ミセスローゼンの上人坂日記

短夜のたましひ抜けて会ひにゆく

ロサンゼルスから二時間ドライブして、標高2,060メートルのビッグベア湖に住む友ジャドソンを訪ねる。七月四日独立記念日の休暇を過ごす釣り客に混じり湖畔にて食事、鶏が駆け回る山の家でポップコーンを食べ映画を見る。「The Hundred-foot Journey」は、パリに移民したインド人家族が、有名なフレンチレストランの向かいにインド料理店を出すというお話。私は料理映画が好き。ジャドソンのもてなしの気持ちが嬉しい。帰り道は真の闇。山の夜は真っ暗、木々の間に瞬く星の光がもの凄い。彼は何故か小鳥の囀りのBGMをドライブ中繰り返し車内に流すのだ。朝はいいが、山の夜道に聞くそれは、星の囀りのようで怖い。

ビッグベアマウンテンに一泊、次はパームスプリングズに住む故ルジェロ・リッチー夫人を訪ねる。彼女は数日前から、何という事か、ご近所の友人、知る人ぞ知る作曲家、故エルンスト・クレシュニクの未亡人を看取る手伝いをしてる最中であった。ジュリアに電話すると、いいからいらっしゃいよ、と言う。看病の気分転換になるから行こう、とニックも言う。友達ならやっぱそうだよね。懐かしいルジェロの匂いのぷんぷん残る、この世の果てみたいに大きな石がごろごろころがる砂漠の家へ着くと、夫人も老プードルのアイーダも暑さにやつれた美しいご様子、源氏物語の六条御息所のやう。荷も解かずに生温いプールに裸で飛び込んで涼をとり、ろくに食べていない夫人を町のイタリアンレストランに連れ出し、三年分の近況報告の後は、尽きぬルジェロの思い出話。帰り道の広場に車を止め、独立記念日の花火を一緒に見る。真夜中電話が鳴ってジュリアが出かけ、クレシュニク未亡人が亡くなった。プードルのアイーダはその間吠え続け、私達も眠れなかった。
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