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新大阪駅のホテルに一泊、今朝オーケストラの仲間と合流して西宮のKOBELCO大ホールへ、コンサートは4時半から。
(正月早々、気分悪くなりたくない方はここからは読まないで下さい。)
ホテルで怖い経験をした。
早く寝過ぎたんで、夜中に目が覚めた。というか隣の部屋の喧騒に起こされた。ひどい喧嘩をしている。英語である。
「お前が嫌いだ!」
「死んでしまえ!」
と、何度も何度も繰り返し若い男が叫んでいる。拳で壁を殴るか、机をひっくり返すような、どすん、という音が響いてくる。英語といっても訛りがある。多分、アジア圏の英語を使う地域から来た旅行者だろう。
夫も起きて、悲しい夫婦関係だね、と、ぽつんと言う。それぞれ昔を思い出して暗くなる。だが腑に落ちないのは、妻の声が全く聞こえて来ないことだ。夫だけが一方的にわめき、死ねと罵り、一人で暴れて、妻は泣き声ひとつ立てないなんて、あり得るだろうか。ここには夫だけが居て、国の妻に電話して、独り怒り狂っているとか?
だんだん男がエスカレートしてきたので、フロントに連絡して注意を促す。
しばらくして静かになった。疲れ果てて眠ったのか。
それから私達は眠れず、朝になった。
正月四日の朝。新大阪駅裏の通りには誰もいない。鳩に、雀に、鴉ばかり。
一階のレストランで朝食を済ませ、部屋に戻ると、ちょうど例の部屋から人影が出て来て、どきっとした。
ずんぐりした眼鏡の三十くらいの、陰気そうな男性が巨大なスーツケースを両手に出て来た。後から出て来たのは、その男によく似た、男を一回り小さくした猫背の白髪の六十代の父親であった。