ロック探偵のMY GENERATION

ミステリー作家(?)が、作品の内容や活動を紹介。
『ホテル・カリフォルニアの殺人』(宝島社文庫)発売中です!

THEドラえもん展

2017-12-31 20:47:38 | 日記
昨日も書いた通り、わたくし、年末の休みを利用して上京いたしました。

知人に会うためというのが主目的ですが、せっかく東京にきたのだから、今ここでしかみられないものをみておきたい……ということで、東京滞在の最終日に、六本木ヒルズで行われている“THE ドラえもん展”に行ってきました。

一週間ほど前には、手塚治虫展に行きましたが、今度は藤子不二雄先生です。
拙著『ホテル・カリフォルニアの殺人』の解説には「藤子不二雄は王様、手塚治虫は神」とありましたが、不思議な巡り合わせで、王様と神様をはしごすることになりました。

といっても、厳密にいえば、これは藤子不二雄に関する展示ではありません。

気鋭の現代アート作家が、ドラえもんをモチーフにして作品を制作し、それらを集めた展示です。

場所はヒルズタワーの52階。



空中の通路をわたり、エレベーターで52階まで直行します。
六本木ヒルズなんてハイカラなところに足を踏み入れたのは初めてなもんで、そこから見える東京を撮影してしまいました。




最近はインスタ映えが重視されるためか、こうした展示も撮影可能ということが結構あるようで、今回のTHEドラえもん展も、ほとんどが撮影OKでした。なので、いくつかを撮影してきました。

入場するとまず出迎えてくれるのが、村上隆さんの作品。



これは、公式ガイドブックの表紙などにも使われている作品です。村上隆さんは今や日本の現代アートを代表する作家という位置づけだそうで、同じ「村上+漢字一文字」仲間として誇らしいかぎりです。一緒にするなと怒られるかもしれませんが……


こちらは、会田誠さんの作品です。



タイトルは、「キセイノセイキ ~空気~」。

いろんなことを考えさせられますが、昔はふつうに許容されていた表現がどんどん規制の対象になっていく風潮について一石を投じているように思われます。
会田さんといえば、政治・社会の問題に関する風刺を含む作風が特徴で、一昨年、東京都現代美術館での展示会で「作品が政治的」として館や都が問題視したという騒動があったりもしました。その際、作品の改変の要請、もしくは撤去を示唆するような発言が館側からあったともいわれます。そういう“空気”を表現したかったのかな……といったことも考え合わせると、じつに示唆に富んだ作品です。

こちらは、蜷川実花さんの作品です。



“ドラえもんとデート”というコンセプトで撮られた写真作品。


こちらは、奈良美智さんの作品……と並んで展示されていたもの。



ドラミちゃんがメインです。

ちなみに、トップ画像は、山口晃さんの作品です。


映像作品も多くありました。
映像作品は撮影不可なものが多かったので、ここで紹介することはできませんが、しりあがり寿さんの作品が印象に残っています。
観ていると思わず吹き出さずにいられない、ゆるさ全開の作品ですが、それでいて深い、唸らされる作品です。「ダメなニュース」ばかりで劣化している世の中をきちんとさせる「劣化防止スプレー」というものが登場します。そのうち、シリーズで何作か作ってDVDにでもならないかとひそかに期待しています。

グッズも買ってきました。

こちらは、漫画の一ページをプリントしたクリアファイルです。



何種類かありましたが、コミックス第6巻の伝説の最終回バージョンをチョイス。涙なしには読めない最終話……どれか一枚選ぶとしたら、もうこれしかないでしょう。

今回の“THEドラえもん展”、手塚治虫展とはまた違う意味で、刺激になりました。

本当は川崎にある藤子F不二雄ミュージアムにも行きたかったのですが、日程が合わなかったために今回はできませんでした。今度上京することがあったらそっちにも行こう……と思いつつ、福岡への帰路につきました。

東京にきています。

2017-12-30 18:42:10 | 旅行
年末の休みを利用して、東京にきています。

文庫のプロフィールや解説にもあるとおり、私は東京学芸大学という大学に在籍していました。なので、しばらく東京に住んでいたことがあります。
今年は、本を出版したということがあったので、この機会に集まろうという話になり、上京しました。

昨夜はサークルの人たちと、今日は同じ学科(英語科)の同期生との集まり。

久しぶりにみる顔が多かったです。
最短で、3、4年ぶり。長い人だと、15年ぶりぐらい......こうして書くと、年をとったなあ、としみじみ感じます。ですが、なんだかみんな元気に頑張っていて、ほっとするような気持になりました。

せっかくなので、大学やその周囲もみてきました。
大学の構内も変わっているところは結構ありましたが、講義棟などはほとんどそのままでした。



年末なので人の姿はほとんどありませんでしたが、ここで暮らしていた日々のことが思い起こされました。あの頃は、作家になるなんてまったく思っていなかったなあ......

また、大学の近所に某大手レンタル屋兼書店があるのですが、そこに行くと、拙著がオススメの本として置いてありました。付近にある大学の出身者だからということでしょうか。ありがたいかぎりです。

今回の集まりでは、また来年もやろうという話になりました。
今度上京するときは、ぜひとも新刊を引っ提げていきたい......そのためにも、ちょっと気合を入れていこうと思いました。

高杉良『燃ゆるとき』

2017-12-28 22:31:01 | 小説
 

高杉良さんの『燃ゆるとき』を読みました。

久しぶりに読む経済小説ですが、なかなか痛快な話でした。

主人公は、東洋水産の創業者である森和夫氏(1916-2011)。
東洋水産といわれてもピンとこないかもしれませんが、マルチャンブランドで「赤いきつねと緑のたぬき」を製造している会社だといえば、だれでも知っているでしょう。
日本の食品業界を代表する大企業ですが、「横須賀水産」として発足した当初は、たった五人の零細企業でした。それが、30年で、売上高1千億円、従業員1800人で、海外にも展開する大企業となったのです。
そのサクセスストーリーは、まるで戦国時代の毛利元就のようです。
当初は一介の国人領主に過ぎなかった毛利が、大国の庇護下から独立し、大大名に育っていくという……
すごいのは、森和夫氏が徹底的に正攻法でいくというところです。
毛利元就というと卑怯な策を使うイメージもありますが(元就ファンは怒るかもしれませんが)、この森和夫氏の場合は、卑怯な手は使わないんですね。
たとえば、まだ中小企業だった頃、東洋水産は、系列の親玉である商事会社から不当な扱いを受けるのですが、それに対して森さんは、相手の横柄な態度に屈することなく敢然と立ちあがります。そんな不当な扱いを受ける筋合いはないから辞表を出して社長を辞める、というのです。
すると、相手の側はころりと態度を変えます。こいつに出て行かれては大変だというので、それまでの態度が嘘のように、引き止めにかかってくるのです。かっこいいですね。

やがてその商事会社の系列からも離れて独立を果たし、業界最大手のライバル会社とも衝突し、法廷闘争に発展しますが、ここでも森さんは正面から戦います。自分の側に理があるという確信のもとに、堂々と渡り合い、事実上の勝利をおさめるのです。

このように筋の通った経営者であればこそ、バブルの時代にも、財テクには手を出しませんでした。
また、勲章も拒否することを宣言していたそうです。

こういう、曲がったことはやらない、不当な圧力には屈しない、という気骨のある経営者は、残念ながらそうそういないでしょう。
もしこういう人がたくさんいれば、最近相次いで明らかになった企業不祥事も起こらずにすんでいたんじゃないかと思えます。

Eagles, Please Come Home for Christmas

2017-12-25 17:33:26 | 音楽批評
今日は12月25日。
クリスマス。
ということで、なにかクリスマスソングについて書こうと思いました。

候補はいろいろありますが……
イーグルスの「プリーズ・カム・ホーム・フォー・クリスマス」という歌を取り上げます。

もっと有名な歌がいくらでもあるわけですが、なにしろ『ホテル・カリフォルニアの殺人』でデビューし、このブログでも、当初はイーグルスの曲をメインに取り上げてきました。なので、今年はイーグルスでいこうと思います。

といっても、正直なところ、それほど特筆するようなことがある歌でもありません。

とりあえずクリスマスの歌でも作ってみるか……みたいな感じで作ったような歌です。
歌詞は、山下達郎さんのような感じで、ハッピークリスマスではなく、クリスマスなのに悲恋という内容。お前は俺から離れていく。ひどいじゃないか。クリスマスには家にきてくれよ……というわけです。

それにしても、あまりクリスマスっぽい感じはあまりしないな、と私は思います。
冒頭でベルとともに鳴るピアノや、ギターの音色なんかにクリスマスらしくしようという意識は感じられますが、イーグルスの音楽は、やっぱり西海岸のカラッとした感じが基調なので、クリスマスのような感じにはなかなかなりません。まあ、これはこっちがもともともっているイメージのせいかもしれませんが……しかし、歌詞のなかに「きよしこの夜」とか「クリスマスキャロル」といった言葉をちりばめてあるのも、音楽だけではクリスマスにならず、どうにかしてクリスマスのイメージを喚起しようと言葉に頼る苦肉の策のように思えてしまうのです。




こちらは、私が住む町のクリスマス・イルミネーションです。
クリスマスというのはやっぱりこんな感じだと思うんですが、イーグルスでは、なかなかこういうふうにはならないですね……

福島清彦『ヨーロッパ型資本主義 アメリカ市場原理主義との決別』

2017-12-22 16:06:05 | 日記
 

福島清彦さんの『ヨーロッパ型資本主義 アメリカ市場原理主義との決別』(講談社現代新書)という本を読みました。

日本の経済議論はアメリカ型の資本主義に傾きがちですが、進む道は決してそれだけではないということを教えてくれる良書です。
アメリカ型の資本主義は不可避的に富の二極分化、格差社会を生み出す……2002年に出版されたこの本は、そう警鐘を鳴らしていますが、それから15年たった今、格差社会はもう現実のものになっています。このままアメリカ式の資本主義を続けていっていいのか。そういうことを考えさせられます。

また、経済だけでなく、欧州の政治や社会のあり方、そして、そこに至る歴史についても書かれています。
私が注目したのは、「現代ヨーロッパの父」として紹介されているジャン・モネという人物です。
この人は、第二次世界大戦の終結後、ドイツとフランスがどうしたら新たな戦争を起こさずにすむかということを考えました。
戦後ドイツは連合国に占領されましたが、当然いずれは独立を回復します。そうなれば、いつかドイツは国力を回復して、またフランスに侵攻してくるのではないか……そういう恐怖がフランス国民にはありました。
では、どうすれば戦争は起きなくなるのか。
そのための方法として、モネは、独仏の石炭や鉄鋼を国際共同管理にすることを考えました。
両国で生産される石炭と鉄鋼を、国際管理下に置く。そのことによって、ドイツとフランスの戦争は不可能になる…… この驚くべき提案は、実行に移されました。
ECSC(欧州石炭鉄鋼共同体)の誕生です。
経済が主眼ではなく、戦争が起きないようにすることを目的として、このシステムは作られました。そしてこれが、いまのEUにまでいたる欧州統合の出発点となっているわけです。

何もしないでいて、いつの間にか平和になったわけではないんですね。
戦争を起こさないためにはどうしたらいいかということを真剣に考え、それを実践したからこそ、欧州諸国は新たな戦争を起こさずにいられるのです。
昨今、東アジアの情勢は緊迫した状態にありますが、戦争を起こさないための欧州の工夫に学んだほうがいいんじゃないかと思いました。