丘陵のある場所に、ボケの花が咲き乱れていた。
周りが冬枯れの色なので、ひときわ鮮やかで目を引く。 もう私はすぐにくぎ付・・。
しかし手入れされている様子がないので枯れ草が邪魔してしゃがんだり、爪先立ったり。
「いいカメラをお持ちですね」 振り返るとにこやかな笑顔で男性が立っていた。
年格好は、そうだな60・・5、6かな。 「キャノン、カッコいいですね、いいなぁ」
(おっちょこちょいなので首からかけているベルトの、キャノンのロゴが見えたからやわ)
「長女のお婿さんにもらったんですよ。 前にもらったのが故障して修理と思っていたら持っていた、
カメラをくれたんです、新しいのを買い換えたいからって。 半分その事信じてはいないんですけど」
「デジタルでしょ、それに一眼持っているだけでもすごい。 僕はまだペンタックスフィルムなんです」
「僕はデジカメを持っていないので、息子から送ってきた画像を取り込んで整理したり印刷したり、
パソコンを初めて、やっとこんなことが出来るようになったんです」嬉しそうにおっしゃる。
自分には無理、なんて思っていたパソコンの世界、少しづつ色々なことが出来るようになる心境、
視野が広がってくるわくわく感、それは入っている者にしか分からない。 男性の気持ちが良く分かる。
「それはいいことですね。 私も写真やるようになってHPやブログに載せたりしているんですよ」
「あぁ、それはすごい、いいですね」 「どうぞデジカメやって見て下さい、もっと楽しくなりますから」
「友人にも好きなのがいましてね、このボケの写真撮るのに後ろに白いの置いたりしてやっていました。
色々な角度から、ひとつの花撮るのに2時間くらい撮ってますわ」
「わ、本格的ですね。 私も花を撮るのでも一枚載せるのに、10枚以上撮るときもありますよ」
ボケの花を前にして話は続く。 何を隠そう、とても素敵な方なのである、とても上品だし。
ウォーキングなのか、ウォークマンをして、薄めのブルゾンにスニーカーと言ういでたち。
何を隠そう実は私のタイプ!。
ボケの木々の中に折れた枝があった。 いい花のつき具合だったからその枝を取り上げて、
「これ僕が折ったんではないですよね、これいいですよ」 その枝を低い塀の上に置いて下さる。
中々うまく立たなくて、地面に立てようとしてくれている。 「邪魔物がないからいいですよ」と。
話す態度にも、声ももちろんいいし、話にも無理が無く自然でとても好感が持てる。
しかし立ち止まって会話していても、ここは年配者ウォーキングの場、何人もの人たちが通り過ぎる。
時々気にしながら(適当に終わらなきゃ)「ありがとうございます、それでは」 「じゃぁ」
本当はもう少し話をしても全然かまわなかった?
どちらの方向に行かれたのか確認しなかった、せっかくの鮮やかな花だったから。
突然の爽やかな時間だった。 気を良くした私はどこかにないかな小さな春、とか思いながら歩いた。
花と言うほどではないが、季節には青々と葉を茂らせていた木々も冬を越えようとしている。
そんな冬の、形相を変えた姿にも面白いものがある。
頂上から仰ぐ、右は日本一の超高層マンション。 54階、200.4m、クロスタワー大阪ベイ。
真ん中がが三井アーバンホテル。
まだ蕾が多かったユキヤナギのところどころに花がついている!(がうまく撮れなかった)
頂上ではもうとっくにリタイヤしたと思われるおっちゃんが三人、自作の凧をあげている、来るといつも。
今度は撮らせてもらおうかな凧。
名前は全く分からないが、小さな1センチほどの花、初めて目にする。
頂上と言うのは実に気持ちがいい。 とりわけ今日は。 さぁ降りよう。
何処かでまたすれ違うかな・・ささやかな期待を胸に潜めて。
いやだ・・鳥が見てる?私の心。
帰宅して次女に話した。 「素敵な人やったわ、とっても爽やか」
「また会えるかも知れんし、毎日行ったら? 運動にもなるし」(ニヤニヤして)
さて・・どうする、ボケの君。 (白梅の君・・とかの方がきれいだった・・な)