●宇宙探査●月と火星を第2の地球に!―SPE―         科学技術研究者   勝 未来

                 ~各国は月と火星の探査計画を着々と実行に移している~   

●宇宙探査●アルマ望遠鏡、観測史上最遠(131億光年)の銀河の合体を観測

2019-06-21 15:02:43 | 宇宙

 早稲田大学/日本学術振興会の橋本拓也特別研究員、井上昭雄教授を中心とした研究チームは、アルマ望遠鏡を用いて、ろくぶんぎ座にある距離131億光年の彼方の銀河「B14-65666」を観測し、この天体から酸素、炭素、塵(ちり)が放つ電波を検出することに成功した。

 アルマ望遠鏡による観測で、遠方銀河に酸素、炭素、塵がそろって発見され、130億年以上前に起こった銀河の合体が明らかになった。合体銀河としてはこれまで観測された中で最も遠い天体であり、宇宙誕生後10億年に満たない時代の現象を捉えた重要な成果。

 この3種類の電波がそろって観測された天体としては、観測史上最も遠い天体で、ハッブル宇宙望遠鏡の赤外線観測では、この天体は2つのほぼ同じ規模の星の集団(銀河)で構成されていることが明らかになっていたが、酸素や炭素、塵も、2つの銀河の位置に塊を形作っていることがわかった。

 さらに、2つの銀河が異なる速度で動いていること、天の川銀河の100倍という激しいペースで星を生み出していることが、詳しいデータ解析から明らかになった。これらの結果を受けて、同研究チームは、この天体は小さな2つの銀河が互いに衝突し合体しつつあると結論づけた。つまり、最古の合体銀河の発見でである。

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●宇宙探査●すばる望遠鏡の超広視野主焦点カメラで遠方超新星を多数発見

2019-05-30 20:08:24 | 宇宙

 京大学国際高等研究所カブリ数物連携宇宙研究機構 (Kavli IPMU) の安田直樹教授を中心とするKavli IPMU、東北大学、甲南大学、国立天文台、東京大学大学院理学系研究科、京都大学の研究者らからなる研究チームは、ハワイのすばる望遠鏡に搭載された超広視野主焦点カメラ 「Hyper Suprime-Cam (HSC; ハイパー・シュプリーム・カム) 」を用いた半年間の観測により、赤方偏移1以上 (約80億光年遠く) の遠方超新星58個を始め、約1,800個もの超新星を発見した。

 近傍を含む大量の超新星を発見したことのみならず、遠方超新星を半年間という短期間の観測からこれほどの数発見できたことは、大口径のすばる望遠鏡の集光力と高解像度で広視野という HSC の特徴を合わせた、すばる HSC での観測の強みが存分に活かされた成果と言える。

 超新星爆発は星が一生の最期に起こす大爆発で、宇宙進化の原動力であることが知られている。太陽の10億倍以上という銀河全体に匹敵する明るさで光り輝き、その後一カ月から半年ほどで暗くなってしまう。

 特に、Ia (いちえい) 型と呼ばれる超新星は、その絶対的な明るさがほぼ一定であるため、見かけの明るさの明暗により超新星までの距離を測定することが可能。

 また、近年では Ia型超新星よりも5-10倍も明るい超高輝度超新星と呼ばれる特殊な超新星が次々と発見されている。

 超高輝度超新星は、その明るさのために非常に遠方のものまで観測できることから、宇宙初期にできた大質量星の性質を知るのに重要な手がかりになる。

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●宇宙探査●JAMSTECなど、月は地球のマグマオーシャンからできた可能性をコンピュータシミュレーションで実証

2019-05-20 14:01:15 | 宇宙

 海洋研究開発機構(JAMSTEC)付加価値情報創生部門数理科学・先端技術研究開発センター細野七月特任技術研究員らは、現在の地球及び月を作った原因とされる、巨大衝突仮説と呼ばれる現象のコンピュータシミュレーションを行い、月が原始地球のマグマオーシャンと呼ばれるマグマの海から作られた可能性があることを突き止めた。

 現在の地球と月は、46億年前に起きた、ふたつの天体の衝突である巨大衝突という現象によって作られたと考えられてきた。巨大衝突仮説は地球と月の様々な特徴を説明できるため、コンピュータシミュレーションにより様々な検証がなされてきた。しかしながら、アポロ計画で月から持ち帰った岩石に含まれる様々な元素の同位体比測定結果は、巨大衝突仮説に基づく従来のコンピュータシミュレーションの結果と矛盾することが指摘されてきた。

 そこで同研究では、従来の標準的な巨大衝突仮説に基づくモデルを改良し、原始地球にマグマオーシャンがあるという仮定の下、巨大衝突のコンピュータシミュレーションを世界で初めて行った。その結果、マグマオーシャンが月の形成に大きく寄与することで地球と月の同位体比問題が解決される可能性があることを示唆した。

 巨大衝突仮説は、現在の地球及び月を考える上で極めて重要な仮説であり、この仮説を元に地球のその後の熱進化などが考えられてきた。同研究の計算結果は、これまで考えられてきた初期地球とは違う結果をもたらすもの。これは、現在の地球がどのように形成されたかを知る上での、大きな手がかりとなるであろう。また、巨大衝突仮説は原始地球のみならず、太陽系内の他の惑星にも起きたと考えられている。このような、「惑星の多様性」を説明する上でも、同研究の計算結果は示唆を与えることが期待される。

 

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●宇宙探査●国立天文台と中国国家天文台など、天の川銀河に他の矮小銀河が衝突した証拠を発見

2019-05-14 18:48:10 | 宇宙

 国立天文台、中国国家天文台などの研究者から成る研究チームは、中国の分光探査望遠鏡「LAMOST」による探査で選び出した恒星を、すばる望遠鏡に搭載した高分散分光器HDSで詳細に観測するという共同研究を2014年から続けている。

 同研究チームは、これまで観測した400個を超える恒星の中に、元素組成に際立った特徴のある恒星を発見した。こういった恒星が天の川銀河で見つかったのは初めてだが、天の川銀河を取り巻く矮小銀河ではこれまでにいくつか見つかっている。

 この恒星は矮小銀河の中で誕生したものの、母体である矮小銀河が後に天の川銀河と合体した結果、現在は天の川銀河の一員となっていると考えられる。また、この恒星の母体である矮小銀河が誕生してから天の川銀河と合体するまでは、ある程度の時間が経過していたことが示唆された。

 天の川銀河のような大きな銀河は、周囲にある小さな銀河との衝突・合体を何度も繰り返して成長してきた。恒星の元素組成を調べることは、天の川銀河の成長の歴史を研究していく手掛かりとなる。

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●宇宙探査●東京大学と理研、アルマ望遠鏡の観測データから巨大原始星の周りにアルミニウムを含む分子を発見

2019-05-07 14:40:07 | 宇宙

 東京大学・JAXAの橘省吾教授、東京大学の上塚貴史特任助教、国立天文台・総合研究大学院大学の廣田朋也助教、理化学研究所の坂井南美主任研究員らの研究グループは、オリオン大星雲の中の巨大原始星「オリオンKL電波源I」から回転しながら吹き出すガスの流れ(アウトフロー)の根元付近に、一酸化アルミニウム分子が存在することを、アルマ望遠鏡の観測データから明らかにした。

 これまで、一酸化アルミニウム分子は、年老いた恒星から吹き出すガスにしか観測されていなかった。同研究では、巨大原始星にその分子を発見し、その空間分布まで初めて明らかにした。

 一酸化アルミニウム分子がアウトフローの根元付近にだけ観測されるという事実は、揮発性の低い一酸化アルミニウム分子がアウトフローの中で固体微粒子(ダスト)に変わっていることを示唆する。

 アルミニウムを主成分とする鉱物は、太陽系最古の固体物質中に豊富に存在するが、その形成環境は充分に理解されていない。

 同研究の結果をきっかけに、今後、原始星周囲での金属を含む分子の分布を明らかにすることで、太陽系最初期に惑星の材料となった鉱物がどのようにつくられたのかを理解することに繋がると期待される。

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●宇宙探査●理研、金沢大学、ガンマ線バーストのスペクトルと明るさの相関関係を数値シミュレーションによって再現

2019-04-26 11:19:11 | 宇宙

 理化学研究所(理研)開拓研究本部長瀧天体ビッグバン研究室の伊藤裕貴研究員、長瀧重博主任研究員、数理創造プログラムのドナルド・ウォレン研究員、金沢大学理工研究域数物科学系の米德大輔教授らの国際共同研究グループは、国立天文台、理化学研究所、京都大学基礎物理学研究所のスーパーコンピュータを用いて、宇宙最大の爆発現象である「ガンマ線バースト」におけるスペクトルと明るさの相関関係(米徳関係)を、数値シミュレーションによって理論的に再現することに成功した。

 経験則であった米徳関係の理論的基盤を示した同研究成果は、長年の謎となっていたガンマ線バーストの放射機構の解明に大きく貢献すると期待できる。

 ガンマ線バーストの放射機構の理論モデルとして、近年「光球面放射モデル」が注目を集めている。しかし、理論的な精査はまだ不十分であり、このモデルの妥当性を実証するには至っていなかった。

 今回、国際共同研究グループは、相対論的流体シミュレーションと輻射輸送シミュレーションを組み合わせることによって、大質量星の爆発に伴う相対論的ジェットからの光球面放射の評価を行った。

 その結果、ガンマ線バーストの観測から経験則として知られていた米徳関係が、ジェットが大質量星の外層を突き抜ける際に形成する構造に起因して、自然に再現されることを明らかにした。

 この結果は、ガンマ線バーストの主な放射機構が光球面放射であることを強く示している。

 

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●宇宙探査●史上初、国際研究チームが地球サイズの電波望遠鏡でブラックホールの撮影に成功

2019-04-10 22:49:41 | 宇宙

 4月10日、国立天文台など世界約80の研究機関による国際研究チームは、世界6か所で同時に行われた記者会見において、巨大ブラックホールとその影の存在を初めて画像で直接証明することに成功したと発表した。

 これは、地球上の8つの電波望遠鏡を結合させた国際協力プロジェクト「イベント・ホライズン・テレスコープ」よって行われた。イベント・ホライズン・テレスコープは、世界中の電波望遠鏡をつなぎ合わせて、圧倒的な感度と解像度を持つ地球サイズの仮想的な望遠鏡を作り上げるプロジェクト。

 今回撮影されたのは、おとめ座銀河団の楕円銀河M87の中心に位置する巨大ブラックホール。このブラックホールは、地球から5500万光年の距離にあり、その質量は太陽の65億倍にも及ぶ。

 ブラックホールは、莫大な質量を持つにもかかわらず非常にコンパクトな、宇宙でも特異な天体。ブラックホールがあることで、その周辺の時空間がゆがみ、周囲の物質は激しく加熱される。

 イベント・ホライズン・テレスコープは、超長基線電波干渉計(Very Long Baseline Interferometry: VLBI)という仕組みを用いている。世界中に散らばる望遠鏡を同期させ、地球の自転を利用することで、地球サイズの望遠鏡を構成する。

 今回イベント・ホライズン・テレスコープが観測したのは、波長1.3mmの電波。VLBIにより、イベント・ホライズン・テレスコープは解像度20マイクロ秒角という極めて高い解像度を実現できた。これは、人間の視力300万に相当し、月面に置いたゴルフボールが見えるほど。

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●宇宙探査●理研などの国際共同研究グループ、アルマ望遠鏡で大質量連星系の起源を解明

2019-04-03 09:43:26 | 宇宙

 理化学研究所のイーチェン・チャン研究員を中心とした国際共同研究グループは、アルマ望遠鏡を用いて、「とも座」の方向、距離5500光年にある天体「IRAS 07299-1651」から放たれる電波を観測することによって、この天体のガス雲の中では、生まれたての2つの重い星が連星系を成しており、アルマ望遠鏡の高い解像度を生かした観測によって、これら2つの星の間の距離とそれぞれの運動、さらにその周囲を取り巻くガスの運動を捉えることに成功した。

 電波の強度から連星系の質量を求め、ガスの運動と合わせて分析した結果、同研究グループは、2つの星がそれぞれ別個に誕生したのではなく、先に生まれたより重い星の周りにあるガス円盤が分裂し、そこからもう1つの星が誕生したと結論付けた。このような状況が明らかにされたのは初めてのこと。

 太陽の8倍以上の質量を持つ重い星のほとんどは、相棒の星と回り合う連星系を成しているが、こういった連星系がどのようにして作られたのかは長年の謎となっており、その形成過程は分厚いガスの雲に覆われているため、これまで観測が困難であった。

 今後、他の系で同様の解析を実施することで、大質量星の連星系の形成過程が次々に明らかにされていくことが期待される。

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●宇宙探査●アルマ望遠鏡、天の川銀河中心の近傍に潜む中間質量ブラックホールを発見

2019-02-13 14:42:05 | 宇宙

 アルマ望遠鏡が、天の川銀河中心付近にある特異な分子雲のこれまでにない詳細な構造を捉え、その運動を解析したところ、太陽の3万倍もの質量を持つブラックホールの存在が明らかになった。

 この結果は、天の川銀河の中心付近にこのようなブラックホールが他にも多く潜んでいる可能性があることを示している。

 今回、国立天文台野辺山宇宙電波観測所の竹川俊也特任研究員と慶應義塾大学理工学部物理学科の岡朋治教授らの研究チームは、アルマ望遠鏡を用いて、天の川銀河の中心核「いて座A*(エー・スター)」から約20光年離れた位置に発見された異常な速度を持つ分子ガス雲について、高解像度の電波観測を行った。

 そして、この分子ガス雲は複数のガス流から成り、それらが「見えない重力源」に強く引っ張られるように公転運動をしている様子を捉えた。詳細な運動解析により、太陽系よりもずっと小さな領域に太陽の3万倍にも匹敵する莫大な質量が集中していることが明らかになった。このことは、天の川銀河中心核の近くに重い中間質量ブラックホールが漂っていることを強く示唆する。

 同研究は、超大質量ブラックホールの起源解明や銀河進化の理解につながるだけでなく、周辺のガスの運動を調べるという、ブラックホール探査の新たな扉を開く可能性があるという点で極めて重要な成果。

 アルマ望遠鏡(アタカマ大型ミリ波サブミリ波干渉計)は南米チリ共和国北部、標高5000mのアタカマ砂漠に建設された電波干渉計。2011年に科学観測を開始し、日本を含む東アジア、北米、欧州南天天文台の加盟国と建設地のチリを合わせた21の国と地域が協力して運用している。

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●宇宙探査●国立天文台らの研究チーム、小型望遠鏡で太陽系の最果てにある小天体の影捉える

2019-01-29 16:37:38 | 宇宙

 国立天文台らの研究チームは、太陽系の最果てにある極小サイズの天体が、背景の恒星を隠す現象を市販の小型望遠鏡で捉えらえた。大型望遠鏡をもってしても直接観測することが不可能な現象を、市販の小型望遠鏡でキャッチし、極小天体の発見につなげた。この発見は、いまだに謎の多い太陽系の誕生時の姿を知るための大きな手掛かりとなる。

 太陽系で最も太陽から遠い惑星である海王星の外側には、地球を始めとする惑星を作る材料になった半径1㎞から10㎞ほどの小天体が、惑星への成長過程からとり残された結果、現在も存在していると予測されてきた。しかしこのサイズの小天体はあまりに暗く、すばる望遠鏡などの大型望遠鏡を使っても直接観測することはできなかった。

 元国立天文台研究員で、現在は京都大学所属の有松亘研究員を中心とする研究グループは、このような小天体を、まったく別の方法で確認する観測を実施した。市販の口径28センチメートルの望遠鏡に高速ビデオカメラを装着し、多数の恒星を記録する方法である。

 同研究グループは、沖縄県宮古島市に設置した2台のシステムで同じ領域を同時に観測し、2000個の恒星を60時間にわたってモニターした。その結果、ある一つの恒星が0.2秒間だけ暗くなったところを捉えた。詳しく解析した結果、この現象は、地球から約50億㎞離れたところにある半径およそ1.3㎞の極めて小さな天体が、恒星の前を通りその光を遮ったことで起きたのだと分かった。

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