令和4年2月4日(金)
原文②の口語訳
私もまた江戸の市中を去って町外れに住み、
私もまた江戸の市中を去って町外れに住み、
十年を経て五十に近い老いの身、
蓑虫が蓑を失うように庵を人手に渡し、
蝸牛の歩みで、
おくのほそ道を辿り、
名所象潟の暑い大洋に顔を焦がし、
砂丘の歩みに難儀し、
北海の荒磯でかかとを痛め、
この歳になって琵琶湖の波に漂う
心地である。
ふと見れば、
鳰の浮巣が流れ留まることのできる
一本の蘆の葉陰を見つけたように、
私も身を託すことのできる
ささやかな住まいを頼もしく思い、
軒端を葺き直し、
垣根を結び加えたりして、
四月の初め、ほんのしばらくの間と
入った山が、
今ではこのまま出まいとまで
深く思い込むようになった。
西行庵のとくとくの水を真似て、
「とくとくの清水」
山の中腹にあり。

