吉良吉影は静かに暮らしたい

植物の心のような人生を・・・・、そんな平穏な生活こそ、わたしの目標なのです。

梅原猛の授業『道徳』朝日文庫 / 2007年10月30日第1刷発行

2019-02-06 06:18:27 | 紙の本を読みなよ 槙島聖護
 平成14年4月から9月まで12回に亘って京都洛南高校附属中学校で行われた梅原猛氏の講義を纏めた文庫本。
 中学3年生向けの授業としておこなわれたもので、読み易く、氏の主張が簡潔に纏められています。


※梅原猛の授業『道徳』朝日文庫 / 2007年10月30日第1刷発行

 いま厚労省による統計不正とその偽装の問題が出て国会で騒がれていますが、前回の『モリ・カケ問題』対応にみる財務省のテイタラクといい、ナゼ日本はこうまで堕落した国になってしまったのでしょうか?


※厚労省による不正統計問題が国会を揺るがせている・・・ン?根本大臣ってヅラじゃね?これも偽装?

 今年で戦後74年、私はいま政府を牛耳っている政治家たちが戦後の混乱期のドサクサの中で少年時代を過ごし、マトモな教育を受けてこなかったのが原因ではないかと思っていましたが、問題の根はもっと深いところにあるようです。

 この講義によれば『明治維新によって天皇を中心とした国づくりを推し進めるにあたって、それまでの日本にあった伝統をバッサリと切り捨ててしまったところに問題の根がある』というのです。


※明治になって天皇を神とする新しい宗教が生まれた。

 江戸時代には武士は儒教を学び、庶民は寺子屋に通って仏教精神を自然に身に付けていた、それが明治になって『天皇を神とする新しい宗教が生まれた』というワケです。その中では儒教のある一部『君に忠』のみを取り出して偏った教育が為された。そのために教育勅語が作られ、それに対する批判を許さない風潮が出来上がった。そうして天皇から仏教が切り離され(それまでは天皇の出家や門跡寺院という制度があった)廃仏毀釈が行われた結果、それまでの伝統思想を受け継がない国家ができあがったことに原因がある、と断じるワケです。

 そうして戦後、新憲法ができて教育基本法は制定されたがそれを裏付ける道徳ができていないことが今の日本の状況に繋がるといいます。
 
 日本人は、決して道徳心が欠けている人間ではないんです。いい国民ですよ。そういう善良な心はまだ残っているんですが、教えられなかったら、そういう心はだんだんなくなっていく。それが現代の状況ではないかと思います。前の時間に言ったように、これは少年の非行という形で現れるばかりでなく、政治家や実業家やお役人や裁判官といったエリートが、考えられない恥ずかしいことをしているでしょう。戦後にきちんと新しい道徳が立てられず、それが学校教育で教えられなかったことが、こういうことのひとつの原因ではないかと思います。

 この本の中では氏の提唱する新しい道徳の考え方が述べられますが、それを全て紹介はできないので、一ヶ所面白い部分を紹介するにとどめます。夏目漱石の小説『坊ちゃん』に対する氏の解釈の部分です。


※夏目漱石の『坊ちゃん』は今でも非常に清々しい。

 私はこの小説は非常に清々しい小説だと思う。どうも漱石はこんなふうに思っていたようです。江戸っ子は嘘を言わない。そして会津も正しかった。佐幕で負けた人間の道徳の方が高かった。江戸幕府を滅ぼして明治政府を支配している薩摩、長州の人々や京都の公家はどうも嘘つきだ。この小説にはそういう批判があるような気がしますね。赤シャツには京都の公家のイメージがある。狸にはどこか薩長出身の権力者のイメージがある。
 漱石はこの小説で何を言いたかったのか。明治になって、資本主義の世の中がやってきますが、それは平気で嘘をつく時代ではないか。『坊ちゃん』という小説は、明治という新しい時代への批判のような気がします。夏目漱石が感じたことは、どこかでラフカディオ・ハーン、小泉八雲の心配とつながっていると思う。



※この長州出身の権力者は今もどうしようもない嘘つきだ。
 (↑)剣はまだ残っている良心の呵責または国民の声とでも思ってください。内閣調査室および公安警察の皆さんには、くれぐれも私を要人暗殺の未遂やその教唆の疑いで捜査・逮捕をすることのないようにお願いします。

 この本、今の時代を考えるには最適の本です。オススメします。

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