勇気と根気は師匠譲り。チェロの胴にひびが入ってびびった昨日から一日たって、本番直前の楽屋。メーキャップする間もインターバルを確認し続ける。自分のチェロより一回り大きく駒が高い。低い音域のインターバルが自分のチェロより広い。高い音域の間隔は自分のチェロに近い。弦を押さえるのにもっと力が要るが、イージースピーキング、鳴りやすいチェロだ。さすがリッチなサウンドだ。十倍高価なチェロを弾く機会を貰ったと思うしかない。自分のチェロが弾けないことをくよくよしてても始まらない。昨日からアダムと私で励まし続けた。ミコは音色に集中し続けた。結果、コンサートは大成功。一か八かの勢いと集中力で、二日前のリハーサルよりもいい演奏をした。しかしニックが半ば楽しんでやる死に物狂いと、娘が半泣きでやる死に物狂いとは、見てる気持ちが全く違う。一夜にして白髪になりそうなくらい気を揉まされた。
一楽章思い切って弾けた。速い二楽章の音程が外れず、勢いも削がれなかった。三楽章を新チェロの伸びる美声で歌えた。ピアニシモをじっくり聞かせた。疲れた手の疲れを見せぬように四楽章を歌い切った。観客にも伝わった。疲れなしによいコンサートはなし。ニックもワミレスコンサートをサバイブしたらしいよ。
