長月の文豪に似し眉毛かな

「ゴリラのDNY」
弓子と二人でかばんを買いに行く。新学期（明日）から高校生。セロを背負って登校するので、今までのバックパックではいけない。メッセンジャーバッグという、新聞少年が肩に斜めにかけてるような鞄を探しに行く。何軒かまわった後、”快適な家”という家庭用品店の鞄コーナーで、理想の鞄を見つける。有名なメーカーでゴリラのマスコットがついてるやつだ。ゴリラの名はDNYという。すでにタグがついて、名前が決まっていたのだ。弓子は自分の人形やぬいぐるみに必ずCRSとBJMNという二つの名をつけてきた。いくつものCRSやBJMNが部屋に足を投げ出して座ったり、うずくまったりしている。言われてみると、確かにCRSはCRSらしく、BJMNはBJMNらしい顔つきをしてる。ゴリラは、初めて別の名前を持つ仲間、未知の生活に共に立ち向かってくれる弓子の味方だ。「本当に気に入ったよ。ちょっとだけ学校へ行く気がわくよ。でもこんな高い鞄、本当に買っていいの？」と弓子。「これは両親からの入学祝です」と言って買ってやる。八十二ドルで勇気がわくなら安いものだ。