吉良吉影は静かに暮らしたい

植物の心のような人生を・・・・、そんな平穏な生活こそ、わたしの目標なのです。

ロバート・ロドリゲス監督『アリータ: バトル・エンジェル』2019年アメリカ

2019-02-26 06:07:07 | 映画・ドラマを観て考えよう

 木城ゆきと『銃夢(ガンム)』をハリウッドがどう映像化してくれるのか・・・長年のファンにとってはここが最大の焦点です。


※主人公アリータ・・・バーサーカー・ボディを装着した姿

 結果は、・・・ちと詰め込み過ぎでした。折角の大作なのに・・・これでは一般の観客にもマニアにも中途半端な気がします。
 アクションもイイ出来です。外国映画で求められる人物の掘り下げもちゃんとやってます。でも何かが足りない。

 詰め込み過ぎというのは、本来ならSW並みに全9作くらいにしないと無理なストーリーを、無理やり3作くらいに押し込めようとしている意図がアリアリなのです。今回は『モーターボウル』編は捨てて『魔角(マカク)』編に絞った方が良かったのではないか、と。
 そして、私のモノ足りなさの原因は『映画化されるに当たって原作のアクの強さが弱まってしまった』ことではないかと思います(結構忠実に映像化しているのに、ですよ・・・そこが問題だ!)。
 どうせならR15指定覚悟で、原作をもっと丁寧に料理して欲しかった!(個人の感想です)。


※クズ鉄町(アイアン・シティ)の上空に浮かぶ空中都市ザレムの圧倒的な存在感!

 しかぁし!アイアン・シティ上空に浮かぶザレムの圧倒的な存在感は流石。これだけでも観に行く甲斐はあります。
 実はこのザレムは、さらに上空の衛星軌道に浮かぶ都市イエールと軌道エレベーターで繋がっていて、この2つの都市名を続けて読むと『エルザレム』になるのです。まぁそこのところは、ちょい置いといて、概略のストーリーを。

 クズ鉄町(アイアン・シティ)で、天空に浮かぶザレムから落ちてくるゴミの山から主人公ガリィ(アリータ)はロボット医師イドに拾い上げられる。それはサイボーグの上半身(スタチュー状態)だったが生命維持装置のおかげでまだ脳は生きていた()。


※ロボット医師イドはガリィ(アリータ)に新しいボディを与えて復活させる。

 このガリィ(アリータ)に亡くした娘のために設計中だったボディを取り付け動くようにしたところから物語は始まります。
 原作では踊り子ロボット()の身体だったはずですが、どうしても登場人物の思い入れを付け加えたかったのでしょう、亡くした娘の名を付けて、ガリィ(アリータ)の世話を焼くイド・・・この翻案はナカナカ巧みでした。


※ロボット医師イドの裏稼業は賞金稼ぎ(バウンティ・ハンター)

 しかし、イドが裏稼業でバウンティ・ハンターをやっていることが明らかになるまでのガリィ(アリータ)の疑惑の描き方がイマイチ。原作を読んでないヒトには分からないでしょうが、ここは『父親代わりのイドが(実は)夜な夜な人殺しをしているのではないか?』というサスペンス部分なのです(実際にはハンターとして連続殺人犯を追っていた)。これが、あまりにもサラッと描かれ過ぎです。


※屈折した内面を持つマカク(グリュシカ)だが、今回は単純な暴力信奉者に描かれてしまった。

 そして、登場する悪役マカク(グリュシカ)が、どうにも単純に暴力だけを信奉するような低能になっていたのが致命的()こいつはサディストで変態でどうにも凶暴なキャラではあるのですが、実はクズ鉄町の地下に捨てられた子供がノヴァ教授に蛆虫状のサイボーグ・ボディ(頭+尻尾)を与えられ、他人のボディに寄生してはその身体を乗っ取るという恐るべき化け物なのです。そして化け物なりの過去を引き摺っているのです(で、主人公にはいびつに歪んだ愛情を抱いています)。

 この化け物に原作では告白をさせ、謎の科学者ノヴァの存在が明らかになるのですが、この映画では最初からノヴァ教授が敵のラスボスとして設定されて『次回作へ続く』という終わり方です。
 ノヴァ教授は単純な悪役ではなくもっと複雑なキャラなのです。どうして単純な善と悪の二極構造にするかなぁ・・・。


※原作のノヴァ教授はプリンが大好き!・・・英語版なら "Yummy!" と叫ぶところ。

 アクション・シーンは良かったのですが、これも速く見せ過ぎで勿体ない!もっと丁寧にじっくり見せて欲しかった!
 続篇は・・・実は私は「作られないような」気がします。好きな方は見逃さない方がイイですよ。

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