今回は、ひさびさの音楽記事です。
このカテゴリーでは、もうだいぶ前のことになりますが、南こうせつ、伊勢正三というフォークシンガーについて書きました。それはかぐや姫のメンバーということだったわけですが……第二期かぐや姫には、もう一人のメンバーがいます。
それが、山田パンダさん。
ということで、今回とりあげるのはこのパンダさんです。
山田パンダ――本名、山田嗣人。
この方は、佐賀県の神埼というところの出身。
その後福岡県の筑後地方で少年時代を過ごしておられたということで……私にとってはほぼ同郷ということになり、そういう点でちょっと親近感があります。
パンダという芸名からはどこかほのぼのとした感じも漂ってきますが、非常に頭のいい方のようです。
中学校ではトップクラスの成績だったそうで、高校は久留米附設というところにいっていました。
このあたりは、まさに私の地元の話になってきます。久留米附設といえば、筑後近辺ではトップクラスの名門校。ここからも、秀才ぶりがうかがえるのです。
その附設は中退ということだそうですが、大学は明治と、これも名門に。
そしてその大学時代に、山田パンダさんはシュリークスというグループを結成しました。
このシュリークスに在籍していた保坂としえという人が後のイルカさん……というのは、いつかも書いたとおり。
そして、そのシュリークスを経て、パンダさんは南こうせつさんの第二期かぐや姫に参加するのです。伊勢正三というもう一人の才人も得て、かぐや姫は70年代フォークを代表するグループにのしあがった……というのも、以前書いたとおり。
かぐや姫が解散した後は、パンダさんもソロで活動。
また、今年亡くなった山本コウタローさんとも親交があり、山本山田というユニットをやったりもしていました。
ソロ活動では、フォーク界隈の大物がよく関わっています。
師と仰ぐ吉田拓郎さんをはじめとして、あの「神田川」の詞を書いた喜多條忠さんであったり、ギターの石川鷹彦さんであったり……作詞では、岡本おさみさんの作もありました。
そして変わり種なのが、この記事のタイトルに掲げた「明日の恋人」。
この曲にはなんとムーンライダーズが参加しているという……そこが私としては注目ポイントです。
ムーンライダーズといえば、日本を代表するニューウェイヴバンド。もはや、フォークの枠すら超えています。フォークの枠を超えるフォークシンガーは少なくないでしょうが……しかし、そうしてつながった先がよりにもよってムーンライダーズというのが、ただ者ではないという感を抱かせるのです。
こうして書いてきてみると、山田パンダさんの芸歴には、多くの重要アーティストが関わっています。
おそらく一般的な知名度はあまり高くないと思われますが、アーティスト仲間からはリスペクとされる、いわゆるミュージシャンズ・ミュージシャン的なところがあるのでしょう。かぐや姫にしても、はじめは断っていたのをこうせつさんが再三にわたって要請したために承諾したといいます。そのあたりも、パンダさんがミュージシャン仲間から受けていた評価の反映じゃないでしょうか。
最後に……
ふと思い立って神埼に行ってきたので、その風景を。
いかにも佐賀の田舎だなあと感じる風景です。
神埼にいたのは子供のころのごく一時期のようですが、パンダさんの曲を聴いていると、この風景が根っこのところにあるように思われます。
かぐや姫の「僕の胸でおやすみ」なんかがその典型だと思うんですが、からっとしていて、それでいてしんみりとした趣があり、どこか讃美歌めいてすら響く清冽さがあり……その原点が、佐賀の農村にあるのではないか。今回神埼にいってみて、そんなふうにも感じられました。