椅子に腰掛けたまま机に寄りかかってこちらをむいている。ひげも剃れないらしく、無精ひげがのび放題であった。
結婚式の打ち合わせになると、少し元気が出たらしく近くの自動車教習場で免許を取った話や、新婚旅行車で行くのに、まだ運転が不安など冗談を言った。
「もう、一週間も無いんだから、まず、病気をなおさなければ」と話が体の心配に移る。
「私も何回も、病院にいくように勧めているんですが」としず子
「病人でみてもらったの」と尋ねると
「前に一度山田さんに」
だいぶ前に見てもらっただけという。
「町医者じゃだめだ、もっとおおきな病院で検査してもらおう」
「また山田さんで見てもらうから」と内海君が言うが
「いや大きい病院で見てもらったほうが良い、行って来いよ」
「かれ、病院嫌いなんで」しず子が困りきって言う。
「小さい医者じゃなおせないんだから、田無の大きい病院へ行こう」つい声が大きくなる
「隣が」と声を落とすように。窘められる。
「バイトなんかも、しちゃあだめだ、今はまず、なおすことが第一、式の資金で心配してるんなら、そのぐらいならなんとかできるよ」
「人に迷惑かけたくないって、2人だけで何とかしよう、頑張ろうって」としず子
「馬鹿野郎、めいわくかけたって良いじゃないか、友達だろう、もっと迷惑かけろよ」
つい声が大きくなってまた注意を受ける。
「今、バイトはしてないわ」しず子
「できる状態じゃないんだろう」
「甘ったれてないで、病院行って来いよ」
また昂奮して大きな声となった。
「そんなに、怒んないで」弱々しい声で、彼が謝る。
気が付くと、時間はすでに12時を回っていた。
「彼女だって、心配でしょうがない、このままじゃ、結婚式だってできないぞ、あした、必ず、病院行って来いよ」
「うん、必ず行くよ」彼が答えた。
ドアまで、しず子が送ってくる。
「彼、必ず行くって言ってるから、心配だろうが、頼むね」といってアパートをあとにした。
K子を送っていく、車の中で「なぜ、強引にでも病院へ、連れてかなかったの」とK子が行った。「二人の問題だし、いろいろあるのかもしれないし、そこまで強引にはできないよ」と答えた。
「救急車でも呼ぶとか」
「うーん…….。」どうも歯切れが悪い、K子がいらいらするほど、優柔不断である。K子の家を超えて深大寺まで行く、そこの駐車場へ車を止めて、話し合った。
ドアを叩く者が居た、自転車に乗った2人の若いおまわりさんだった。
「こんな遅い時間、どうかしましたか」と一人が尋ねる。不審尋問である。
「話をしていました」
「今、凶悪犯が、この辺をうろついているという、情報が入って、警戒中です、危険ですので家に帰ってください」と言うのであった。それは、嘘の情報と言うことは、わかっていたが、車を移動しなければならなくなった。
K子の家に着いたが、すでに電気は消えていて、家族は寝ているようであった。
内海君のことで、話がぶり返し、近くの道路に車を止めてまた話し合っていた。前に車が止まった、おりて来た男が何か因縁をつけてきた。助手席にの一人乗っていたが、動く様子は無かった。少しいらだっていたので、車から降りて、相手と向き合った、酔っているようにも見えたが、因縁をつけてくる、つじつまが合わないことを行ってくるのであった。
後ろに車が止まり、男が優しそうな声で、「どうかしましたか、」と声をかけこちらに歩いてきた、「この人が、変な因縁を付け」
助けが来たと思いながらそう、答えたがその男右手に、棒のようなものを隠しているのがわかった。運転席に飛び乗り、止めようとする、先ほどの、男をすり抜け逃げた、カンはやはり当たっていて、2台が追いかけてくる。2人はぐる、4人で追いかけてきた。まくのは簡単だった、いつも銀行からの、給料運びでなれている。(過激派に付け狙われたらしい?)
K子を家に送ったときは夜も明け7時になっていた。「今日徹夜で撮影出しがあるので、会えないね」といってわかれた。
まったく最低である、自分に腹が立った、もっと決断力を持たねばいけない、痛いところを突かれて腹を立て、その上喧嘩をしそうになり、それが暴漢で襲われるところだった。K子を危険な目にあわせるなんて、最低な男だ、と自分を責めながら会社に戻った。
山本暎一さんが、お見えになったところで、「日本誕生」の撮影だしが始まる。だから昨夜集めておいた、背景とセルを会わせておかなければならなかった。その作業に取り掛かり昼前から撮影出しを始めた。9時近くまで撮影出しが続き、暎一さんは、疲れた体を癒しに仲間と飲みに行った。栄一さんも最近疲れからか足を引きずっているように見える、私も捻挫で痛めた足を引きずっている、捻挫ってうつるのかな、出かける暎一さんの後姿を見て思った。
あしたのために、仕上外注から集めたセルと、背景さんから、上がってきた背景を、あわせる。本来なら、演助がやってくれる仕事だが、「日本誕生」は、私一人である。11時ごろ、2階で何人も暴れているような音が聞こえたが、いつもの事、と気にも止めなかった。
「日本誕生」の部屋は第二スタジオ1階の一番奥の部屋で、尋ねてくるものもいなかった。
撮影出し準備の作業を続けていた、それにしてもいつまでも2階がうるさい、注意しておこうかなと思ったが、体が疲れていてその元気もなく、椅子を並べて4時前寝てしまった。