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ミセスローゼンの上人坂日記

霊廟の闇の中にも夏立ちぬ


ニックが朝からバッハの無伴奏チェロ組曲五番を弾いている。プレリュードを聞くと、しみじみ無事に生きてこれてよかったと思う。幸せも不幸も分かち合える相方や家族があってよかった。美空ひばりの「河の流れのように」と同じ感慨が湧く。ニックにそういって歌ってみると、「全然ちゃうやんけ」とツッコまれたが、私の中では同じ。私の考えは以下のような物。

音楽には音程と音色がある。音程は音楽を構築する。脳が音程を認識し、意味を求めて動き出す。心が音色を感受し、感情も動き出す。どっちも脳やけどね。心と言いたいのよね。まあだから、AIや音楽学校の勤勉な生徒がどれほど完璧な音程で弾こうが感動しない、という現象も起こりうる。美空の歌を「アーアー。河の流れのヨーニー。」とAIスターの初音ミクちゃんが歌ってもあまり感動しないんじゃないかな。音色を拒絶するようなリズムと音程の躍動する曲を歌わせると、ミクちゃんは俄然輝く。ともかく、ニックが作る一音一音の音色は、美空の歌声のように心に染み入り、涙が出そうになる。





おまけ。
ニックいわく。無伴奏バッハの六曲中難しい順は、一番が音程も音色も最も難しく、順に二番から六番へどんどん簡単になる。ね? 普通の人はその逆だと思うでしょ。ニックが一番をどんだけ練習するか、今その謎が解けた。




















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