徒然地獄編集日記OVER DRIVE

起こることはすべて起こる。/ただし、かならずしも発生順に起こるとは限らない。(ダグラス・アダムス『ほとんど無害』)

ピッチから聴こえた闘う声/第2節 広島戦

2012-03-18 20:17:03 | SHIMIZU S-Pulse/清水エスパルス11~14


ホーム開幕の広島戦でほぼ3ヶ月ぶりのアウスタ。
朝から降り注いでいた雨は、ゲームの佳境で豪雨になってしまったけれども、オレンジのポンチョで埋まったスタンドは1万3000人とは思えないほどホームを演出していたし、日本平のピッチは相変らず日本一美しかった。
久々に、やはり「ライブ」はいい(レフリーへの罵倒も含めて)。現場に行くとテレビでは見えないものがいくらでも目に入ってくるし、それは良くも悪くもではあるけれども、やはりそもそも現場に行かなきゃわからないことは多い。
どうしても行けないときのスカパーはありがたいけれども、スタンドで声出してた方が精神的にはいいです。

アフシン「林は特別な選手だと思います。(中略)彼は本当にサッカーを愛し、サッカーのために生きている人だと思います。ピッチでは守備陣をしっかりとオーガナイズすることができますし、ボックス内で大きな存在感を発揮し、ボールをしっかりと出すこともできます。だから私は、彼の将来を楽しみにしています」
J's GOAL 3月17日付

それにしてもこれほどピッチの声が聴こえてきたのは久しぶりのような気がする。
特に新加入のGK林の指示の声はスタンドにいてもしっかり聴こえてくる。伸二や敬輔がピッチ内で指示の声を出しているのはよく見るけれども、ゴール前に構えた林の声が聴こえるのは本当に安心感がある。さらに序盤の勢いが落ち着いて、清水にミスが目立ち始めた頃、アンカーの村松がミスをした吉田をかなり強い調子で声を掛けていたのも印象的だった(叱責かな)。これ、藤枝東対静学だ。彼らはチームに就職したわけではなく、あくまでも個人事業主のプロであり、自らの価値を証明するために彼らはピッチ上で真剣に闘っている。
そんなプレーヤーたちが声を出し、闘う姿勢を見せることがスタンドにいる人間にとって、いかに安心感と頼もしさを感じさせることか。オレたちは闘うプレーヤーと呼応しながら「チーム」と「ホーム」を作っているのである。

キックオフから先制点までの10数分間は、広島名物のショートパスのお株を奪ったような構成、激しいプレッシングと、ほとんど前節の名古屋戦の勢いを再現したような素晴らしい展開になった。残念ながら先制点から前半にかけては展開が落ち着いてしまったこともあるけれども、清水側のミスが目立ち始め、広島に攻め込まれる場面が多くなった。
またゲーム全般に言えることだろうけれども、レフリー木村のゲームコントロールの拙さも清水のテンポを悪くさせた要因と言えないか。ファウル云々については見解の相違もあるんだろうけれども、あれほど一方的にカードを連発させてしまってはピッチ内のみならず、スタンドの雰囲気も極悪になる。スタンドから怒声が飛び交った時、以前彼がアウスタでレフリングしたときの悪印象が蘇った。勿論清水の若いプレーヤーたちのゲームプラン、コントロールの拙さもあるだろうけれども、あれほど「チャンスを貰った」わりに決めきれない広島相手に、この内容ならば悪くはない(それにしても寿人はともかく、高萩は本当に良くも悪くも嫌らしいプレーヤーだった…)。
オフはいろいろとあったけれども広島のスタメンは昨季とまったく遜色なく、コーチングスタッフを見ても継続は明らかではある(スタメン以外はかなり見劣る気がするが)。正直、この内容で、あの選手層で「このままでいい」という広島がこの先どの程度伸びしろがあるのかと疑問なのだが、しかし清水の場合、このメンバーで、この選手層ならば、アフシンのみならず「未来は明るい」とまた強く思った。
もっと楽に勝てただろうというのはそういうことでもある。

アフシン「ゴールを決めた後のことに関しては、改善していかなければいけません。選手たちは、そこで結果を出さなければいけないとナーバスになったのかもしれませんが、少し後ろに下がってしまい、広島にスペースを与えて、プレーをさせてしまいました。我々の全選手のJ1での出場時間を足しても、他のチームと比べると少なく、経験というのはまだ足りない点だと思います。結果をしっかりと出していくためには、もっと賢くやれるようにしていくこと、早く成長していくことが重要です」
J's GOAL 3月17日付

ただし終了直前に失点してしまったセットプレイ前の選手交代にはちょっと違和感があったのは事実だし、広島が一度蹴ったCKを取り消してまで交代させる必要はなかったと思うんだが…得失点もプラスにしたかったし。

昨年勝てなかった広島にまずは半分借りを返せた。次は同じく柏に借りを返す。
この2戦で1分1敗と、まだ今季勝てていない柏のホームゲームってのが、実に嫌な感じはするんだが、まあ今の新戦力の勢いと調子の良さを考えれば好ゲームが期待できるだろうと思う。
ゴール裏のチケットは用意した。連勝のために全力でコールする。
「アウエイ」も楽しいんだよ。問答無用にゴール裏とピッチがひとつになれるから。

終了後、静岡に戻ってこれまた久しぶりの駅南酒場で呑む。



懐に余裕がまったくないので小一時間程度だったけれども、美味かったですよマグロのしそ揚げ。オススメはされた新メニューの餃子もパンチが効いていて美味かったけど(180円でこれは安い)。
次はボトル入れなきゃなあ…その前に生活再建とアウスタのナイトゲーム問題を片付けなきゃならんけどw

この「祭り」は時間が解決してくれるものなのか/東京新聞「3.11後 デモ考」

2012-03-18 17:40:18 | News
<「祭り」の高揚が続くのは数ヶ月。六〇年安保は一ヶ月、六八年の「パリ五月革命」は二ヶ月でした。もうその段階は過ぎている。福島の事態と再稼動の問題が続く限り、そして一億総中流の社会が戻らない限り、デモの潜在力は続くでしょう。>(小熊英二/東京新聞「3.11後 デモ考(上)」3月18日付)

<3.11の日本全国の「反原発デモ」は、各種情報を合計すると、約7万人をはるかに超えるようだ。福島1万6千人、東京1万4千人、大阪では2ヵ所で約1万8千人、広島は2千人、敦賀1200人、ほかに全国各地で30箇所ほどのデモがあったという。総計すると相当の数。確実に草の根へ…。>(鈴木耕‏ @kou_1970

デモに限らず、音楽や演劇のようなエンタテイメントでも、何事においても「ブーム」というものは、後から考えるほど「長期間」であるケースは少ない。ブームを支えるのはインパクトでしかないのだから、その記憶が薄れていってしまえば、どうしたってブームは時間が経つごとに収束、自然消滅していくことになる。
しかし、この「祭り」は時間が解決してくれるものなのだろうか。
残念ながら、反/脱原発の動きはかつての運動にあったような乾坤一擲のゴール設定はもはやできないだろうし(ゴールではなく通過点ならはあり得るけれども)、それに向けた開放感や達成感は感じられないだろう。そこにはもはや「挫折」や「転向」などという逃げ道や自己憐憫は存在し得ない。
事故を起こした原発は今後数十年に渡って人々の話題に上がるだろうし、フクシマが以前の形で戻ることは、おそらくもうない。そして維持・推進側がどう言い繕い、言い張ったところで、原発というシステムの欺瞞性が隠しようがないものであることは明らかになった。一年近く、この動きが継続しているという事実は、もはやそういうことである。

「終わりの始まり」のようなネガティブなことは書きたくないんだが、「変化の始まり」であることは、どうしたって間違いがない。すでに数年前から始まっていたとはいえ、団塊の世代の本格的なリタイアによる超高齢化社会の始まりは避けようがないことで、団塊の世代という巨大な「数」が良くも悪くも社会を変えていくのは、これはこれで日本の社会の宿命である。
そこに原発事故と少子化問題と年金問題を重ねてみれば、それらが重くシンクロし合い、影響し合っていることは一目瞭然である。原発事故を「これまでのように」ごまかし、先送りすれば、ゼニカネの問題だけではなく国家のヴィジョンとして、少子化問題に対する政府の子育て支援のお題目に矛盾が生じるし、当然少子化問題は年金問題にダイレクトに影響する。
これで「変化」が起こらないと思う方がどうにかしている。
泣いても喚いても、20世紀後半の日本のような「安定のヴィジョン」は見出せない。

それならばいくら生活に汲々としたって、ただ状況に巻き込まれるよりも、状況を作る意識を持つ方がいかにポジティブになれるか、というものである。

小規模デモ同時多発の継続性を保ちつつ、この細々とした、それでいて拡散した「草の根」が変化の真っ只中での小さな(そして大きな)胎動と思えば、その「小規模」をことさら嘆く必要はない。
路上でのデモンストレーションとコア層の形成、そして先週の3.11国会議事堂包囲のような来るべき「大規模行動」へのプレゼンテーション、いま毎週のように全国で行われているデモには、そういう拡がりへの架け橋、糊しろとしての目的を持つことができれば役割は充分果たしていると言えるんじゃないか。
デモのコア層はよりダイレクトに、すでに直接抗議へ行動のフェーズを移している。

東京新聞の「3.11後 デモ考」の連載はまだ続くようなので注目したい。