夢野久作企画「どんな夢を見ていた?」という舞台をみてきました。
ツカノマレーベル主催で、場所は住吉神社の能楽殿というところ。
なんでそんなところでやるのかというと、この企画が能と朗読劇のセットだからです。
能のなかの舞の部分だけを取り出して演ずる「舞囃子(まいばやし)」が前編で、後半では夢野久作の短編を朗読するという企画なのです。
夢野久作といえば、『ドグラ・マグラ』。
日本四大ミステリーなどにも数えられる、怪作です。あの作品のえもいわれぬ雰囲気と、哲学的示唆にも満ちた衝撃のラストには、すっかり感服させられました。そんな夢野久作の作品を扱う朗読劇ということで、行ってきました。
ちなみに、夢野久作は、福岡県の出身です。
「夢野久作」というペンネームは、「夢見がちな人」といったような意味の「夢の久作」という福岡の方言からきているのだそうです(その方言が実際に使われているのを私は聞いたことがありませんが……)今回、福岡でこの企画が行われたのも、彼が福岡の出身だからです。
撮影はもちろん禁止なので画像などはないのですが、中身についても触れておきましょう。
前半の舞囃子の演目は、「羽衣」。
有名な話ですね。能を生でみるのははじめてでしたが、能楽殿という空間でみると、独特の空気が生まれて、圧倒されました。
朗読劇では、夢野久作の短編「月蝕」が取り上げられました。
これは、今夜の皆既月食にあわせてです。
ツイッターなんかでも話題になっていたようですが、今夜は月がひときわ大きく見える“スーパームーン”と、一か月のうちの二回目の満月である“ブルームーン”、さらに、月が赤みを帯びて見える“ブラッドムーン”という現象が同時に起きており、そこへさらに皆既月食という特殊なシチュエーションなのです。
残念ながら福岡では雲が出ていて、それをはっきりと見ることができない状況ですが、夢野久作を堪能するにはうってつけの夜といえるでしょう。
朗読劇では、舞囃子で笛を吹いていた方も参加し、笛を交えながらの劇となっていました。
ツカノマレーベルの方によると、夢野久作は禅僧であり、また能の修業なんかもしていたそうで、能とは縁があるとのことです。
たしかに、能の舞台と笛の音は、夢野久作のあの世界観にマッチしているように思えます。
月蝕の象徴的な光景を描いた夢野久作の掌編と、妖艶に響く笛の音……夢幻の世界に酔いしれた、スーパー・ブルー・ブラッド・ムーンの夜でした。