令和4年2月3日(木)
今日は『幻住庵記』の第2文節の原文。
② 予また市中を去ること十(と)年(とせ)
ばかりにして、
五十(いそ)年(ぢ)やや近き身は、
蓑虫の蓑を失ひ、
蝸(か)牛(たつむり)家を離れて、
奥羽象潟の暑き日に面(おもて)をこがし、
高砂(たかすな)子(ご)歩み苦しき
法界の荒磯にきびすを破りて、
今(こ)歳(とし)湖水の波にただよふ。
鳰(にほ)の浮巣の流れとどまるべき
蘆の一本のかげたのもしく、
軒端ふきあらため、
垣根ゆひそへなどして、
卯月の初めいとかりそめに入りし山の、
やがて出でじとさへ思ひそみぬ。