箕面市では、「大阪大学と箕面市との連携協力に関する協定」に基づき、阪大生のキャリア形成を全力でサポートしています。
中でも、大学院高等司法研究科(法科大学院)及び法学研究科との連携は、文部科学省からも「大学と地域の連携モデル」として高く評価されているもので、その取り組み2例について紹介します。
1 国際シンポジウム「公的部門における法の担い手のあり方と行政法・行政法学」
大阪大学豊中キャンパス・シグマホールで国際シンポジウム「公的部門における法の担い手のあり方と行政法・行政法学」が開催され、倉田哲郎箕面市長がメインスピーカーの1人として第1セッション「公的部門における立法と法律専門家」に登壇しました。
第1セッションでは、シュパイヤー行政大学院のヤン・ツィーコゥ教授(Prof. Jan Ziekow, German Research Institute for Public Administration, Germany)が「公的部門における法律専門家:官庁の立法過程における役割と影響~EU、特にドイツの経験~」について、またロンドン大学ガーヴィン・ドゥルーリー名誉教授(Prof. Gavin Drewry,Royal Holloway, University of London, UK)が「イギリスの中央政府における法律専門家―ジェネラリストの官僚文化の軸としての専門家」について、そして阪田雅裕元内閣法制局長官が「日本の法令の立法過程」について、それぞれ発表され、その後、倉田市長が「日本の地方公共団体における立法過程と法律専門家」というテーマで発表しました。
倉田市長の発表内容は、全国初となる「箕面市災害時の特別宣言に関する条例」ほか2条例を例示し、リアルタイムに発生する現実の行政課題に対応するための制度の創設や手続の規定を紹介し、さらには、市の実務や職員の動きに密接したツールの一つとしての条例制定、そしてこれを駆使し、課題の解決をはかるという、政策法務を具現化するという箕面市のプロセスを国との比較も交えながら紹介するものでした。
そしてシンポジウムのテーマの1つである法の担い手について「既存のルールに基づいて仕事をしているにも関わらず、目の前の課題が解決できないのであれば、ルールを拡張することや、そもそも既存のルールが本当に正しいのかどうか、現実に即したものになっているのかなど、既存のルールを時には疑う視点も必要となる。
現実の課題に気づいたり、常識と照らし合わせて違和感を感じる能力がなければ、いくら法令を扱う知識ばかりが身についても意味はなく、ここに法学部やロースクール出身者の活躍に期待する部分があると感じている。
そして、それらの課題発見能力や常識感の醸成のようなものは、おそらく教育だけで養うことには限界があるので、例えば、大学と実務の世界と行き来しながら専門家を養っていくといったプロセスなども重要ではないか」と締めくくりました。
大阪大学大学院法学研究科長・法学部長の林智良教授は、ご自身のフェイスブックで
「国際シンポジウムのテーマは、中央・地方の公務員が、どのような知的素養(一般教養、法学各分野)を備えて、どのように行政への貢献をなすべきかという話と理解しました。
本研究科の招へい教授になっていただいている阪田雅裕先生(弁護士、元内閣法制局長官)と倉田哲郎先生(箕面市長)にもお越しいただき、実務経験に基づく貴重な観察と提言をいただきました。ドイツとイングランドからも著名な研究者をお招き致し、大きな視角から比較法的なお話をいただきました。
すでに知っていることもありましたが、ヨーロッパでの経緯をあらためて整理し、最新の状況を取り入れてお話いただいたので大変すっきりしました。
地方自治体での積極的な条例制定と、問題への機動的な対策に意欲的な行政を展開されている倉田先生のお話には深く頷きました」と評されています。
2 大学院高等司法研究科・法学研究科講義「政策実践と法」
開講3年目を迎える「政策実践と法」ですが、今年度からは法学研究科との合併講義として「中央府省、地方公共団体における政策実践と法の運用に関して、理論と実務の両面から学び、個別政策に即して、基本的な法の運用や政策立案を行う」ことをねらいとして実施されており、受講者自身が実際に首長や行政官になったつもりで政策を立案し、政策案を法律や条例として形にするという能力を実践的に教育しようするものです。
講師陣は、倉田市長(高等司法研究科招へい教授)のほかに高等司法研究科副研究科長の野呂教授、高橋教授そして総務省から大阪大学に出向中の筬島教授で、研究者と実務者による理論と実例をもとにした条例制定のプロセスや運用を理解できる実践的な布陣となっています。
5月23日の講義で倉田市長は、「箕面市土砂等による盛土等の規制に関する条例」を例示して、立法と司法の狭間としての行政の存在意義、法律の建前と本音をクールに理解しながら法律が争われる場面までを想定した条文構成、詠み人知らずとなる条文(成立すれば起草者の意図ではなく文言だけが一人歩き)をどのように成文化するのか等について、事例演習も含め講義しました。
また5月30日の講義では、「箕面市カラスによる被害の防止及び生活環境を守る条例」の制定過程の追体験を通じて、現実に目の前で起こっている地域課題をどう解決していくのかを探りました。既存の枠組みの中でとことんやること、そしてその次の手段として社会の制度を変えたり制約するルールを設けること、そのルール制定に際して派生して発生する諸々の事象、マスコミ対策や検察をはじめとする関係当局との協議等々について広く展開していき、受講生からの質問も多岐にわたりました。
このほか、知的財産センター、高等司法研究科、法学研究科付属法政実務連携センター三者共催の行政研究会特別講義(公開・参加無料)も秋~冬学期に予定されていますのでご期待ください。
今後も、「大阪大学と箕面市との連携協力に関する協定」に基づき特徴のある取り組みを進めつつ、より一層の充実を図り、次世代を担う若者のキャリア形成の支援に努めます。
<モミジーヌも阪大生の皆さんに混じって聴講してきたよ~