真佐美 ジュン

昭和40年代、手塚治虫先生との思い出「http://mcsammy.fc2web.com」の制作メモ&「日々の日誌」

クレオパトラ

2007年01月12日 20時31分56秒 | 虫プロ
「千夜一夜物語」が、ヒットしたので、次に「金瓶梅」をとヘラルドが言ってきたんですが、あれはアクションがなくて難しいけれど、小島功氏のイメージで行こうと思っていました。
 ところが北海道での「千夜一夜」のプレミアショーに行く車の中で、ヘラルドの社長がいきなり「クレオパトラ」はどうかと言い出して決まったんです。
 あれは僕の大変なミスでして、もっと幻想的な話かと思っていたら、実在の人物の話なので動かしがたいものがあって史実に忠実な脚色になってしまったんですね。
  (ぼくと虫プロ・巻頭インタビューより)
21世紀から3人の男女が、その精神を過去へと転送。紀元前30年のエジプトで、奴隷や侍女に取り入って、クレオパトラの時代の歴史を見極めようとする。と言う宣伝文句。
 この「クレオパトラ」は見て笑って、でも見終わると、何も残らない、現代再見してみても、当時の出来事、話題などわかっていなければ、少しも面白くない、鼻肇の「あっとおどろく為五郎!」イレブンPMを見ていない人、浪曲も聞いたことがない人に絶対にうけないギャグなのである。それらが、実に多すぎいる。一顔見せのキャラクターも、現代で存じている人は、結構な、「お宅」と言えるのではないだろうか。
 またアントニウスの家庭教師カバゴニス声優には教育評論家の阿部進さんを使い、キャラクターもカバゴンの綽名でしられた阿部さんそのものの似顔絵的なものとなっていた。
そんなギャグは、その場限りの思いつくではないかと思える、効果しかなかった。
「今流行の言葉で言えば、一つひとつのギャグが、コンテクストを形作らずに、その場面その場面の異質性、遺物性を一瞬叙述するに過ぎないと感じられた」
「長編アニメーションにおける部分と全体、部分構造と全体の構成。虫プロの第二作の長編アニメはこの点に未解決の問題を残して失敗したのではなかったか。

 そのためか翌年昭和46年9月24日日本ヘラルド映画は、虫プロに見切りをつけ、東京テレビ動画(のちの日本テレビ動画)で製作し、アニメラマをもじったポルノラマと称して谷岡ヤスジの原作で「ヤスジのポルノラマ やっちまえ!! 」を公開している。

失敗作、柳の下に泥鰌はいなかった。東京都内での年間興業収益は、「千夜一夜物語」が第3位、「クレオパトラ」が第10位とけして興行成績が悪かったわけではないが、「クレオパトラ」の製作費は、3割も増えていたので、虫プロの純益はほとんどなく、また社員にボランティアを強いたにすぎず、その隙間風に、労働組合という名の脅威が爪を伸ばしてくるのであった。
コメント (1)
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