みゆみゆの徒然日記

日本の伝統芸能から映画や本などの感想、
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歌舞伎座さよなら公演 二月大歌舞伎 『籠釣瓶花街酔醒』

2010年02月26日 | 歌舞伎
 24日、歌舞伎座さよなら公演二月大歌舞伎夜の部の公演を観劇しました。勘三郎襲名時にもほぼ同じ配役で見ている『籠釣瓶花街酔醒』ですが、この日の一番のお目当てもこれ。観劇後は、もうこれさえ見れば私的には今の歌舞伎座で見るのが歌舞伎を見るのが最後でも悔いはないくらいの気持ちになりました。まずは『籠釣瓶~』の記事のみ先にアップしようと思います。

【あらすじ】こちらから引用させていただきました。
上州佐野の絹商人、佐野次郎左衛門(勘三郎)は下男の治六(勘太郎)と共に桜の咲き誇る吉原仲之町へやってきます。白倉屋万八(家橘)に安く遊ばせると騙された二人は、立花屋長兵衛(我當)に助けられて帰ろうとしますが、次郎左衛門は兵庫屋八ツ橋(玉三郎)の花魁道中を見て魂を奪われます。
八ツ橋の元へと通うようになった次郎左衛門。八ツ橋の親代わりである釣鐘権八(彌十郎)は良い金蔓が出来たと、立花屋のおきつ(秀太郎)を通して度々金策を頼みます。しかし、ついにおきつに金策を断られると、権八は八ツ橋の間夫の繁山栄之丞(仁左衛門)を焚き付けます。そして、栄之丞は八ツ橋に次郎左衛門との縁切りを迫るのでした。一方何も知らない次郎左衛門は八ツ橋を身請けするつもりで、同業の丹兵衛(市蔵)、丈助(亀蔵)と吉原へやってきて、兵庫屋の花魁の九重(魁春)、七越(七之助)、初菊(鶴松)らを座敷に呼んで楽しく八ツ橋が来るのを待っています。そこへ現れた八ツ橋に突然、愛想づかしをされた次郎左衛門は万座で恥をかかされ、うちひしがれて宿へと帰っていきますが、四ヶ月後再び吉原に現れ......。



 はっきり言ってこれぞ玉三郎!そして勘三郎!という最高の舞台でした。客電を落として場内が真っ暗に。そして幕が開くと舞台は桜が満開の江戸吉原。きらびやかな花魁道中にはうっとりしてしまいます。特に玉三郎さんの八ツ橋が出てくると、客席からため息が・・・舞台の上の次郎左衛門でなくても、心奪われてしまうくらいの美しさ。着物なども豪華絢爛なのにも目を奪われるのですが、その豪奢な衣装に負けない見た目が美しいだけでない真の美しさが玉三郎さんにはあると思います。そういう存在感がないとこの役は務まらないでしょう。そしてあの微笑は・・・やっぱりこの世のものではないですね~・・・言葉になりません・・・。
 勘三郎さんも顔が疱瘡の跡のあばただらけで、田舎者だけど、人がよさそうな純粋な男性というのがうまいな~・・・・。初見の時もそう思ったし、同じような感想を書きましたが、純粋だからこそ、八ツ橋に本気惚れしてしまって、遊びでなく、本気で入れあげてしまう。お金を持っているし、人も良いから、廓の人たちもちやほやして・・・。あのようなひどい仕打ちをされてしまうのが、本当にあわれで・・・。他の方法もあるんじゃない?と思ってしまうけれど、八ツ橋は彼女なりの理由があって・・・。その理由である栄之丞は、冷静に考えなくても、とんでもない男ですが、八ツ橋がこんなことをしてしまったというかさえてしまうといっても悪人ではない栄之丞を、男前の仁左さまが演じるので・・・仁左さま贔屓としては「仕方ない!」としか言いようがないのですね(苦笑)
 八ツ橋の気持ちも、次郎左衛門の気持ちもよく分かるので、見ているこちらとしては辛いのです・・・。そして、縁切り後に再会する二人。あのようなことをしたので顔を合わせたくないという八ツ橋に「前のように・・・」と酌をする次郎左衛門ですが、それは「この世の別れの杯」と言い、恨みを述べて、持参した妖刀籠釣瓶で八ツ橋を斬り殺してしまいます・・・。斬られて、後ろ向きに海老反りになりながら倒れる八ツ橋は最後まで美しかった・・・。

 こういう普通の映画とかだったら絶対にうっとりなんてしない残虐な殺しな場面さえも、美しく見せてしまうのが歌舞伎の魅力の一つであると思うのですが、この場面もまさに見所の一つでしょう・・・。最初の場面の表情とは全く違う、狂気に満ちた次郎左衛門の表情がとっても印象的でした。

 物語としては、救いがない終わり方なのだけれども、なんといいますか・・・すばらしい役者さんたちのすばらしい演技だからこそ引き込まれてしまう物語なんだと思います。花魁道中の客席のざわめきも、最後の場面で八ツ橋が倒れるところではシーンとしている客席も含めて・・・この歌舞伎座という空間でこのお芝居を見ることができたことを、自分の宝物にしようと思います。

 夜の部の他の演目のレポについてはまた後日アップします。