ロック探偵のMY GENERATION

ミステリー作家(?)が、作品の内容や活動を紹介。
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2022年の終わりに

2022-12-31 22:40:15 | 時事


前ローマ法皇ベネディクト16世が亡くなったというニュースがありました。

年末になって、また一つ大きな訃報です。

最近このブログでは今年の訃報というのを書いてきましたが、国際政治の世界でもその種の話題がありました。たとえば英国のエリザベス女王であり、本邦の安倍元総理……このお二方については、このブログでも記事を書きました。
しかし、これもまた、あらためて振り返ってみるとほかにも大きな話題がありました。今年最後の記事として、特に印象に残っている件について書いておこうと思います。

ゴルバチョフ元大統領。
ゴルビーさん。
ソビエト連邦最初の、そして最後の、ゆえに唯一の大統領でした。
ペレストロイカ、グラスノスチ……と、民主化の方向性を進めた大統領と一般に評されているでしょう。
そういう人なので、プーチン大統領には批判的でした。NATO拡大に対する危機感は共有していたものの、今年のウクライナ侵攻には反対していました。プーチン大統領が先輩の意見にきちんと耳を傾けていれば、ロシアも今のような状態に陥らずにすんでいたことでしょう。
ちなみに、ソ連大統領として訪日した際の会談相手だった海部俊樹元総理も、今年亡くなりました。これも奇縁でしょうか。


江沢民元中国国家主席。
鄧小平の改革開放路線を引き継ぎ、中国が現在の大国となる礎を築いた指導者といえるでしょう。
比較の問題とはいえ、独裁者的性格を強めつつある現在の習近平に比べれば政治的にもリベラルよりだったと評されているようで……彼の死は、中国が大きな曲がり角を曲がりつつあることの象徴なのかもしれません。

この二人は、中国、ソ連という旧共産圏に君臨した二大国の転換期における指導者といえるでしょう。社会主義体制が崩壊したソ連と、まがりなりにも名目上それを維持した中国という違いはありますが……しかし、それからおよそ30年がたち、両国ともかつての抑圧的体制に戻りつつあるという印象です。すでに失敗であることが証明されているシステムへ……

ひるがえって、日本はどうでしょうか。

海部さんなんかは、戦後自民党政治がいったん限界を迎え崩壊にむかいつつあった時期の総理大臣といえるんじゃないかと思いますが……果たして、日本の政治はそのときと比べて改善されているのか。むしろ停滞、あるいは後退さえしていないか――現状そんなふうにも思えます。

明日からはまた新しい年がはじまるわけなので、閉塞的な状態が続く日本の政治にもそろそろ新しい風を吹きこませたいところです。



2022年を振り返る ~映画界~

2022-12-30 23:33:38 | 日記


今回も、今年の振り返り記事です。

訃報に関する記事というのを二回書きましたが……今年は、映画界においても巨星墜つ、というニュースが多くありました。
今回は、そうした映画界の訃報に関して書こうと思います。


映画界における訃報ということでは、宝田明さんの死去があったわけですが……あらためて振り返ってみると、東宝特撮関連ではほかにも大きな衝撃を与えたニュースがありました。

中野昭慶さん。
東宝特撮における名匠であり、あの『日本沈没』で特撮を担当しました。
『キングコング対ゴジラ』からゴジラシリーズに参加していて、『ゴジラ対ヘドラ』から84年版『ゴジラ』までの作品で特技監督をつとめておられます。
中野さんは宝田明さんとほぼ同年代で、同じく満州からの引き揚げを経験しています。そのときの経験は自身の特撮に反映されているようで……やはりゴジラシリーズというのは戦争の影をどこかに抱える宿命なのでしょう。

大森一樹さん。
この方も、今年亡くなったのでした。
平成ゴジラシリーズの2作品でメガホンをとりました。この方が『ゴジラVSビオランテ』を監督したことで、ゴジラ第二期シリーズの方向性が決定されたといえます。そして、同シリーズの最終作『ゴジラVSデストロイア』では脚本をつとめ、ゴジラの最期を描きました。
脚本は、『ゴジラVSモスラ』でも担当しておられました。『VSモスラ』には宝田明さんも出演しておられ……ここで宝田さんと映画における直接の接点もありました。

調べてみてちょっと驚いたのは、この方が『風の歌を聴け』という映画を監督していたこと。
これは、村上春樹さんのデビュー作にあたる小説を映画化したものです。といっても、私は観ていません……というよりも、あれを映画化したものがあったということ自体が驚きです。春樹さんとは出身中学が同じなんだそうで……それも驚きです。


そして今年は、海外の特撮界でも大物の訃報がありました。

ダグラス・トランブルさん。
『2001年宇宙の旅』『ブレードランナー』『スタートレック』『未知との遭遇』などを手がけた米特撮界のレジェンドです。いずれも特撮史上に残る古典的名作といえるでしょう。

こうして日米の特撮レジェンドが同じ年に世を去ったというのも奇縁という気がしますが、まだそれだけではありません。上に挙げた二つのSF大作『未知との遭遇』『2001年宇宙の旅』でメカニックデザインなどを手がけたコリン・キャントウェルという方も、今年亡くなっています。この方は『スターウォーズ』シリーズにも携わっていて、デススターや各種戦闘機などのデザインを手がけたといいます。

そして、『ブレードランナー』関連でもう一人。あの映画で音楽を担当したヴァンゲリスも今年死去しています。
その『ブレードランナー』メインテーマの動画を載せておきましょう。

Main Titles

ちなみに、このヴァンゲリスさん、イエスの鍵盤奏者に候補として名前が挙がったこともあるのだとか。たしかに世界観は共通しているように感じられます。


そして――特撮というくくりに入れていいかどうかはわかりませんが――さらに巨匠二人の名を。

ヴォルフガング・ペーターゼンさん。
『ネバーエンディングストーリー』の監督です。
他にも感染モノの金字塔『アウトブレイク』や、アドベンチャーの古典的名作をリメイクした『ポセイドン』、歴史大作の『トロイ』……と、名作を遺しました。
いずれも名作ですが、とりわけ『ネバーエンディングストーリー』は私が子供のころ大ファンだった映画です。
テーマ曲も名曲でした。その動画を載せておきましょう。

Limahl - Never Ending Story (Official Music Video)

もう一人は、アイヴァン・ライトマンさん。
『ゴーストバスターズ』シリーズの監督です。
昨年公開されたシリーズ続編『ゴーストバスターズ/アフターライフ』は、彼の息子であるジェイソン・ライトマンが監督とつとめました。

こうしてみてくると、一定の傾向があるようです。
80年代ごろに、SFX技術が飛躍的に発達して、それが映像表現の可能性を大きく広げたということでSFX映画黄金時代みたいな時期があったと思うんですが、そこで活躍した人たちが相次いで世を去ったということでしょう。日本の84年版『ゴジラ』なんかも、その一画とみなせる作品だと思います。
『ゴーストバスターズ』で思い出すのは、高層ビル群のなかに巨大なマシュマロマンが登場するシーン。子ども心には、ストーリーなんかはもはや関係なく、それだけでわくわくする映像でした。あの時代だからこそのわくわく……そういう一つの時代が、また一歩歴史の側に入りつつあるということでしょう。


ここで、特撮からはちょっと離れて……

モンティ・ノーマンさん。
映画関連といっていいかは微妙ですが……作曲家で、あの007のテーマを作曲した方です。
これは、じつにかっこいい。映画音楽史上に残る名曲でしょう。

James Bond Theme 007 - Dr. No // The Danish National Symphony Orchestra (Live)


最後に……今年の映画界における訃報といったら、これが一番大きなニュースだったでしょうか。
ジャン=リュック・ゴダールさん。
いわゆるヌーヴェルバーグの巨匠。後世の映画界に多大な影響を与え、先述した大森一樹さんも『風の歌を聴け』を撮る際にはゴダールを意識していたのだとか。

死因についてはいまひとつはっきりしないんですが、難病を抱えていたことから安楽死を選んで死去したともいいます。延命措置を止めるというようなものではなく、薬物による積極的安楽死……一部の国では合法化されており、ゴダールの居住するスイスではそれが可能だったということです。
以前テレビのドキュメンタリーで観たことがあるんですが、これはなかなか見ていて衝撃があります。まだ意識があり、普通に会話もかわせる状態で薬物を投与され、「さよなら、さよなら」といいながら死んでいくという……ある意味では、鬼才にふさわしい最期なのかもしれません。


2022年を振り返る ~統一協会騒動~

2022-12-28 22:25:09 | 時事


今回も、2022年を振り返る記事です。

今年日本で大きなニュースといえば……安倍元総理銃撃事件と、そこに端を発する統一協会騒動があります。

選挙期間中に元総理が銃撃を受けて死亡するという衝撃の事件から、統一協会というものの存在が大きくクローズアップされました。法外なカネを集める宗教と、政界とのつながり……以前から指摘されていたことではありますが、ここまでのものだったとは、と衝撃を受けたものです。


この一連の統一協会騒動をみていて、私は「裸のキリストには裸でしたがえ」という聖フランチェスコの言葉を思い出しました。
イエス・キリストは着の身着のままで救済のために活動したのだから、その後継者たちが蓄財して裕福に暮らしているのはおかしい……という清貧の思想です。

宗教の名のもとに百万単位の金を信者に要求してそのためには借金もさせるというのは、そりゃどう考えたっておかしいでしょう。

この件で信仰の自由の観点でどうなのかという声もありますが……まともな宗教とカルト宗教との区別はつけられるしつけなきゃいかんと私は思います。


かつて、キリスト教にワルド派という異端の宗派が存在しました。
ワルド派の教えは、清貧。
教会が財産を持っているのはおかしい、という思想です。つまりは、聖フランチェスコといっていることは同じなのです。
それが、なぜ一方は異端で片方は聖人になっているのかというと、それはカトリック教会側の態度が変わったからです。
教会としてみれば、一般信徒からむしりとった金でぜいらくな暮らしをしていたい。そのためには、ワルドの主張を認めるわけにはいかない。だから、異端というレッテルを貼って弾圧しました。しかし、やはりそれはどう考えっておかしいわけです。ゆえに、批判の声はやまず、フランチェスコの時代にいたって教会側も態度をあらためざるえをえなくなったのです。清貧を全面的に受け入れたわけではないにせよ、少なくとも、聖職者があまりに豪奢な暮らしをしているのはいかがなものかというぐらいにはなったでしょう。

ここが、まともな宗教とカルト宗教の違いだと私は思うのです。

つまり、キリスト教というのはもう二千年もやってきているので、長い時間のあいだに“やったらまずいこと”がある程度わかっていて、そうならない仕組みを持っているということです。

日本の仏教の例でいうと――これは金銭の話ではありませんが――たとえば禅寺で座禅なんかをやっていると、ときに見えないはずのものが見えたり、聴こえないはずの音が聴こえたりすることがあるんだそうです。しかし、修行者がその話をすると、指導僧は「それはただの錯覚だ」と切って捨てるといいます。これがカルト宗教だったら、「それはお前が覚醒しつつある証拠だ」みたいなことをいってカルトの方向にもっていくんじゃないでしょうか。まともな宗教なら、そういうことはしない。信者がやばい方向に向かわないようにする仕組みをもっているわけです。

老舗の宗教は、いうなれば、長い時間をかけて世の中と折り合いをつける術をもっているということです。
かけた時間の問題なのかと思われるかもしれませんが、それはたしかにあると私は思います。
千年単位の時間をかけて熟成されてきた教えには、それなりの真実が宿っているんではないかと。
「裸のキリストには裸でしたがえ」という思想と「借金してでも100万円の壺を買わないと地獄に落ちる」という思想が対等であるわけがないのです。

……と、やはりこの手の話題について書いていると気分が荒涼としてくるので……ここで一曲。
All My Trials です。

All My Trials (Norman Luboff) Virtual Choir production by Julie Gaulke (re-uploaded)

トラディショナルソングで、多くのアーティストに歌われています。
歌詞にはいくつかのパターンが存在するようですが、このオンライン合唱バージョンの冒頭部分では「信仰が金で買えるものだとしたら、富めるものは生き、貧しきものは死ぬことになる」と歌われます。

もう一曲、ブルーハーツの「青空」。
SeanNorthというグループのカバーで。

青空 / THE BLUE HEARTS Cover by SeanNorth

ここでは「神様にワイロを贈り天国へのパスポートをねだるなんて本気なのか」と歌われます。これは世界史のいわゆる贖宥状というものを踏まえた歌詞だと思われますが、やっぱり魂の救済にカネが関係しているというのはおかしいんです。




2022年を振り返る ~旅立ったミュージシャンたち~

2022-12-26 22:02:08 | 日記

2022年を振り返る記事の第三弾です。

今年はショックを受ける訃報が多かった――という話を先日書きましたが、これは海外の音楽業界でも同様でした。
もちろんこれも毎年ある話ですが、やはり今年はとりわけショッキングなニュースをいくつも目にした気がしており……今回は、それらについて書こうと思います。
ただ、なにしろ一年分のニュースをざっと見返してみると、亡くなったアーティストというのは相当いらっしゃるわけなので、取り上げるのは、そのなかでも私がかねてからよく聴いていた一部のアーティストということになります。一読して、あの人の名前が入っていないじゃないか、というのはあると思いますが……そこはご容赦を。


ドン・ウィルソン
ベンチャーズのギタリストで、創設メンバーの一人でした。
最近gooブログで渚ゆう子さんの「京都の恋」に関する記事を目にしたんですが、あれはベンチャーズの作った曲でした。そのベンチャーズ自身による演奏を。

Kyoto Doll


ジェリー・リー・ルイス。
ロックンロール草創期を支えたレジェンドと呼んでいいでしょう。
チャック・ベリーやリトル・リチャードといったこのあたりの人たちは意外と長生きしている……といつか書きましたが、ジェリー・リー・ルイスもまたしかり。87歳の大往生です。
そんなジェリー・リーがチャック・ベリーと共演した動画がYoutubeにありました。
キース・リチャーズやニール・ヤングも同じステージに。キースもニールも、二人のレジェンドからみれば若手ということになるわけです。
曲は、チャック・ベリーの「ベートーベンをぶっとばせ」。これは、以前このブログで一度紹介しました。ビートルズもカバーしている名曲です。

Chuck Berry, Keith Richards, Jerry Lee Lewis, Neil Young – "Roll Over Beethoven"

ジェリー・リーといえば、足でピアノを弾くなどのアグレッシブなパフォーマンスでも知られます。
上の動画はチャック・ベリーが主役という感じなのでジェリー・リーはあまり目立ちませんが……後半では肘プレイやケツプレイをみせてくれます。まさにこれこそが、ベートーベンをぶっ飛ばせということでしょう。


ビル・ピットマン。
アメリカ西海岸のセッションミュージシャン集団“レッキング・クルー”のギタリスト。
ロネッツのBe My Babyや、バーズの「ミスター・タンブリンマン」、ビーチボーイズのグッド・バイブレーション……といった曲でギターを弾いていたということです。いずれもロック史上に残る名曲といえるでしょう。
そのなかの、Be My Baby。

The Ronettes - Be My Baby (Official Audio)

ドラムを叩いているのは、同じくレッキングクルーのハル・ブレイン。
メインで歌っているヴェロニカさんは、後にフィル・スペクターと結婚してロニー・スペクターとして知られている人ですが、この方も今年亡くなりました。ハル・ブレインとフィル・スペクターも、ここ数年で相次いで世を去っています。時の流れはやはり残酷なもので……


イアン・マクドナルド。
キング・クリムゾン創設メンバーの一人です。サックス、フルート、メロトロン……と、さまざまな楽器をこなすマルチプレイヤーで、彼の存在がクリムゾンのプログレ世界を構築する大きな柱となっていたことは疑いようがないでしょう。
そのキング・クリムゾンが世にはばたくきっかけとなったのは、ブライアン・ジョーンズ追悼コンサートにおけるローリング・ストーンズのサポート。
下にその動画を。短尺バージョンで音質もおそろしく悪いですが……これが伝説の幕開けでした。

King Crimson - 21st Century Schizoid Man (Live at Hyde Park 1969)


ゲイリー・ブルッカー。
プロコル・ハルムの中心人物です。バンドとしてあまり有名ではないかもしれませんが、後世のロックに与えた影響は小さくはないでしょう。
ゲイリー・ブルッカーが歌う代表曲「青い影」は、多くのアーティストにカバーされました。

A Whiter Shade of Pale [50th Anniversary Stereo Mix]

この動画に使われているアルバムアートワークは何となくザック・ワイルドのギターに似ているような気がしますが……ザック・ワイルドも自身のバンドBLSでこの曲をカバーしました。


ウィルコ・ジョンソン。
この親日家ギタリストの死は大きなショックでした。
一度は末期癌と診断されたものの、それを克服して復活を果たし、2014年にはフーのロジャー・ダルトリーとコラボした新作を発表していました。

Wilko Johnson, Roger Daltrey - Going Back Home


オリビア・ニュートン=ジョン。
彼女の訃報も大きな衝撃でした。
長いキャリアの中でいろんな顔をみせてきた人ですが、Youtube で Xanadu の動画をみつけたので、そちらを。

Xanadu | Olivia Newton-John & Gene Kelly's '80s/'40s Hybrid E.L.O. Roller Disco

ELOとコラボしたヒット曲。
映画としてはうまくいかなかったそうですが……


キース・レヴィン
初期クラッシュでギターを弾いていました。
クラッシュは当初ギターが二人いて、そのうちの一人がキース・レヴィンでした。ただし、バンドがファースト・アルバムをリリースする前に脱退。ビートルズでいうスチュアート・サトクリフみたいな人です。ただ、ジョー・ストラマーに声をかけてクラッシュ加入を働きかけた人物ということで、重要な存在といえるでしょう。
その後、セックス・ピストルズを抜けたジョン・ライドン(ジョニー・ロットン)が結成したPublic image Ltd に参加。むしろ、このPiLのギタリストとしてよく知られています。

Poptones (Remastered)


ざっと振り返ってみたときに、特にドラマーが死去した話が多かったという印象があります。
というわけで、ここからはドラマーについて。



ジェリー・アリソン。
バディ・ホリー&ザ・クリケッツのドラマーでした。代表曲That'll Be the Day や Peggy Sue をバディ・ホリーとともに作った人でもあります。
前者はビートルズの前身バンドであるクオリーメンが初期にカバーし、後者はジョン・レノンがソロでカバーしました。いずれも、ロック史上に残る名曲といえるでしょう。
とりわけドラムが躍動しているペギー・スーの動画を。

Buddy Holly & The Crickets "Peggy Sue" on The Ed Sullivan Show

クオリーメンはビートルズとなるわけですが、虫の名前をバンド名にするというアイディアはバディ・ホリーのクリケッツからきているといわれます。
中心人物のバディ・ホリーは飛行機事故で世を去りましたが、その事故の数日前のライブに、ボブ・ディランが観客として参加していたという逸話も。その際に、バディ・ホリーと目が合ったというようなことをディランは語っています。どこまで信じていいのかはわかりませんが……ともかく、こうしてビートルズやボブ・ディランといったレジェンドにつながっていく、バディ・ホリー&ザ・クリケッツは、いうなればレジェンドたちのレジェンドなのです。


サム・レイ。
マディ・ウォーターズや、ハウリン・ウルフと共演、ポール・バターフィールド・ブルース・バンドにも参加……と、ブルース方面で活躍したドラマー。
1965年、ボブ・ディランの名盤『追憶のハイウェイ61』にも参加していました。同年、あのニューポート・フォーク・フェスティバルでもディランのサポートでドラムを叩いていたとか。
その『追憶のハイウェイ61』からタイトル曲を。
冒頭から随所で鳴らされるサイレンのような音を吹いて(?)いるのもサム・レイだそうです。

Bob Dylan - Highway 61 Revisited (Official Audio)

ちなみに、この動画に使われている画像はアルバムのジャケットですが、ディランの背後に下半身だけが写っているのは、ボブ・ニューワース。この方も、フォーク界の大物です。ジャニス・ジョプリンの「メルセデス・ベンツ」の共作者としても有名な人で、この人も今年亡くなっています。


ジョン・ハートマン。
ドゥービー・ブラザーズのドラムで、創設メンバーの一人でした。ドゥービーズは非常にメンバーの出入りが激しいバンドですが、やはり創設メンバーというのは特別な存在です。
代表曲の一つ Minute by Minute の動画を。

The Doobie Brothers - Minute By Minute (Official Music Video)



アラン・ホワイト。
イエスのドラマーとして有名でしょう。イエスに加入したのはビル・ブルフォードがキング・クリムゾンに移籍したためですが、その前にはジョン・レノンのプラスティック・オノ・バンドでドラムを叩き、エリック・クラプトンやクラウス・フォアマンとともにステージに立っていました。レコード音源では、「イマジン」でもドラムを叩ています。ジョージ・ハリスンの All Things Must Pass に参加したりもしていて、ものすごい人なのです。

下の動画は、2017年ロックの殿堂に登場したイエス。
ここでは、アラン・ホワイトに加えて、ジョン・アンダーソン、リック・ウェイクマン、スティーヴ・ハウとイエス黄金期(私の観点では)のメンバーが再結集し、Roundabout を披露しています。クリス・スクワイアはこの時点ですでに世を去っていたんですが、その代役としてラッシュのゲディ・リーがベースを弾くというものすごいことになっていました。

Inductees Yes Perform "Roundabout" Rock & Roll Hall of Fame 2017


D.H.ペリグロ。
デッド・ケネディーズのドラム
一時的にレッド・ホット・チリ・ペッパーズにも参加していました。
アメリカはパンクにとって不毛の地だというのが私の持論ですが、そんな米国にあって真にリアルなパンクをやっていたのがデッド・ケネディーズなのです。
下は、代表曲の一つ Holiday in Cambodia の動画。

Dead Kennedys - Holiday In Cambodia

年齢制限がかけられており、外部サイトでは再生できません。さらに、Youtubeで再生しようとすると、不適切、攻撃的な動画といった警告メッセージが出てきます。それでこそパンクというものでしょう。


ジェット・ブラック。
ストラングラーズのドラム。パンクの本場イギリスで、パンク勃興期を代表するバンドの一つがストラングラーズです。
ジェット・ブラックはちょっと経歴が特殊な人で、デビュー当時すでに40歳近く、酒屋やアイスクリームの会社を経営していたとか。そのアイスクリーム屋のバンをバンドの移動用に使っていたんだそうで、音楽のこととはまた違った部分で勃興期のパンクに貢献していたのかもしれません。
ただ、ほかのメンバーよりも一回り年齢が高いということは、それだけ早く老いに直面するということでもあり……パフォーマンスの質を維持できないということで、2015年にバンドを脱退していました。享年84歳ということで、大往生といえるんじゃないでしょうか。

The Stranglers - Skin Deep [Official Music Video]


テイラー・ホーキンス。
フー・ファイターズのドラマー。訃報の衝撃という点では、この人が一番大きかったかもしれません。ドラマーとしての存在感もさることながら、まだ死ぬような年齢ではなかったので……
死因に関しては薬物云々という話もあるようですが、まあ正直そこにあまり驚きはありません。ただ安らかにというのみです。

そのテイラー・ホーキンスが、ドアーズの存命メンバーと共演した動画があります。
これはたしか彼の死後に追悼の意味合いで公開されたものだったと思いますが……ここではドラムではなくボーカルとして、ドアーズの Love Me Two Times をカバー。

“Love Me Two Times” featuring Taylor Hawkins


2022年を振り返る ~ウクライナ戦争~

2022-12-24 22:57:44 | 時事


このブログでは、昨日書いたように、これからしばらく今年のできごとを振り返る記事を書いていきますが……

今日は、ウクライナ戦争と、それが日本に与えた影響について書こうと思います。

今年のできごととして一番大きいのは、やはりロシアによるウクライナ侵攻でしょう。
今日で、開戦からちょうど10か月となりました。
クリスマスイブでもあるわけですが、プーチン大統領も、戦争状態のままクリスマスを迎えることになるとは思っていなかったでしょう。大統領はまだ続けるつもりのようですが、さすがにそろそろ終わらせるべきだという機運は国際的に醸成されつつあるようで……来年には、なんらかのかたちで結末を迎えるのかもしれません。
と、ここで一曲。
「ハッピー・クリスマス」。
このブログでは何度もとりあげたと思いますが、今回はマイリー・サイラスがマーク・ロンソンとショーン・レノンを迎えたバージョンで。
今年はこの歌がとりわけ痛切に響きます。

Miley Cyrus, Mark Ronson ft. Sean Ono Lennon - "Happy Xmas (War is Over)" Official Performance |Vevo


もう一曲、やはり平和への祈りを歌ったPeace on Earth/Little Drummer Boy。
「ホワイト・クリスマス」で有名なビング・クロスビーがデヴィッド・ボウイとともに歌います。


Bing Crosby, David Bowie - Peace On Earth / Little Drummer Boy


ここから、日本の話を。

ウクライナ戦争は世界中にさまざまな影響を与えましたが、本邦における最近の動きとしては安保政策の転換ということがあります。
このなかで、反撃能力の保有も謳われていて、安保政策の大転換といわれるわけですが……その妥当性はかなり疑問といわざるをえません。

ひとつ確認したいのは、ウクライナがロシアの侵攻に対抗できているのは、必ずしも軍事的な備えをしていたからではない、ということです。
まあ、もちろんそれもあるにはあるんでしょうが、ウクライナ単独だったらここまでの抵抗はできなかったことは確かだと思われます。こうして持ちこたえ続けているのは、ウクライナが国際社会の支援を受けているからです。自力で応戦できるだけの十分な軍事力を持っていたからではなく、まして敵基地を先制攻撃したからでもありません。

いま日本で語られている“反撃能力”は、こちらが被害を受けていなくても攻撃可能というような話になっているようですが、それをやったらロシアの立場に立ってしまうわけで……むしろ攻撃した相手が国際社会の支援を受け、こちらは逆に制裁を受けるということになりかねません。そうなったら、日本の経済はおそらく三か月ももたずに崩壊するでしょう。
そういったことを考えても、いま政治家たちのあいだで語られている安全保障論は、とにかくフィジカルパワー一点張りの現実離れした空論に見えて仕方がないのです。


……と、この国の話をしているとやっぱり気分も殺伐としてくるので、またクリスマスの歌を。

セントルイス児童合唱団による Let There Be Peace on Earth。
「地上に平和を、私と一緒にはじめましょう」という歌です。

Let There Be Peace on Earth

最後に、シカゴの曲を2曲。

かたくなにアルバムに通し番号をつけ続けるシカゴの25枚目のアルバム『シカゴ25』は、クリスマスアルバムとなっていました。
そのなかから、Child's Prayer という曲。
歌っているのは、バンドメンバーの子どもたちで結成した少年少女合唱団ということです。

Child's Prayer

同じく『シカゴ25』からもう一曲。
やはりシカゴ児童合唱団で歌う、ペリー・コモのカバー One Little Candle です。「小さな灯りを灯そう、暗闇でつまづかないように」――この清らかな歌声で心を洗われてください。

One Little Candle