貢蕉の瞑想

青梅庵に住む貢蕉の日々のつぶやきです。

手軽で閑素な生活に充足感!

2022-02-09 17:05:32 | 日記
令和4年2月9日(水)
③の後半の口語訳
 さきほが嶽・千丈が峰・袴腰
という山がある。
 黒津の里は、その名の如く
黒々と木が茂っていて、
「網代守るにぞ」と詠んだ『万葉集』の
姿そのままであることよ。
 なおいっそう隈なく眺望しようと、
後ろの峰に這い登り、
松の横枝を利用して棚を作り、
そこに藁の円座を敷いて、
「猿の腰掛」と名付ける。
 しかし、私はあの海棠の木の上に
巣を設けた徐佺(じよせん) や、
主簿峰に草庵を結んだ王翁のような
隠者の仲間ではない。
 ただ睡り癖のある山の民となって、
高く険しい山に蘆を投げ出し、
人けのない静かな山で、
虱をひねって座っているだけである。
 折良く気分が健やかな時は、
谷の清水を汲んで自炊する。

 西行法師の歌にあるような
とくとくと滴り落ちるわずかな
雫の侘しさを愛でて、
一つの炉を備えただけの
手軽で閑素な生活である。
 また、昔住んでいた幻住老人が、
殊に上品に住みこなして、
設計上の疑った趣向などもない。
 持仏を安置する一間を隔てて、
夜具を収納するための場所などを
多少設けてある。