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ミセスローゼンの道後日記

結ひあげし髪に冬日の当たりけり

エルメスの手帳は使いやすく美しい。
先生の手帳には、すべての知人友人の名がもれなくのってる。先生がその手帳を見て、山のような”結婚しましたカード”を送ったら、入れ替わりに山のような”結婚おめでとうカード”が届いた。ひっきりなしに電話もかかってくる。親戚からはお祝いの品も届く。先生はそれらを私に見せ、「これは誰で、いつからどんなつきあいがあって……」と説明するのが楽しくてたまらないらしい。
ある夜、一緒にオデッサファイルを見てたら、とちゅうで元カノから電話がかかってきた。聞くともなしに聞いてると、先生はこんなことを言ってた。
「カード届いた? ありがとう。君の声が聞けてとても嬉しい。そう、ぼく結婚して、日本へ移住するんだよ。新しい人生が始まったんだ。感謝祭と年末にこっちでコンサートが二つ、1月23日には日本でハイドンCを弾くんだよ、いいだろ? 毎日毎日練習でね、最後の逢瀬を持つ機会はたぶんないと思う。うん、ぼくも君に会えなくて寂しくなるよ。君の顔は絶対忘れない、君の声を永遠に耳にとどめておくよ。たくさんのキスとぼくの真心を君におくる。さようなら、かわいい人。」
これこそまさに平成の光源氏だと思う。
(先生は日本総領事館で西暦・和暦対照表を見ていらい、年の話が出るたびに、「ええと、それはヘイセイ○○年だね」と換算して言って得意になってる。)

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