ロック探偵のMY GENERATION

ミステリー作家(?)が、作品の内容や活動を紹介。
『ホテル・カリフォルニアの殺人』(宝島社文庫)発売中です!

第16回『このミス』大賞 最終候補者発表

2017-08-31 17:07:19 | 小説
第16回『このミス』大賞の最終候補が発表されました。

『このミス』大賞2次選考通過作品

この一年ほど、主要な新人賞で「受賞作なし」が相次いで話題になりましたが、果たして『このミス』はどうなんでしょうか。注目です。

さて今回は、『このミス』大賞について書きたいと思います。
特殊な形とはいえ、私も一応ここの出身作家の端くれということになると思うので、このタイミングで“出身地”について書いておくのもいいかなと。
投稿者としてはだいぶ長いこと応募対象としていたので、応募者視点になるのですが、なぜわたくしごとき者が作品を発表することができたのか、そういったことも含めて書いていきます。


まず、『このミス』の特徴は、なんといっても出口の広さでしょう。

毎年、最終候補者というのは5~7名ほどいるわけですが、たいていの場合、そのうちの半分以上がなんらかの形でデビューします。
大賞、優秀賞が各1名、隠し玉が2名となると、これで4人。大賞が2人とか、優秀賞がないとかいった回もありますが、それでもほとんどの場合半分以上がデビューしているのです。

そこへきて、今年は「超隠し玉」というものが出ました。
私もその末席を汚すという僥倖にあずかったわけですが、これによって状況はさらに太っ腹なことに。第12回は7人中5人、第10回は6人中5人、そして第7回に至っては、結果として最終候補者5人の全員がデビューというフィーバーぶりです(※間接的なものも含む)。
もう少し補足すると、『このミス』では、ごく稀にではありますが、最終候補に残らなくても隠し玉として出版される場合があります。
また、予選を担当されている選考委員の方が、一次選考を通過していない作品を隠し玉で出せないかと驚くべきことをいっていたりもします。将来的に、ひょっとしたらそういうこともあるのかもしれません。
つまり、『このミス』大賞は、デビューにいたる筋道がかなり多い。投稿者の立場からみると、ここは大いに魅力になりますよね。


それから、『このミス』大賞のもう一つの魅力は、“ここだからこそ”という作品が出てくるということでしょうか。
つまり、ほかの賞だったら出てこないだろうな、というような作品が、日の目を見ることができるのです。
このことは、『このミス』大賞シリーズの作品をいくつか読めば容易に実感できると思いますが、今回の「超隠し玉」という企画もまさにその象徴だと思います。
(田中さんと春畑さん、このくだりが気に障ったらゴメンナサイ)

ご本人のブログによると、田中静人さんは、小説推理新人賞の最終候補に残っておられたそうです。また、春畑行成さんは、乱歩賞の最終候補経験者。そして、かくいう私も、横溝賞の最終候補となったことがあります。
それぞれ落選していて、『このミス』でも最終候補になりながら落選という経験をしているわけですが、そこを今回の「超隠し玉」で拾ってもらえました。
しかも、数年前の応募作を。

こういうところが、『このミス』大賞の懐の深さだと思います。

複数の賞でファイナルに進出しながら落選を繰り返す投稿者は、作品に何かしら看過しがたい瑕疵があるとよくいわれます。
しかしそれは、もしかすると“瑕疵”というよりも“アクの強さ”のようなもので、見ようによっては強烈な個性といえるのかもしれない……という考えかどうかはわかりませんが、ともかくも、よそでは選ばれなかった私(じつは、『メフィスト』の座談会に残って選に漏れたこともあるのです)を、『このミス』は拾ってくれました。
昨日まで選ばれなかった僕らでも、明日を待ってる……そんな、ピロウズのハイブリッド・レインボウ的な状況に、希望の船が迎えにきたようなものです。

といったようなわけで、小説の投稿をされている方は、『このミス』大賞を目標の一つにされてはいかがでしょうか。
とにかく、強い個性のある作品で勝負すれば、受賞できずとも出版にいたるケースはあるわけです。これを狙わない手はないでしょう。
今回の15周年企画「超隠し玉」のように、節目の年に何年も前の応募作が発掘されることもあるかもしれませんよ。
次は、150周年かな。

『ホテル・カリフォルニアの殺人』あらすじ・その2 謎のメッセージ 

2017-08-29 21:51:22 | 『ホテル・カリフォルニアの殺人』
前回に引き続き、テレビドラマの番宣ふうに『ホテル・カリフォルニアの殺人』のあらすじを紹介していきます。

刑事の捜査に協力することになったトミーですが、謎解きは、思うように進みません。

ひとまず犯人の候補として名前が挙がったのは三人。

・歌い手たちのナンバー2であるイザベラ
・事件の直前にやってきた謎の男ジョー・ギャツビー
・事件と前後して姿を消した先住民のベン

なかでも、もっとも怪しいのはイザベラ。
ナンバー2である彼女が、トップである歌姫の座を狙ってジョセフィーヌを殺害したという線が濃厚です。
しかし、彼女には鉄壁のアリバイがありました。
ジョセフィーヌが殺害された時刻には、ほかの女たちとともに団体練習をしていて、殺害現場に行くことは不可能なのです。
もっとも疑わしい容疑者に完全なアリバイが存在することで、早くも、事件解決は難航しそうな雰囲気です。


そんななか、ホテルの臨時従業員として書類の整理にあたっていたトミーは、奇妙なものを発見しました。

それは一枚の羊皮紙で、次のような文字が書かれているのです。




いったんは手を止めたものの、特に深く考えることもなく、トミーはそれをゴミ袋に放り込もうとします。
しかし、この文字に反応を示したのが、ジミー・クロフォード。

「ここに書いてある三つの名前のうちの初めの二つは、東方の三賢者だ」

ジミーはいいます。
そう。Balthazar と Melchior は、いわゆる「東方の三賢者」のうちの二人。そして、Solomon というのは、旧約聖書に登場するソロモン王のことなのです。

「これは、啓示かもしれねえ。俺はこいつがなにかの手がかりになると信じるよ」

そんなふうに色めき立つジミーに対して、トミーは冷静です。

俺の見るところ、神様というのはそんなに親切なお方じゃない。

しかしながら、これが事件に関係している可能性も考えられなくはない。
そこで二人は、この羊皮紙を刑事のボガートに見せてみることにしました。

トミーとしても、それほど期待をしていたわけではありません。
しかし、意外なことに、これが大きな反応を引き起こしました。

「こいつはもしかすると、福音かもしれんぞ」

ボガートは、かっと目を見開いていうのです。

「今回の事件の謎を解く大きな手がかりかもしれねえ」

彼がいうには、この三つの名前には共通点があります。そしてそれが、密室殺人の謎を解明する一つのヒントになるかもしれないというのでした。

やれやれ、とうとう刑事までが神頼みか。

半信半疑のトミーでしたが、しかし、刑事の推理は当たっていました。
これによって、謎解きは一歩前進することになるのです。

はたして、この三つの名前はなにを意味するのか……?

その答えは、ぜひ『ホテル・カリフォルニアの殺人』を読んで、確かめていただきたいと思います。
なにしろ“番宣”ですから。
では、どうぞ、よろしくお願いします。


『ホテル・カリフォルニアの殺人』は、こんな話。

2017-08-26 21:34:11 | 『ホテル・カリフォルニアの殺人』
今回は、テレビドラマの番宣ふうに、『ホテル・カリフォルニアの殺人』の中身をもう少し詳しく紹介します。

前回も書きましたが、砂漠をさすらっていたトミーとジミーがたどり着いたのが、ホテル・カリフォルニア。

二人はそこに泊めてもらおうとしますが、このホテルは超がつく富裕層のみが集まる高級ホテル。一泊するだけでも相当な金額で、トミーは宿泊を断念することに。

その代わりに泊めてもらうことになったのが、このホテルで行なわれるショーに出演する歌い手たちの宿舎。女たちのリーダーである“歌姫”ジョセフィーヌは、ホテルで下働きをするという条件で、宿舎に泊めてやろうといいます。

「それって不法就労なんじゃ……」

とトミーは異を唱えますが、ジョセフィーヌは

「外国人の不法就労はアメリカの伝統文化よ」

と一蹴します。
こうしてトミーは、アメリカの伝統文化をになう羽目になるのでした。

そうして下働きをしているさなかに、殺人事件が発生します。
事件の舞台は、ホテルに設置されたパーティー会場の一つである「紫の間」。
ここで、歌姫ジョセフィーヌが喉元に短剣を突き立てられて死んでいるのが発見されます。

「紫の間」の窓はすべて開かない造りになっており、扉は内側から施錠されていました。
つまり、殺害現場はいわゆる“密室”だったのです。



内側から鍵がかけられている以上、犯人は現場から出ていくことはできないはず。その密室状況で、犯人はいったいどうやって歌姫を殺害したのか……という謎を軸に、物語は展開していきます。



ここまでの紹介を読んでいただければわかるとおり、この作品はシリアスな話ではまったくありません。
肩の力を抜いて、童心にかえって、パズルやクイズを楽しむような感じで読んでいただけるといいんじゃないかと思います。コナンとか、金田一少年とか、そういう感覚ですね。

というわけで、最後はコナンふうに謎解きのヒントを提示しておきたいと思います。

「ワインボトル」

音楽好きの人にも読んでほしい、『ホテル・カリフォルニアの殺人』

2017-08-23 17:25:25 | 小説

今回は、音楽ジャンルのほうに投稿します。

拙著『ホテル・カリフォルニアの殺人』のPR記事です。



ここまでは、「小説」ジャンルのほうに投稿してきましたが、「音楽」ジャンルを閲覧している皆様がたにもPRさせてください。

とういのも、この作品は、音楽を主軸に据えたミステリーになっているのです。

タイトルはもちろんのこと、各章の章題もイーグルスの曲名になっています。



また、主人公であるトミーこと富井仁の名は、The Whoのロックオペラ“TOMMY”からとったもの。ここまでロックづくしになっているわけです。作中でも、音楽に関する知識が謎解きのヒントになっています。

「あんまり小説とか読まないから……」という方でも大丈夫。
自分でいうのもなんですが、「文章が読みやすい」という点に関しては、一定の評価をいただけていると思います。一人称のライトな語りが基本になっているので、ふだん小説を読まないという方でもさくさくと読み進められる……はずです。

というわけで、『ホテル・カリフォルニアの殺人』、どうぞ、よろしくお願いします。

 

ブロトピ:今日の生活・文化情報


『ホテル・カリフォルニアの殺人』内容紹介!

2017-08-22 22:18:15 | 『ホテル・カリフォルニアの殺人』


前回は出版にいたるまでの経緯について書きましたが、今回から、『ホテル・カリフォルニアの殺人』の内容について紹介したいと思います。

タイトルからもわかるとおり、この作品は、イーグルスの名曲「ホテル・カリフォルニア」をモチーフにしています。

また、12の章からなっているのですが、その各章の章題もすべてイーグルスの曲名。目次をみると、イーグルスのベストアルバムといった感じになるようにしました。



作品の舞台は、アメリカ西部に広がるモハーベ砂漠。

この砂漠のただなかに建つ、超豪華ホテル「ホテル・カリフォルニア」に、日本人ミュージシャンのトミーこと富井仁が流れつくところから物語は始まります。
トミーと同行者のジミー・クロフォードは、モハーベ砂漠で道に迷い、彷徨の末、偶然このホテルにたどりついて、宿泊させてもらうことに。そしてそのホテルで密室殺人が……という筋立てです。本作に対する評としてよくいわれることですが、ミステリーの“古典”的な作風がイメージとしてあって、登場人物のせりふ回しなんかもそこを意識しています。


ちなみに、作中に出てくる「ホテル・カリフォルニア」は、もちろん架空のホテルです。
実際には、モハーベ砂漠にそんなホテルは存在しません(たぶん)。イーグルスのアルバム『ホテル・カリフォルニア』のジャケット写真は実在のホテルですが、これも「ホテル・カリフォルニア」ではありません。

ただし、「ホテル・カリフォルニア」を名乗るホテルは存在していて、名曲のモデルであるかのようにふるまっていたところ、今年になってイーグルス側から訴えられたというのは記憶に新しいところです。

それはともかく……

ここで、自己PR的なこともしておきたいと思います。
(本来なら自分で書くことじゃないんでしょうが、誰もいってくれないので、仕方なく自分でいいます)

本作『ホテル・カリフォルニアの殺人』の最大のアピールポイントは、音楽と絡めた謎解きです。

“ロック探偵”と銘打っているとおり、主人公のトミーは音楽の知識をもとにして謎を解いていきます。
音楽を謎解きに使うミステリーはこれまでにもあると思いますが、音楽を主軸に据えて展開し、重要な場面では逐一音楽を手がかりにするミステリーというのは、新しいといえば新しいといえるんじゃないかと自分では思っています。

もっとも、この点に関しては、「音楽に偏重しすぎ」、「音楽に興味がない人にはわからない」といった厳しいご意見をいただくことも少なくありません。
しかし私は、個性というのは、それによって忌避されることも込みのものだと考えています。
ある特徴を個性として前面に出せば、それを嫌う人もいるでしょう。でも、それを覚悟のうえで、これが自分のカラーだと思う服を身に着けるのが、表現ということだと思います。公の場に作品を発表するということは、批判や誹りを受けることも覚悟したうえで、自分で選んだシャツを着て、自分で選んだ靴を履いて、堂々と通りを歩くということではないでしょうか。

……とまあ、大げさなことを言いましたが、要は、そこは趣味の問題ということで、広い心で見てほしいということです。

もとより、この本を発表するということを決めた時から、強い批判を受けるであろうことは予想していました。サンドバッグになる覚悟は固めています。そうした批判はもちろん批判として受け止めますが、基本的には、こういう作風が好きだという人に届いてくれればいいなというのが私のスタンスです。

今はとにかく、少しでも多くの人にこの本を手に取って読んでもらいたいと思っています。
そして気に入っていただけてたら、これにまさる幸せはありません。