いまや飛ぶ鳥を落とす勢いの池井戸潤原作による社会派映画。
※野村萬斎主演『七つの会議』2019年日本
ミッチー演じる原島課長はいまひとつパッとしない営業2課長、毎月の営業会議で香川照之の演じる北川部長に業績低迷の責任をトコトン追求される。サラリーマン経験者にとっては誰しも見ていて胃が痛くなる責められようです。
『サラリーマンあるある』だけどコレはキツいよなあ、業績未達のとき『年間目標を死守しろ』と言われて、これまでの不足分を積み上げた売上目標(もはや達成不可能)を立てさせられた経験は殆どの営業担当サラリーマンなら身に覚えがあるはず。ゲロを吐くまでイジめられるミッチーに自分の経験を重ね合わせるヒトは多かろう、です。
※左からダメ課長役のミッチー(及川光博)、グ-タラ社員役の野村萬斎、原島を助ける女性社員役の朝倉あき。
一方毎月目標達成で気勢の上がる営業1課長坂戸を演じるラブりんこと片岡愛之助だが、彼の部署はグータラなお荷物社員を抱えていた。このグータラ社員八角を演じるのが野村萬斎。ラブりんの叱責を『パワハラだ!』と上司に訴えると、その訴えがナゼか通ってしまう。
なぜ係長ゴトキにそんなチカラが?八角係長と北川部長との間には過去に何か因縁があるのか?八角係長の不可解な転注(あえてコスト増になるのにナゼ?)を調べていた社員たちは相次いで左遷され『どうやらこの裏には会社ぐるみの陰謀がありそうだ』と・・・。
※狂言師VSにわか歌舞伎役者のゼロ距離睨み合い・・・顔が近い!近いンだよお!
あっと驚くストーリー展開もさることながら、この豪華な役者陣の顔ぶれはどうよ!個性豊かな面々の演技がガチンコでぶつかり合う様は凄まじいパワーで観る者に迫ります。サラリーマン必見の映画です。
ネタバレの代わりに、いま読んでいる本の一節がこの映画にピッタリなので、それをご紹介します。
しかし、いまの世の中を見てごらんなさい。いまは嘘をつくなという道徳が衰えている。平気で嘘をつくのが当たり前になっている。会社企業の道徳が衰えて、多くの企業がまったく道徳を考えず、儲ければよいという風潮になっている。
ところが雪印食品は嘘をついたためにつぶれてしまった。狂牛病騒動で、輸入した牛肉を国産牛肉と偽って、買い取り制度を悪用して国に買い取らせた。親会社の雪印乳業も、その前に牛乳で食中毒事件を起こして、嘘の弁明をして、社長が辞任した。会社ぐるみでおこなった嘘がいくつもばれてしまったわけです。
雪印といえば一流会社です。社長や専務は、よい国立大学、私立大学を出た秀才に違いない。そういうエリートがやっている会社が、嘘でつぶれた。嘘をつくということが、いまや社会で当たり前というふうになっている。
ある政治家は秘書の給料を自分の費用に流用していたのに、嘘をついていたのがばれて職を失った。どうも政治の世界では流用するのが当たり前になっていたんですね。だから嘘をついたという感覚がない。嘘をつくのが常識になっている。
役人の場合もそうでしょう。鈴木宗男さんに取り入って処分された役人は、さきほどの言葉で言えば阿諛追従をしていた。エリートのキャリア官僚が鈴木宗男さんにおもねった。あんたが悪い、そんなことをやっちゃいけないとは言わない。言わないばかりか、自分も悪の片棒をかついだ。そこには、ひどい倫理観の欠如があるように思います。
日本の社会全体が、嘘をつくのが当たり前であると思うような社会になってしまった。こういう道徳的な頽廃は、日本を滅亡させることになりかねません。日本人は、嘘をついてはいけないという道徳をもういちど回復する必要があると痛切に思います。
梅原猛の授業『道徳』(朝日文庫 / 2007年10月30日第1刷発行)から抜粋
日本人の心に道徳は回復するのか?この映画を観たひとりひとりに考えて欲しい問題です。
※野村萬斎主演『七つの会議』2019年日本
ミッチー演じる原島課長はいまひとつパッとしない営業2課長、毎月の営業会議で香川照之の演じる北川部長に業績低迷の責任をトコトン追求される。サラリーマン経験者にとっては誰しも見ていて胃が痛くなる責められようです。
『サラリーマンあるある』だけどコレはキツいよなあ、業績未達のとき『年間目標を死守しろ』と言われて、これまでの不足分を積み上げた売上目標(もはや達成不可能)を立てさせられた経験は殆どの営業担当サラリーマンなら身に覚えがあるはず。ゲロを吐くまでイジめられるミッチーに自分の経験を重ね合わせるヒトは多かろう、です。
※左からダメ課長役のミッチー(及川光博)、グ-タラ社員役の野村萬斎、原島を助ける女性社員役の朝倉あき。
一方毎月目標達成で気勢の上がる営業1課長坂戸を演じるラブりんこと片岡愛之助だが、彼の部署はグータラなお荷物社員を抱えていた。このグータラ社員八角を演じるのが野村萬斎。ラブりんの叱責を『パワハラだ!』と上司に訴えると、その訴えがナゼか通ってしまう。
なぜ係長ゴトキにそんなチカラが?八角係長と北川部長との間には過去に何か因縁があるのか?八角係長の不可解な転注(あえてコスト増になるのにナゼ?)を調べていた社員たちは相次いで左遷され『どうやらこの裏には会社ぐるみの陰謀がありそうだ』と・・・。
※狂言師VSにわか歌舞伎役者のゼロ距離睨み合い・・・顔が近い!近いンだよお!
あっと驚くストーリー展開もさることながら、この豪華な役者陣の顔ぶれはどうよ!個性豊かな面々の演技がガチンコでぶつかり合う様は凄まじいパワーで観る者に迫ります。サラリーマン必見の映画です。
ネタバレの代わりに、いま読んでいる本の一節がこの映画にピッタリなので、それをご紹介します。
しかし、いまの世の中を見てごらんなさい。いまは嘘をつくなという道徳が衰えている。平気で嘘をつくのが当たり前になっている。会社企業の道徳が衰えて、多くの企業がまったく道徳を考えず、儲ければよいという風潮になっている。
ところが雪印食品は嘘をついたためにつぶれてしまった。狂牛病騒動で、輸入した牛肉を国産牛肉と偽って、買い取り制度を悪用して国に買い取らせた。親会社の雪印乳業も、その前に牛乳で食中毒事件を起こして、嘘の弁明をして、社長が辞任した。会社ぐるみでおこなった嘘がいくつもばれてしまったわけです。
雪印といえば一流会社です。社長や専務は、よい国立大学、私立大学を出た秀才に違いない。そういうエリートがやっている会社が、嘘でつぶれた。嘘をつくということが、いまや社会で当たり前というふうになっている。
ある政治家は秘書の給料を自分の費用に流用していたのに、嘘をついていたのがばれて職を失った。どうも政治の世界では流用するのが当たり前になっていたんですね。だから嘘をついたという感覚がない。嘘をつくのが常識になっている。
役人の場合もそうでしょう。鈴木宗男さんに取り入って処分された役人は、さきほどの言葉で言えば阿諛追従をしていた。エリートのキャリア官僚が鈴木宗男さんにおもねった。あんたが悪い、そんなことをやっちゃいけないとは言わない。言わないばかりか、自分も悪の片棒をかついだ。そこには、ひどい倫理観の欠如があるように思います。
日本の社会全体が、嘘をつくのが当たり前であると思うような社会になってしまった。こういう道徳的な頽廃は、日本を滅亡させることになりかねません。日本人は、嘘をついてはいけないという道徳をもういちど回復する必要があると痛切に思います。
梅原猛の授業『道徳』(朝日文庫 / 2007年10月30日第1刷発行)から抜粋
日本人の心に道徳は回復するのか?この映画を観たひとりひとりに考えて欲しい問題です。