小学6年生の秋だったと思う、土曜日の午後バスに乗って
母が笠岡の大仙さんに連れて行ってくれたことがあった。
その日、笠岡の商店街は大仙さんで大にぎわい。
商店街はぎゅうぎゅうで歩くのもままならないほど人が多かった。
田舎からお詣りに笠岡に来た人は、、
お詣りと共に、
町で乾物や茶わんなどを買って帰るのが目的だった。
笠岡で買い物をして帰るバスに乗ると、夕方になっていて
駅前の旅館のネオンが見えていた。
きらきら、光ったり止んだりしていた。
それを見ながら、ああ笠岡は町じゃなあ、と思った。
だが、
そのネオンは今思うに、小さな蛍光灯がちかちかしてるだけだった。
それでも当時は楽しかった。
洲崎橋から大仙橋の間には、
呉服・刃物・乾物・菓子・植木などの商人が連らねていたが、今年になってそれも絶えた。
3月の「春大仙」はにぎやかといわれ、その日が雨でなければお詣りに来ようと思っていた。
来てみたら、
1月や2月よりはにぎやかだったが、
スサキ通りや本通りの商店街はほぼシャッター通り。
門前の「植木市」も消え去り、さみしさを感じた。
毎日健康ウオーキングしている笠岡市民は多い。
せめて”大仙さん”の日は、笠岡駅前~商店街~大仙院、のコースで歩いてほしい。
大仙さんには、歴史や市民の思いがいっぱい詰まっているのだから。
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「岡山県の食事文化」 鶴藤鹿忠 日本文教出版 昭和59年発行
笠岡大仙院
大山信仰は、牛馬の守護神としてのほか、大山に参ると死んだ子に会えるとか、死んだ子の足音を聞いたなどという。
備中西南部の笠岡市 井原市 小田郡矢掛町、美星町毛野、川上郡備中町佐 原目、西山字大蔵、浅口郡鴨方町、金光町、倉敷市玉島などには大仙院がある。
お参りの多いのは 笠岡大仙院と井原大仙院である。
特に笠岡大仙院には縁日である旧暦毎月の二十三、四日には多数 のお参りがある。
一月の初大仙と三月の春大仙はにぎあう。
笠岡大仙院の正称は仏松山海蔵寺大仙院で、真言宗高野山派の寺院である。
元禄五年(一六九二年) に、笠岡の豪商・橋野与三左衛門が出家して笠岡市川辺屋町に建立した。
権大僧都法印正範上人が 関与している。
伯耆大山寺の本尊・大仙智明大権現、本地は地蔵菩薩を勧請した。
毎月の縁日に は 六地蔵前で、へぎ塔婆に水杓で水をかける流水潅頂をする。
死んだ子供の着物を供えたり、さい銭 箱に菓子を入れると子の所まで届くという。
また、線香の煙を体にまぶして、無病息災をねがう。
場所・岡山県笠岡市笠岡「大仙院」
撮影日・2024.3.4