ルーツな日記

ルーツっぽい音楽をルーズに語るブログ。
現在、 フジロック ブログ と化しています。

アラン・トゥーサン@ビルボードライヴ東京

2009-06-04 15:44:05 | ソウル、ファンク
ALLEN TOUSSAINT / THE BRIGHT MISSISSIPPI

5月29日、ビルボード・ライブ東京にて、アラン・トゥーサンを観てまいりました。私が観たのは2ndショー。案内された席は前から2列目のテーブルで、アランの斜め後ろ方向。ぎりぎりで横顔しか見れないものの、鍵盤さばきは完璧に見れるなかなかの席。とりあえず大粒のアサリが入ったボンゴレを食べながら開演を待ちました。前回の来日時は残念ながら寂しい客入りでしたが、今回はそれが嘘のように1Fフロアはほぼ大入り満席という盛況振り。やっぱり話題の新作を発売したばかりというタイミングが良かったんですかね。いい感じです。そしてほぼ定刻通りにメンバーが登場。

ステージ中央のグランド・ピアノにアラン・トゥーサン、その向かって左側にドラムスのハーマン・ルボー、さらに左にベースのローランド・ゲリン、その反対側、トゥーサンの右側にはサックスのブライアン ‘ブリーズ’ カヨリ、さらにその右側にギタリストのレナード・ポーチェという布陣。面白いのは彼らの服装。アランを中心にみんな黒一色でびしっとクールに決めているなか、何故かレナード・ポーチェだけは上下紫! しかも派手な柄入りで胸元がはだけてなんだか “がらが悪い” 感じ…。でもそれがある意味“ワン・ポイント”的な良い味を出していましたけどね。

1曲目はインスト・ナンバーの「Traffic」。一昨年の来日公演はギター・レスでしたが、今回はギタリストが居る分、出音がゴージャスに感じます。サウンドに厚みが出ただけでなく、楽器同士の絡みにヴァリエージョンが出きてスリリング。そして客席を埋め尽くした観客の反応が、前回とは違う熱気を産み出します。そしてもう1曲インストをはさみ、早くも伝家の宝刀「Yes We Can」。客席からも待ってましたとばかりに歓声が上がります。そしてこのままベスト選曲へ突入かと思いきや、意外にも新作「THE BRIGHT MISSISSIPPI」からタイトル曲「Bright Mississippi」、続いて「Egyptian Fantasy」の2曲。この編成ではトラディショナルなジャズを取り上げた新作からの曲は難しいのでは?と思っていたのですが、サックス奏者のブリーズがクラリネットに持ち替えて対応。とは言え、新作の雰囲気そのままではなく、このメンバーならではのR&Bな感性が溶け込んだ演奏でした。これがまた良い感じで、CDで聴くよりさらにアラン・トゥーサン色が染みる古き良きニューオーリンズの香りでした。

ジャズ・ナンバーで和んだ後は同じみのヒット曲メドレーで盛り上がります。「A Certain Girl」~「Mother-In-Law」~「Fortune Teller」~「Working In The Coal Mine」と名曲が紡がれます。トゥーサンの声は相変わらず優しくまろやか。低い声がまたふくよかで良いんですよ。こういうメドレーは私が過去に観た2回の来日公演でも演っていましたが、とにかくピアノを弾き、そして歌うアランが楽しそうなんですよね。もうホント最高でした。定番と言えど、やっぱこれは演ってもらわないとね。

そしてメドレーでヒート・アップしたあとは再び新作からのナンバー。この緩急のつけ具合が今回のライヴの胆。曲は「St. James Infirmary」。超有名なトラディショナル・ナンバーですが、私が新作のなかでも最も好きな1曲。今回のライヴではしっとりとしたメロウな曲が少なかったので、この曲のムーディなメロディ・ラインが際立っていましたね。そしてその旋律を奏でるアランの柔らかいピアノ・タッチにはやっぱり耳を奪われます。続いて、新作には入っていませんが、古き良きニューオーリンズの息吹たっぷりの「Bourbon Street Parade」。この曲ではアランが引っ込み、バンドだけの演奏となり、ブリーズがサッチモをもっと野太くしたような声で豪快に歌ってくれました。これには観客も沸きましたね。

前回もそうだったんですが、今回もサックス奏者のブリーズは美味しかったです。例えばギターのレナード・ポーチェもソロを弾く機会は結構ありましたよ。時にファンキーに、時にジャジーに、職人的な味わいで貢献していましたし、彼が弾いたフレーズにアランが瞬時に反応し同じフレーズで追いかけるなんていう、ライヴならではのコンビネーションも見せてくれました。ですが、いたってクールなんです。熱くならない。その点、ブリーズは熱い!とにかくソウルフル!彼がソロを取ると急に室温が2~3度上がる感じ。そして頂点に上り詰めるがごとくブロウする!痺れっぱなしでした。

ですが、主役はやはりアラン・トゥーサンですよ!「Bourbon Street Parade」の終盤、大歓声に迎えられてステージに戻ると、次の曲は「Mr. Mardi Gras」。軽快なテンポで飛ばし、会場の熱気が最高潮になった頃、おもむろに立ち上がったトゥーサンの手にはなにやらビニール袋が。その袋からマルディグラで使われそうなマスクを取り出し、客席に投げる。取り出してはまた投げる。私も欲しかったですけど、明らかにことごとく女性へ向けて投げている感じなので諦めました。トゥーサンって意外とそういうところありますよね~。いやいや紳士的なレディ・ファーストですね。たぶん。

そんなファン・サービスで客席を沸かせた勢いで代表曲を畳み掛けてくるかと思いきや、ここでトゥーサンが弾き出したのはクラシックのフレーズ。これも定番のトゥーサンによるピアノ・ソロ・コーナー。どこかで聴いたことのあるメロディーが次から次へと紡がれる。それはまるでピアノと戯れるかのようでもあり、計算されたメロディのコラージュのようでもある。しかもクラシックと言えど、何処か丸みを帯びていてトゥーサンらしい味わいなんですよね~。思わずうっとりとしていると突然「Big Chief」のイントロが! いきなり盛り上がる観客を嘲笑うようにそれは「Tipitina」へと変わる。再びバンドが入り、今夜一番の盛り上がりに。やっぱりニューオーリンズ・ピアノと言えばプロフェッサー・ロング・ヘアですよね~! そしてさらにマイナー調の「Tipitina And Me」へと変化。この流れも定番ですけどね、分かっていてもグッときてしまう。

そして代表曲「Southern Night」。エフェクトの掛かった声と、美しいメロディに耳を傾けながら、この極上の夜も終わりが近いことに寂しさを覚えたり。ラストは新作からのブルース・ナンバー「Long, Long Journey」。CDでは土っぽいスライド・ギターが印象的ですが、さすがにレナード・ポーチェはスライドはやらないようで、トゥーサン主体のピアノ・ブルースな魅力が逆に新鮮。ブルースを歌うトゥーサンも良い!

残念ながらアンコールはなかったものの、終演後にサイン会がありました。もちろん私もサインを頂きました。新作のジャケットに書いていただいたサインには、これも同じみのトーン記号が踊っています。握手を求めると、思いのほか強く握ってくれました。

やっぱりアラン・トゥーサンは良いですね。実は一昨年に観たばかりなので今回は見送ろうかとも思ったのですが、やはり観に来てよかったです。新作からの曲も聴けましたし。でも欲を言えば、70年代のメロウ&ソウルフルな曲も聴きたかったな~、なんて思ったり。他の日はセットリストどうだったんでしょうね?

*曲目等、間違ってましたらごめんなさいね。


*上写真はトゥーサンにサインを頂いた最新作「THE BRIGHT MISSISSIPPI」。トラディショナルなジャズを扱ったインスト中心という意欲作なれど、ニューオーリンズへの愛情がたっぷり感じられる、トゥーサンならではの魅力的な作品です。しかしバックにはドン・バイロン、マーク・リーボウ、ジェイ・ベルローズといった、面白いメンバーが集められており、プロデューサーであるジョー・ヘンリーの手腕が光ります。



ALLEN TOUSSAINT / CONNECTED
こちらは96年のソロ作「CONNECTED」。ライヴの翌日、渋谷タワーレコードで行われたトーク&サイン会でサインを頂きました。これにはトーン記号の他、葉っぱのような絵も書いてくれました。ちなみにこのアルバムには今回の来日メンバーメンバーである、ハーマン・ルボー(ds)、ローランド・ゲリン(b)も参加しています。


~関連過去ブログ~ お茶のお供に。

 09.05.28 アラン・トゥーサンとミーターズ

 07.10.25 アラン・トゥーサン@Billboard Live TOKYO その1(07年の来日公演)
 07.10.26 アラン・トゥーサン@Billboard Live TOKYO その2(07年の来日公演)
 06. 6. 2 アラン・トゥーサン・ライブ!(06年6月、原宿BLUE JAY WAYでのライブ)