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「小耳に挟んだ話」
今は亡きチェリストのリン・ハレルは、ニックの年長の友人でした。ユダヤ教に改宗されていたそうです。私もその気になればそうする事も出来るのですが、鰻とハムがこんだけ好きな私には無理でしょう。ところで、生前リンさんはロココ変奏曲の出だしをD弦で弾いておられたそうです。どう思うか、とある人がニックに問うているのを小耳に挟みました。チェロは弦とポジションの無数の組み合わせの中から自分の出したい音を選んでゆく楽器。ニックは出だしをA弦で弾いています。曇りの無い青空が広がってゆくような音色。一方、D弦のその音色はやや曇って、青梅雨の如く内に篭って響きます。ニックのD弦のデモンストレーションも聞きました。リンさんはこんな音を求めて弾かれたのでしょう。こういう話は妙に心に残ります。
「つなぐ」
故郷愛媛の宇和島信用金庫の情報誌『つなぐ』に夏の思い出というエッセイを載せて頂きました。故郷のイカ釣り船の思い出と、シトカ島の白夜の思い出。
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