母は昔からお弁当を作るのが好きだった。 中学、高校と5人の子供のお弁当を作って来た。
「子供たちが一生懸命に勉強する姿や食べる姿を思いながら作るのは楽しい」と良く言っていた。
料理上手な創意工夫を凝らした母のお弁当は自慢だった。 決して裕福とは言えない我が家だったのに。
嬉しそうにお弁当を作る母を見て育った精か、それに格別に美味しいお弁当だった精か、私は結婚したら
旦那さんのお弁当を作る! と言うのが、一つの夢だった。
会社では業者さんのお弁当をとっていたが、夫は残り物でも口の合うおかずがいいに決まっているので
お弁当を持って行った。 子供が1人2人・・3人目が出来た時はさすがに会社仲間からもう作っては
もらえないだろうと思われていたが、作った。 時期には子供たちのお弁当も作った訳で・・。
夫のお弁当はその時経理をしていた今は84歳の神戸の夫人が食べていたようでそれも意識して作った。
お弁当の話となると娘たちがお母さんのあのおかずは美味しかったわとか、友達から羨ましがられたとか
楽しげに話してくれるときがある。 邪魔くさいなぁと思って作った事は無いと思う、多分。
それは楽しんで作ってくれていた母のお陰であると確信している。
未だに時折、台所でエプロンをかけて楽しげにお弁当を作っていた母の姿が懐かしく浮かぶのである。
次女と同居になって最初は2人して2人分のお弁当を作っていた。
展君が仕事を変わって食堂で食べるようになったので、お弁当を作るのを休止した。
今や何処でもオフィス街にお弁当屋さんは氾濫している。 会社のビルの下にもお弁当屋さんがあるし、
いくらでもお店が軒を連ねている。 気まぐれにお弁当を作っているが、外食も夫は適当に楽しんでいるようだ。
こんなお店があったとか、美味しい料理を話す事がある。
私への気遣いもあるだろうけど、出来たての温かいものが食べられるのにはお弁当は負けるかも知れない。
「わざわざ作らんでもいいで」と言う言葉に甘えて、朝は貴重なネットの時間にしていたりする。
別居になったらゆっくり時間があるので(お弁当くらい作ってあげよう)そう思っていた。 別居になったけれど・・。
人間ドックで完全なるメタボリック、あれこれ予備軍がつき「お弁当は太るわ」等と言うし(低カロリーをめざして
考えて作るようにしよう)そうは思っていたのだけれど。
今は夜のおかずの残りが色々あるときに夫の方から、「あれとこれと詰めてくれたらいい」と要望するようになった。
邪魔くさいとは思わないが、お弁当がないと楽。 その分2人の朝食を楽しんで作っている。
「無理に作らんでも、食べるとこなんぼでもあるんやから」そう言う夫に甘えようか、それとも・・やっぱり作ろうか・・
今こっそりと悩んでいる。
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