ただ、時代がちょっと進んでいくと、WANDSの音楽にもだいぶ変化が見られました。そのへんまさに私はリアルタイム世代ですが、10枚目のシングル「Same Side」 が出た時に、だいぶ雰囲気が変わったなと感じた記憶があります。さかのぼって考えれば、その前のシングル Secret Night からその萌芽はあって、それがより前面に出てきたというところでしょうか。そして、上杉昇在籍時最後のシングルとなったWorst Crime……私は、このあたりのWANDSは結構気に入ってました。これが彼らの本来やりたかったことなんだろうな、と受け止めてもいました。(ただ、上杉さん本人が志向していたという80年代グラム系メタルよりは、90年代風のオルタナ/グランジに寄っている感もありますが)
しかし、おそらく路線変更をめぐってレコード会社側とは軋轢もあったものと思われ……WANDSは激変することに。ボーカルの上杉昇、ギターの柴崎浩という二人が脱退し、ほぼ別物のバンドとなるのです。大幅なメンバーチェンジを経た新生WANDSは、まるでDEENとかFIELD OF VIEWのようなバンドになっていて、その変化に愕然とさせられたものです。別にDEENやFIELD OF VIEW が悪いというわけではありませんが、WANDSに求めているものはそれじゃないという……実際のところ、この変化についていくことができたWANDSファンはそうそういなかったんじゃないでしょうか。
スリーピースのバンドで2人が脱退というだけでも相当なことですが、その二人がボーカル/ギターという、バンドのなかでも前に出るパート。もっといえば、WANDSというバンド名は上杉、柴崎両氏の名をつなげたものという意味合いもあるとされているのです(「上杉」は英語でWESUGIと表記されていて、Wesugi AND Shibasaki でWANDSという解釈がある)。なにか、“大人の事情”が働いているような印象も濃厚に感じられ……ビーイングブーム自体も新たなムーブメントに押されるかたちで終息していき、WANDSは低迷状態に陥ったといって差支えないでしょう。