かーいそーにーなーとニックは言い、なぐさめのつもりか、「じゃあ、今日は自分でサンドイッチつくれ」という。
どういうなぐさめ?
罰ゲームじゃん。
で、自分でサンドイッチ作ってると、子供たちのこと思い出してー泣けてくる。
しばしして、ニックが本気で慰め出した。
「じゃーなー、この話を聞きなさい。」と言って語り出したのが、以下の話。
ユダヤ教でもっとも重要な儀式は何か、お前はもちろん知ってるだろーが、それはシュマーの祭りだね。
とあるユダヤ人街に、新しいラバイが越してきた。最初の仕事がシュマー祭りだったんだよ。
街中の人間がこぞって、夫婦は腕を組み、子供の手をつないで、熱心にシナゴーグへ集まった。
ところがラバイが祈り始めるや、ある人々は立ったままシュマーを唱え出し、また別の人々は座ってシュマーを唱和し始めた。そして互いに指さして言い合った。
「全員起立!立ちなさい、シュマーは立ってやるものだろうが」
「何を言うか、座れ座れ、シュマーは座って祈るものと決まってる」
自信のない若者や子供は、言われるままに、立ったり、座ったりした。立て、座れの怒号、何故立つべきか、座るべきなのかの議論、ほとんど喧嘩ごしの口論があちこちで巻き起こった。うるさくてたまらん。祈るどころでない。
新任のラバイは、冷静になって、その場にいる全員の中から、最も年寄りらしい信者を選んで、明るく訊ねた。
ここはひとつ、ユダヤ人らしく、古きよき昔の伝統に従いましょう。
シュマーを立って唱えるのが昔ながらの伝統でしたか?
年寄りが答えた。
いいや、立ってやるのは伝統じゃなかったなあ。
ラバイがまた聞いた。
では、座って唱えるのが伝統だったんですね?
いいや、座ってやるのも伝統じゃなかったなあ。
ラバイが両手を開いた。
じゃどうすればいいんです?
シュマーの間中ずっと、こうして立ったり座ったり、立つべきか、座るべきか、えんえんと議論し続けるおつもりですか?
いったい何がこちらの伝統なの?
年寄りは、ぼんと手を打って答えた。
それじゃよ。
立つべきか、座るべきか、えんえん議論し続けるのがわしらの伝統なんじゃった。
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