しろみ茂平の話

郷土史を中心にした雑記

傷痍軍人

2023年08月29日 | 失われた仕事

昭和46.47.48年頃、広島の八丁堀、
天満屋広島店の前に毎日、傷痍軍人がへたっていた。
いつも白衣で、
片足か、
片腕か、
片目の無い、傷痍軍人姿だった。
二人組みで、
一人は賽銭箱を前に、ひたすらお辞儀を繰り返す。
一人はアコーディオンで、「戦友」のような、さみし気な軍歌を弾く。
その哀れな感じの音が商店街にもよく響いていた。

ところが、残業や飲み屋帰りの人が、
黒塗りの高級車で帰っているのは、
あの、
歩けない足や、無い腕の傷痍軍人だろうと見破った噂がひろがった。
それでも、噂を知らない人もいて、暫くは天満屋の前に座りつづけた。

この街頭の傷痍軍人は、
広島県の呉市、福山市にはいない。岡山県岡山市にもいない。
たぶん、人口100万都市以上で成り立つ業だったのだろう。

 

・・・


「失われゆく仕事の図鑑」  永井良和他 グラフィック社 2020年発行

 

傷痍軍人

白い衣類に身を包み、
残った脚を投げ出して、もう一方の脚が失われていることを
見る人にわかるような姿勢をとってゴザのうえに座っていた。
施しを受ける木箱が置いてあった。
こういう姿をさらし、人の同情をひいて金銭を恵んでもらう。
名誉の負傷といわれていたが
仕事にもつくことができず施しを請うことになった。

自治体などが禁じたことで、じょじょに少なくなり、存在も忘れられていった。

 

・・・
「昭和の消えた仕事図鑑」  澤宮優  原書房 2016年発行


傷痍軍人の演奏


戦地で負傷して働けなくなった復員兵が街角に立ち、
ハーモニカ、アコーデオンなど音楽を演奏し、
通行人から金銭を貰う。
当初は本物の復員兵だったが、
後に復員兵を装った失業者が多く現れた。

・・・

 

コメント (1)
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする