ロック探偵のMY GENERATION

ミステリー作家(?)が、作品の内容や活動を紹介。
『ホテル・カリフォルニアの殺人』(宝島社文庫)発売中です!

アメリカ大統領選、トランプ返り咲きか…

2024-11-06 22:43:06 | 時事


アメリカ大統領選が、いよいよ投開票を迎えました。

結果、トランプ氏の当選確実ということです……
一応まだ確定ではないかもしれませんが、複数の現地メディアが当確を出しているということなので、ほぼ決定なのでしょう。



まあ、ハリスさんが民主党の新たな候補に決まった時点で、この結果はある程度覚悟していました。

最後の最後で、いわゆる“ガラスの天井”が立ちはだかるだろうということで、下馬評で10ポイントぐらいの大差がつく感じでもなければ勝てないだろう……と。選挙直前の調査で接戦となっているようでは厳しいとみていました。

私にいわせればトランプなどという人は論外で、大統領どころか一政治家にすらなるべきではない人物ですが、残念ながらそれが支持されてしまう……
この現実に向き合うための心の準備といったらなんですが、一期目の様子を見ていて、ある程度の楽観もあります。トランプ氏はいろいろと無茶な政策を掲げていますが、本当にトンデモな政策は、結局のところどこかの時点でストップがかかり、実現にはいたらないんじゃないかと。
その最後の砦といえるのが、憲法です。
たとえ大統領が決定しようが、憲法に反していればひとまず押し通すことはできないわけです。それが、憲法というものの存在する意義です。主権者である選挙民が(私からすれば)誤った判断をくだしたとしても、最終的には憲法が逸脱を止める……とりあえずは、アメリカ合衆国憲法がその機能を果たしてくれることを願うばかりです。



ゴジラ新作制作へ

2024-11-03 22:31:11 | 日記


本日11月3日は、文化の日……

ですが、ゴジラの日でもあります。

毎年この日はゴジラフェスというものが行われており、今年も開催されました。
毎回、新作のショートフィルムがあって、これがゴジラファンにとっては嬉しいものとなっております。
去年は、『ゴジラ対メガロ』50周年ということで、メガロとジェットジャガーが登場。ジェットジャガーのほうは、次回に続くというような形になっていて、今年その続編が公開されました。
下は、その予告編動画です。
例年だと、本編の動画も東宝のチャンネルにアップされるんですが、今年は今のところまだ出ていないので……

『フェス・ゴジラ5 怪獣大決戦』予告編

本編のほうは、ゴジラフェス全体の配信映像で見ることができます。
今年はメカゴジラ50周年ということで、メカゴジラが出て来るんじゃないかと思ってたんですが……観てみると、そういう話ではありませんでした。今年は、キングギドラ誕生60周年ということでもあり、キングギドラのほうにフォーカスした動画となっているのです。
ゴジラの長い歴史において、実はメカゴジラとキングギドラは一緒に出てきた作品が一つもなく、そのドリームマッチがいよいよ実現するのかと思っていたんですが……それは持ち越しということに。


ところで、ゴジラといえば、ホットな話題として新作の制作決定という話がありました。

『ゴジラ -0.1』のヒットを受けて、続編が制作されるということです。新たなゴジラサーガの展開……こちらも、大いに期待したいところです。




衆院選2024

2024-10-28 22:14:12 | 時事


先日、衆院選が行われました。

結果、与党は大幅に議席減……やはり、直接的にはカネの問題が大きく響いたわけでしょう。
新総裁のご祝儀支持率で選挙を乗り切るという自民党の伝統芸も、今回は不発に。ここは、大きな誤算だったと思われます。
石破茂という人は、自民党内では受けが悪いけど、国民の間では人気がある――という話だったわけですが、自民党の上層部はその“石破人気”の本質を見誤っていたんじゃないでしょうか。
ここで示されているのは、「批判勢力として権力を批判することで人気を得ていた人が、権力をもつ側についたときにどうなるか」という問題です。
これまでは政権と距離を置いて批判的なこともいっていたのに、権力の側に立ったら、これまでいっていたのと違うことを言い出したりする。そうなると、批判勢力としての人気はがた落ちする。そこが剥がれ落ちたときに、石破茂という政治家その人が持っている人気などというものはほぼなかった、と。

批判勢力が批判勢力としてしか人気を得られない……という状態には、ある種の問題も潜んでいるように思えます。
権力の側にいない間は人気を博していられるけれど、政権を獲得したら、もう政権批判で人気を得ることはできなくなり、本人も周囲もぎくしゃくしはじめ……というのは、かつての政権交代が失敗に終わった経緯にも重なるものではないでしょうか。
これはすなわち、二つ(あるいはそれ以上)の政治勢力が、本源的に対等ではない、「権力を持つもの」と「権力を批判するもの」という役割分担になってしまっている――ということで、これは、この国の政治風土がひょっとしたら明治時代以来ずっと克服できずにいる問題ではないかと思えるのです。この役割が交代してしまうと、政治を動かす側も見ている側も居心地が悪くなり、結局もとに戻る、で、やっぱり政権交代なんかしないほうがよかったという認識に……となると、普通に政権交代が起こりうる政治環境は成立しません。今回の衆院選で、足し算のやり方によっては自公系以外の政権も数字上誕生しうるわけですが、仮にそれができたとしても、またかつての民主党政権と同じことが繰り返されてしまうだけなのではないか……そういう懸念をぬぐえないのです。
この状況を解消するために必要なのは、複数の勢力が対等である状況を作るということでしょう。
それが絶望的に難しいわけですが……しかし、まがりなりにも十数年前に政権交代があり、今またこうして自公政権が過半数割れを起こしたというのは、政権交代可能性とでも呼ぶべきものが、この国にある程度定着しつつある萌芽とも見えます。現在野党にある人たちは、今回の躍進におごらず、焦らず、この芽を育てていってもらいたいと思います。



Samson, Rinding with the Angels

2024-10-23 22:56:02 | 音楽批評


本ブログの前回記事で、Raven というバンドをとりあげました。

いわゆるニューウェイヴ・オブ・ブリティッシュ・ヘヴィメタル(NWOBHM)のバンド……そういう話が出てきたので、このブログではおなじみの流れで、NWOBHMの他のバンドについても、ちょっと書いてみようと思いました。

で、書いていたところ……たまたま、ポール・ディアノが死去したという訃報が入ってきました。

ポール・ディアノは、このブログにたびたび出てくるアイアン・メイデンで初期のボーカルをつとめていた人。
後に脱退してブルース・ディキンソンに交代するわけですが、そのディキンソンがメイデン加入の前にやっていたSamsonというバンドがあります。
ということで……今回とりあげるのは、そのSamsonです。


サムソンは、1976年にデビューしたヘヴィ・メタルバンド。
NWOBHMのなかでも、初期のほうから活動していたバンドといえるでしょう。

あまり知名度は高くないと思われますが、先述したようにブルース・ディキンソンがアイアン・メイデン加入前に在籍していたことで知らています。当時のディキンソンは、ブルース・ブルースという名前で活動していました。
その時期の曲、Riding with the Angelsを。

Riding with the Angels

一方、アイアン・メイデンが活動を開始したのもサムソンとほぼ同じころ。
しかし、メイデンのほうはバンド結成から作品を発表するまでに数年を要し、音楽業界での活動という点では、少しサムソンに出遅れました。
しかし、あるときイベントで共演したアイアン・メイデンのパフォーマンスに、“ブルース・ブルース”は大きな衝撃を受けたといいます。メイデンのステージが終わると観客の半分が帰宅してしまい、ディキンソンも考えるところがあったということです。
そのときに、このバンドで歌ってみたいというのがあって、後に実際にメイデンに加入するわけですが……このサムソンというバンドは、ディキンソン以外にもなぜかメイデンと人的つながりがいくつかあります。たとえば、ドラムのサンダースティック。覆面ドラマーとして知られる個性的なドラマーです。また、別のドラマーでクライヴ・バーという人がいて、この人もメイデンにいたことがあります。中心人物であるポール・サムソンも、メイデンへの加入を打診されたことがあるんだとか。

といったふうに、アイアン・メイデンとサムソンは浅からぬつながりがあるわけですが……その後のキャリアを比較すると、かなりの差がついていることは否定できないでしょう。
スタート地点ではサムソンのほうがやや先行していたものの、いつしか逆転し、現在ではもう比べ物にならないほどメイデンのほうが巨大になっています。サムソンのほうは、今では知る人ぞ知るバンドといった感じ。サムソンというNWOBHMのバンドを知っているかと人に尋ねたら、サクソンじゃなくて?みたいにいわれてしまうんじゃないでしょうか。
これだけの格差が開いてしまったのは、一つには、それだけブルース・ディキンソンという人の存在が大きかったということでしょうが……私見では、単にそれだけではありません。私が思うに、ディキンソンの移籍は、アイアン・メイデンというバンドがNWOBHMの枠を超越したモンスターバンドになっていく、そのポテンシャルの原因であり、結果でもあったのではないでしょうか。


ディキンソンは、初期のメイデンにジェスロ・タルの影響を感じ取っていたといいます。
以前このブログで、ディキンソンがジェスロ・タルのイアン・アンダーソンと共演している動画を紹介しましたが、そういうところにも支流を持っている点が、ディキンソンの琴線に触れたらしいのです。この点は、アイアン・メイデンというバンドが凡百のメタルバンドとは違う部分の一つでもあったでしょう。

NWOBHMは、基本的には回帰のベクトルをもつムーブメントです。
グラムロックの影響が散見されるのも、そのためでしょう。ジャンル的にはまったく違うものの、そこはブリットポップとも共通する部分があると思われます。
しかし、ブリットポップの話でも書いたように、単に回帰するだけでは、おそらくすぐに飽きられてしまうわけです。そこで、ムーブメントが退潮していくときに、何かプラスアルファの要素を持っているかが問われることになります。そうなったときに、ロックンロールの地層を踏まえていることが重要な意味を持ってくる……ブリットポップでいえば、ブラーやレディオヘッドにはそれがあった。そして、NWOBHMでいえば、アイアン・メイデンやモーターヘッドにはそれがあったということじゃないでしょうか。

で、ディキンソンはアイアン・メイデンに大きなポテンシャルがあることを見抜いた。ゆえに、メイデン加入の道を選んだ。そして、ディキンソンが加入したことで、メイデンは大きく飛躍した……ということではなかったでしょうか。

そうすると、サムソンの側は、アイアン・メイデンになれなかったバンド、ということになります。
後にディキンソンがアイアン・メイデンを一時脱退した際にサムソン復帰の話があったともいいますが、これも結局、ディキンソンがメイデンのほうに復帰したことで流れてしまいます。そのすぐ後に、ポール・サムソンが死去したことで、サムソンはバンドとしての活動を終了するのでした。ニッキー・ムーアやクライヴ・バーなど、その他のメンバーもすでに死去している人が多く、再結成も難しいでしょう。存命のメンバーとしては、サンダースティックが一人気を吐いていて、今でも現役で活動しています。
そのサンダースティックが、自らのバンドで演奏している動画がありました。先ほどのRiding with the Angels もやっています。

Thunderstick - Live at Leos Red Lion 26th July 2019

こういうビジュアル面でのトリッキーな要素は、グラム志向の産物でしょう。後のお面系アーティストたちに影響を与えた元祖ともいわれています。
サクソンにも、アイアン・メイデンにもなれなかったバンド……そんなサムソンですが、ロックの歴史においては、一つのマイルストーンなのかもしれません。



Raven "Born to be Wild"

2024-10-15 22:17:27 | 音楽批評

オアシス再結成の話が、まだ巷を騒がせています。

先日は、アメリカのテレビ番組でギャラガー兄弟に扮したコメディアンによるコントが放送され、プチ炎上するなどということがありました。

それだけオアシスというバンドと、その中心であるギャラガー兄弟が注目されているということなんでしょう。

ところで……

ギャラガー兄弟といえば誰もがまずオアシスを思い浮かべるでしょうが、英国ロック史には、もう一組の“ギャラガー兄弟”が存在しています。

今回のテーマは、そちらのギャラガー兄弟。
ジョン・ギャラガーと、マーク・ギャラガー……この二人を中心に結成されたバンド、Ravenです。


Ravenは、いわゆるニューウェイヴ・オヴ・ブリティッシュ・ヘヴィメタル(NWOBHM)のバンド。1974年にデビューし、今年で50周年を迎えるレジェンドです。アニヴァーサリーを記念して、来月には来日公演も予定されています。

オアシスとはまったくジャンルが違いますが、こちらのギャラガー兄弟も、ムーブメントの追い風を受けた成功と、その失速の苦難を味わったといえるでしょう。
NWOBHMは70年代後半から80年代にかけて一つの大きなブームになったものの、80年代が終わるぐらいには失速。後のブリットポップもそうだったように、ムーブメントを享受してきたアーティストたちは時代の変化への対応を迫られることになります。そして、やはりブリットポップの場合と同じように、多くのバンドは、いったん解散し、しばらくの禊のような期間を経て、ムーブメントが完全に過去の一ページになったところで再結成……というような道をたどりました。アイアン・メイデンやモーターヘッドといった超大物でさえ、ムーブメント失速の影響を完全に回避することはできず、90年代を迎える頃には迷走といえるような動きをみせているのです。
レイヴンの場合も、その例にもれません。
彼らの場合、スラッシュ/スピードメタルの元祖ともいわれる疾走感が持ち味であり、これは90年代ロックの主流とは非常に相性の悪い要素だったため、時代との軋轢も大きかったのではないかと推察されます。
しかし、そんななかでもレイヴンは、しぶとく活動を継続しました。
ある種の迷走状態は避けられませんでしたが……ブームの失速で強い逆風が吹くとしても、耐え続けていればいずれ逆風はやみます。レイヴンは、逆風の時代をくぐりぬけ、半世紀にわたって活動を続けるレジェンドとなったのです。
ここに私は、時代の荒波に流されない美学を見ます。
なんのジャンルであれ、それが衰微しようとしていくときに、時流に抗ってそのスタイルを貫き続ける姿勢には、尊いものがあります。

彼らの代表曲の一つに、Born to Be Wild があります。

いうまでもなく、オリジナルはステッペンウルフ。
映画『イージー・ライダー』でボブ・ディランによって起用されたというロック史における伝説の曲ですが、歌詞の中にHeavy Metal という言葉が出てきて、音楽史においてはじめてこの言葉が使われた例ともいわれています。まさに、ヘヴィメタルの元祖といえる曲でもあるのです。その名曲をレイヴンは、ジャーマンメタルの雄アクセプトからウド・ダークシュナイダーを迎えてカバーしました。

Born to Be Wild (feat. Udo Dirkschneider) (7" Single Cover Version)

それから時が流れ……2015年、同じ曲をグリム・リーパーのスティーヴ・グリメットとともにやっている動画です。

Raven & Steve Grimmett (Grim Reaper) "Born to be Wild" @ The Underworld, Camden, London 25th Oct 20

グリム・リーパーもNWOBHMのバンドで、グリメットもまた、逆風の時代にメタルを貫いた人物といえるでしょう。数十年にわたって同じリングに立ち続けた同志というような感覚があるのかもしれません。グリメットは2年前に死去していますが、その最晩年の姿であることを思うと、また感慨があります。


NWOBHMは、言葉でこそニューウェイヴといっていますが、実際にはパンク方面の文脈でいうニューウェイヴとは真逆で、伝統重視が基本姿勢といわれます。英国ヘヴィメタルの伝統に回帰しようと……それが根底にあるからこそ、元祖ヘヴィメタルというべきBorn to Be Wild を取り上げたわけでしょう。NWOBHMのバンドにはグラムロック系の印象的なカバー曲があったりしましたが、それも同趣旨と思われます。

そのヘヴィメタルの伝統を21世紀の今日まで継承し続けるバンドの一つが、レイヴンなのです。
オアシスと違って、こちらのギャラガー兄弟は仲が悪いということもなさそうなので、今後とも末永い活動を期待できるんじゃないでしょうか。