ロック探偵のMY GENERATION

ミステリー作家(?)が、作品の内容や活動を紹介。
『ホテル・カリフォルニアの殺人』(宝島社文庫)発売中です!

鮎川誠さん、死去

2023-01-30 22:29:32 | 日記


今年は年初から悲しいしらせが続きましたが、今日、また大きな訃報がありました。

鮎川誠さんが死去……

昨日トム・ヴァーラインが死去したというニュースもあって、それについて何か書いたものかと考えていたところ、ニュースで知りました。

鮎川誠といえば、福岡が生んだロックスター。
昨年膵臓癌の告知を受けていたものの、それを公表することなく活動していたということです。

鮎川さんは、こんな活動もやっておられました。

3KINGS(鮎川誠、友部正人、三宅伸治)「ガソリンタンク」【RECドキュメントMOVIE】

3KINGSというのは、聖書に登場するいわゆる「東方の三賢者」のこと。
フォークのレジェンドである友部正人さんに、忌野清志郎との活動でも知られる三宅伸治さん、そしてそこに鮎川誠さんという布陣は、まさにその名にふさわしかったでしょう。

このレジェンドの冥福を祈りたいと思います。


Foo Fighters - A320

2023-01-28 17:40:48 | 音楽批評


今回も、音楽記事です。

1998年の映画GODZILLAで使われている音楽が豪華だという話をしてきましたが、エンドロールに並ぶ名前を見て、もう一つこれは捨て置けないというバンドがありました。

それは、Foo Fighters。

ということで、今回はフーファイターズについて書こうと思います。


たまたまですが、フーファイターズの名前は去年の暮れにアップした記事にも出てきていました。
ドラムのテイラー・ホーキンスが死去したという話……そこではさらりとしか触れませんでしたが、このバンドもまた90年代最強バンドの一つといっていいでしょう。

中心人物は、デイヴ・グロール。

いうまでもなく、グランジの伝説 Nirvana でドラムを叩いてた人です。
フーファイターズでは、ボーカル/ギター。ただ、ときにドラムに回ることもあり、その場合テイラー・ホーキンスがボーカルをつとめたりもしていました。

その例として、動画を一つ。
レッド・ツェッペリンの Rock and Roll のカバーです。
なんと、本家ツェッペリンからジミー・ペイジとジョン・ポール・ジョーンズがゲスト参加するという豪華なパフォーマンス。

Foo Fighters - Rock And Roll (Live At Wembley Stadium, 2008)

もう一曲、同じくペイジとジョンジーを迎えたツェッペリンのカバー Ramble on。
ここでは、デイヴ・グロールとテイラー・ホーキンスがポジションを交代しています。

Foo Fighters - Ramble On (Live At Wembley Stadium, 2008)

このメンツに囲まれて、物おじせずにボンゾの役回りをやってのけるのがテイラー・ホーキンスという人のすごいところです。

デイヴ・グロールは、かのニルヴァーナでドラムを叩いていたというだけあってドラムには非常にこだわりがあります。
過去フーファイターズに在籍していたドラマーには、デイヴのダメ出しを受けて脱退したという例もあり……そのデイヴのもとでこうしてポジションを交代するテイラー・ホーキンスの存在感はたいへんなものがあります。
そのテイラー・ホーキンスが死去したことは、バンドにとって大きな痛手でしょう。
バンドを今後どうするのかということはまだ未定のようですが、昨年テイラーへの追悼イベントが行なわれています。
そこで、デイヴ・グロールはThem Crooked Vultures のドラムとして登場しました。

Them Crooked Vultures - Goodbye Yellow Brick Road - Taylor Hawkins Tribute Concert (09/03/22)

このThem Crooked Vultures というのは、いわゆるスーパーバンド的なもので、ベースを弾いているのはジョン・ポール・ジョーンズ。このへんからつながりがあるわけです。
ちなみに、歌っているのはクイーンズ・オブ・ザ・ストーンエイジのジョシュ・オム。


ここからは、デイヴ・グロールのほうに話を移しましょう。
デイヴ・グロールという人は、意外とメディアへの露出が多く、YouTubeなんかを観ているとあちこちに顔を出しています。

たとえば、BBCラジオで披露したAC/DCのカバー、Let There Be Rock。

Foo Fighters - Let There Be Rock (AC/DC cover) in the Live Lounge

ガンズ&ローゼズとの共演。

Foo Fighters & Guns N' Roses at Firenze Rocks 6.14.17

ガンズとはニルヴァーナ時代に 確執もありましたが、その後和解しています。
まあ、もともとデイヴ・グロールはちょっとこっちよりなところがあると私は思ってますが……

その方向性をさらに推し進めて、エアロスミスのスティーヴン・タイラーが加わったパフォーマンスもありました。
曲は、エアロの Walk This Way です。

Steven Tyler, Slash, Dave Grohl, & Train “Walk This Way” Live (2014)

これはハワード・スターン・ショーという音楽番組で、その司会者であるハワードの誕生日を祝うステージということだそうですが、デイヴ・グロールは、このハワード・スターン・ショーの常連になっているようです。
下は、同番組でマウンテンのMississippi Queen をカバーした動画。

Foo Fighters Cover “Mississippi Queen” Live on the Stern Show

マウンテンの中心人物であるレズリー・ウェストが死去した後に、追悼の意味合いをこめたパフォーマンスです。
レズリーの死は、彼のマネージャーからコンタクトがあり、電話番号を教えてもらって連絡しようとしていた矢先のことだったそうです。

マウンテンというのも、方向性としてはガンズに近いものがあるでしょう。
そして、それ以上に“アメリカンハードロックの祖”というところが重要であるようにも感じられます。

やや方向性に違いはあるものの、前回とりあげたレイジと同様、デイヴ・グロールという人もロックの王道を踏まえているのです。

やはりジミー・ペイジが出てきて、ジョンジーが出てきて……と、ロック史の重要人物がからんでくるのはそういうことでしょう。
ロック史の重要人物ということでいえば、きわめつけはこの人。
昨年デイヴは、ポール・マッカートニーと共演しています。

Paul McCartney - Band on the Run (feat. Dave Grohl) (Glastonbury 2022)

デイヴのほうも、ある種現代のロックをしょってたつというような気概を持っているように私には思えます。

たとえば、先に紹介したレッド・ツェッペリンの Rock and Roll。
あれは、サードアルバムでアコースティックの方向を打ち出してファンの戸惑いと批評家の酷評にさらされたツェッペリンが次作で発表した曲です。「ロックンロール」という、そのまますぎるタイトルの曲を作る気概と覚悟がそこにありました。
あるいは、AC/DCの Let There Be Rock。
これは、旧約聖書の天地創造になぞらえて「ロック、あれ」という歌です。この選曲にも、どこかロックンロールを代表するというような、そんな気負いがあるやに感じられます。デイヴ・グロールは、そうしてロックンロールを代表するだけの実績を持っているのです。

いつだかフーファイターズがアリス・クーパーと共演した動画を紹介しましたが、デイヴ・グロールがむかっているのはアリス・クーパーの立ち位置なのかもしれません。
ロックという音楽が次第にマジョリティでなくなりつつある時代に、その船のかじをとるキャプテンというか……

Foo Fighter とは、第二次大戦中に目撃された未確認飛行物体のことです。

どこかの国の秘密兵器なんじゃないかとも噂された、幻の戦闘機……デイヴ・グロールは、そんなロックンロールの最終兵器を操ろうとしているんじゃないでしょうか。そのあたりが、私にはキャプテン・ハーロックにも重なって見えます。ロックの魂が滅びつつある世界で、その魂を守って闘うという……

最後に、映画GODZILLAで使用されていた曲、A320に触れておきましょう。
A320とはエアバスの飛行機のことで、「飛行機が怖い」と歌われるなんだか情けない歌です。

  重力がこの高さから俺を引きずり下ろすかもしれない
  いつか墜落するとしたら どうすればいい  
  さよならをいうこともできないままさ
  目を閉じて願おう 平穏な空の旅になることを

さまざまに解釈されうる歌詞ですが、フーファイターズ=ロックンロールの最終兵器という見方に立てば、また違った味わいも出てきます。
ロックが失われつつある地球で、果たして最終兵器フーファイターはどう戦い抜くのか――その航跡を、しかと見届けたいと思います。




Rage Against The Machine - No Shelter

2023-01-25 22:20:47 | 音楽批評

今回は、音楽記事です。

前回は、映画Godzilla のエンディング曲としてデヴィッド・ボウイの名前が出てきましたが……あらためて確認してみると、この映画は劇中で使用されている楽曲がなかなか豪華です。
たとえばエンディングは二曲のリレーになっていて、Heroes の前にはパフ・ダディがジミー・ペイジをフィーチャーした Come with Me という曲が使われていました。この曲はツェッペリンの「カシミール」をもとにしたもので、そこにジミー・ペイジが出てきているわけなので、そこだけ見ても豪華でしょう。

劇中では、当時はやっていたジャミロクワイが出てきたかと思えば、もとが日本の怪獣ということでかラルクの曲なんかも使われています。

そして、それらのなかでもひときわ輝くアーティストが、Rage against the Machine です。
というわけで、今回のテーマは、Rage against the Machine。


映画Godzilla では、No Shelter という曲が使われていました。

Rage Against The Machine - No Shelter (from The Battle Of Mexico City)

あらためて歌詞を見返してみると、曲中にGodzilla という単語があります。
ゴジラのサントラで初めて発表された曲であり、そのためなんでしょう。

ただ、なにしろレイジ・アゲンスト・ザ・マシーンです。歌の内容は、およそローランド・エメリッヒの映画に似つかわしくない過激なものになっています。
「第四帝国」という表現が出てくるなど……
歌の内容としては、マスメディアと商業主義のあり方を批判するものというのが一般的な解釈で、そうするとエメリッヒの映画なんかはむしろその批判の対象なんじゃないかとも思えます。この点については、あえてそのサントラに曲を提供すること自体が一種の皮肉という見方もあるようです。エメリッヒのほうも、深く考えずに受け入れたかもしれません。


ただ、映画ということでいうと、007のシリーズの何かでこの曲が使われていた記憶があります。

Rage Against The Machine - Sleep Now In The Fire (from The Battle of Mexico City)

これも、歌詞を読むとおよそ娯楽映画で流されるような内容ではありません。
ベトナム戦争で米軍が使用した枯葉剤を意味する「オレンジの代理人」という言葉が出てきたかと思えば、それに続いて「ヒロシマの司祭」という言葉が出てきたりします。それが何を意味するか日本人にとってはあきらかでしょう。
あと、私事ではありますが……もう十年以上前、投稿生活をしていた私がはじめて予選通過という成績を出せた作品が「炎のなかで眠れ」というタイトルだったんですが、このタイトルは Sleep Now in the Fire からとったものでした。そういう意味で、私にとっては思い入れの深い曲です。

そんなこともあるほど、レイジ・アゲンスト・ザ・マシーンは私のストライクゾーンど真ん中をせめてくるバンドです。
もちろん世間的にも高く評価されており、90年代最強バンドの一つといっても過言ではないでしょう。
ついでなので、代表曲をもう一つ。

Rage Against The Machine - Know Your Enemy (from The Battle Of Mexico City)

この上なくヘヴィなサウンドにラップを融合させたというところと、そのラップの内容が、ヒップホップというものが本来そうであったはずのラディカルさを持っていたこと……ここが、最強のゆえんです。

政治的にラディカルという点ではなかなかのものがあり、たとえばチョムスキーと対話したりもしています。

Rage Against The Machine - Interview with Noam Chomsky (from The Battle Of Mexico City)  



ただ、そういった最前衛をいきながら、きちんとロックンロールのルーツにも根差しています。

Renagade というカバーアルバムを出していて、そこではボブ・ディランをカバーしたりも。

Rage Against The Machine - Maggie's Farm (Audio)

原曲の面影をほとんどとどめていませんが、歌詞も労働者の搾取といった部分をより強調するものに一部改変されているようです。
60年代ロックにさかのぼる例では、他にもローリング・ストーンズの Street Fighting Man やMC5の Kick Out the Jam なんかをカバーしています。ストーンズなんかはむしろ批判の対象にもなりうるんじゃないかと思いますが、Street Fighting Man は路上の政治闘争を歌う歌。そういう観点でチョイスしたのでしょう。
また、ブルース・スプリングスティーンの The Ghost of Tom Joad もカバーしていました。
スタインベックの『怒りの葡萄』をモチーフにした歌で、やはり労働者への搾取ということが問題意識としてあり、チョムスキーとの対話で話していたNAFTAの件なんかともテーマ的につながってきます。

バンドとしてのレイジのバージョンではありませんが、レイジのギタリストであるトム・モレロがブルース・スプリングスティーンと共演した動画があります。

Bruce Springsteen and Tom Morello perform "The Ghost of Tom Joad" at the 25th Anniversary Concert

この組み合わせでは結構いろんなところに顔を出しているようで、以前クラッシュの曲をカバーしている動画を紹介しました。
ちなみにトム・モレロは、この記事の最初のほうで紹介した Come with Me にもギターとベースで参加しているということです。プロデューサー的な役回りだったそうで、ということはジミー・ペイジとも一定のからみがあったでしょう。
ディラン、ストーンズ、ブルース・スプリングスティーン、ジミー・ペイジ、クラッシュ……活動を追っていると、こんなふうにロック史に残るレジェンドの名前が次々に出てくる。そういう、ある種ロックの王道をきちんと踏まえているというところもレイジにはあります。ゆえに、レイジ・アゲンスト・ザ・マシーンは最強なのです。



David Bowie, Heroes

2023-01-23 21:11:55 | 音楽批評



先日このブログで、1998年版の映画GODZILLAについて書きました。


で、あの映画を見返していて、そういえばそうだったっけと思い出したことですが……エンディングでデヴィッド・ボウイのHeroes(のカバー)が使われていました。

David Bowie - Heroes (Official Video)

ボウイといえば、今月“ロックの日”ということで言及したばかりで……なにか縁のようなものを感じたので、今回はちょっとデヴィッド・ボウイさんについて書きたいと思います。まあ、あれこれ書けるほど詳しくもないんですが……


デヴィッド・ボウイは、なかなかキャリアが長く、その音楽人生のなかでいろんな顔をみせてきました。
初期の頃は、知的でシニカルな感じ。
それが後年には社会派的な方向性を出していく……先日の記事ではジョン・レノンのカバー曲というのをあげましたが、あのライブエイドに出ていたりするのもそういうことでしょう。
また、21世紀に入ってからは、HOPEというチャリティアルバムに参加したりもしています。これは、このブログで何度か取り上げましたが、イラク戦争開戦がせまるなかでイラクの子どもたちを支援するためということで制作されたもの。ボウイは、その当時発表したばかりの曲 Everyone Says Hi を提供しました。

‘Everyone Says Hi (Metro Mix)

多くのアーティストがカバー曲で参加している中、ボウイは自作曲。同じく自作曲で参加したアーティストにポール・マッカートニーがいるわけですが、ポールとはライブエイドでもLet It Be で共演しました。同じような道をたどっていったビッグスターといえるかもしれません。


初期のスタイルがある種の演出というか虚構であることは、あきらかでしょう。
たとえば、あのRebel Rebel での宇宙海賊めいた装い……特に深く考えなくとも、そのときどきで設定したキャラを演じているという部分はあるわけです。
そういう“演出”という点では、ミック・ジャガーと通じる部分があるかもしれません。ボウイは、ミック・ジャガーともコラボしています。

David Bowie & Mick Jagger - Dancing In The Street (Official Video)

ミック・ジャガーに比べれば、ボウイがまとったグラムロックの仮面はより刺激的であり、それゆえに桎梏となる度合いも大きかったでしょう。
ああいうかたちで世に出た場合、ずっとそのキャラを演じ続けることは無理があるので、キャリアが長くなればどこかでイメチェンすることになるというのは自然の成り行きといえます。


Jump They Say という曲があります。

David Bowie - Jump They Say (Official Music Video) [HD Upgrade]

「跳べ、とやつらはいうんだ」というこの歌は、リスナーから一つのイメージを背負わされ続けることへの嫌悪感を表明したものとも読めるでしょう。傷だらけになった自分に、それでもまだ跳べというのか、と。
観客が跳べというのなら傷だらけでも跳んでみせる、というのもエンターテイナーとしての一つのあり方でしょう。ボウイがコラボしたもう一人のビッグスターであるフレディ・マーキュリーは、そうだったかもしれません。しかし、ボウイはそういう道を選びませんでした。

それはそれで、いいでしょう。
問題は、イメチェンしてどういう方向性を出すかということです。
ボウイの場合、そこで社会的なメッセージみたいな部分が一つの側面として出てきたんではないかと。
ロックスターは、反逆や皮肉の仮面の奥にピュアな心を隠している――と、このブログではいってきましたが、ボウイもまた、そんな一人ではなかったでしょうか。



デヴィッド・クロスビー死去

2023-01-20 22:56:29 | 日記

デヴィッド・クロスビーが死去したというニュースがありました。

今年になってまだ一か月も経たないうちに、こう立て続けに訃報について書くとは……しかもなんというか、その一つ一つが非常にショックが大きい、そんな気がします。


デヴィッド・クロスビーは、バーズやクロスビー、スティル、ナッシュ(&ヤング)などの活動で知られます。
ウェストコーストの大物であり、このブログにたびたび登場するジャクソン・ブラウンとも親交がありました。
メイヤン号という船を所有していて、これはCS & N のWooden Ships という曲のモチーフともなっています。
ロックの殿堂での演奏動画があるので、リンクさせておきましょう。

Crosby, Stills & Nash perform "Wooden Ships" at the 1997 Hall of Fame Induction Ceremony

核戦争後に生き残った人々を描く歌……この名曲をジェファソン・エアプレインがカバーしました。
クロスビーはジャクソン・ブラウンのデビュー・アルバムにも参加していて、後年ジャクソン・ブラウンはクロスビーに捧げる歌を歌っています。
その曲 For Everyman の動画も載せておきましょう。
クロスビー自身もコーラスで参加。歌の一部は、メイヤン号の船上で書かれたといいます。

For Everyman