ロック探偵のMY GENERATION

ミステリー作家(?)が、作品の内容や活動を紹介。
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長谷川町子『サザエさん』

2021-01-30 22:38:41 | 漫画

今日は1月30日。

長谷川町子の誕生日だといいます。

国民栄誉賞も受けた漫画家……

今日はじめて知ったんですが、去年が生誕100年だったということで――まあ、今日を迎えたことで生誕101年となったわけですが――その生誕100年にあわせて、版権の問題で入手が難しくなっていた『サザエさん』の単行本が、再刊行されたりもしているようです。

 
『サザエさん』は、いうまでもなく、長谷川町子の代表作。

私が子供の頃、我が家には『よりぬき サザエさん』の単行本があり、よく読んでいました。

ユーモアセンスと、裸の王様を撃つ風刺精神……それは、新聞に連載される4コマ漫画として一つの理想形だったのだと思います。戦時中にスパイの疑いをかけられて一時身柄を拘束されたこともあり、その経験から軍国主義に対する嫌悪感を持ってもいたようです。さすがに『サザエさん』にあまりそういうことは書かれていないと思いますが、はっきりとそれを表明した作品が一本あったことは記憶しています。


敗戦後の占領期、まだMPというものが存在している時期にはじまった作品なんですが……しかし実は、このサザエさんという作品は、その時代から見た“古き良き時代”つまり、昭和初期ぐらいを念頭において描かれているといいます。
ということは、あの作品に描かれているのは、100年前の日本……道理で、磯野家の立地や家族構成などが奇妙なものになっているわけです。21世紀令和のいま、それはもはや時代劇といってもいいぐらいのレベルです。

しかし、それがいまでもアニメとして放映され続けている……これは、なかなかすごいことかもしれません。
原作は、新聞連載という性格上、しばしば時事問題も扱ってきました。また、意図せずして世相を反映している描写も多々あり……そんな『サザエさん』は、ある意味では近代日本の写し鏡でもあるのでしょう。





菅総理の生活保護発言

2021-01-29 20:07:22 | 時事



菅総理の生活保護発言が物議をかもしています。

去年あった特別定額給付金を再給付する考えがあるかという質問に対して、これを否定しつつ、「最終的には生活保護がある」と述べ、これが猛烈な批判を受けています。

まあこれは、批判されてもしかたがないでしょう。

生活保護は最後のセーフティネットであり、今回の新型コロナのために作られたわけでもありません。コロナ禍で困窮している人をそこに投げ出してしまっているともとれる発言であり、無責任のそしりは免れないところです。

ほかにも、生活保護の受給は現実にはかなりハードルが高いとか、雇用を失った人が生活保護に押し寄せればそれは結局財政を圧迫することになるとか、現実の運用という面でもさまざまな問題点が指摘されています。
いまの状況を考えれば、生活保護という最後のセーフティネットの前に、もう一段のネットが必要なのは自明でしょう。
セーフティネットが脆弱なまま“自助”とか“自己責任”一辺倒の姿勢では、コロナ感染拡大を止められない。これは、この一年ほどでもうはっきりしています。“公”“社会”というものの復興なくしては、コロナ禍に対処することはできないのではないでしょうか。




かまやつひろしとハニー・ナイツ「殺し屋のテーマ」

2021-01-27 19:13:22 | 音楽批評



先日、このブログでムッシュかまやつについての記事を書きました。

4ひろしの中でも、もっとも活躍したひろし――

そんなかまやつさんの名前が出てきたついでなので、今回は彼のデビュー曲について書こうと思います。

その名も、「殺し屋のテーマ」

かまやつひろしはスパイダース参加前からミュージシャンとして活動していて、これがデビューシングルといいます。
もっとも、オリジナルではありません。もとは Murder by Contract という映画のテーマ曲で、そこに歌詞をつけて歌っているということらしいです。

ここまでくるとなかなかマニアックな領域らしく、ググってみてもほとんど情報がありません。
後ろでコーラスを入れているのがハニー・ナイツだということなんですが、どういう経緯でそうなったのか……謎です。

ここで、そのハニー・ナイツについてもちょっと書いておきましょう。

ハニー・ナイツといえば、その代表曲として挙げられるのは『妖怪人間ベム』の歌でしょうか。あるいは、伝説的な下ネタソングのアレでしょうか。まあそのあたりが有名なところだと思われますが……彼らは意外なところにも顔を出します。
というのは、あの『ゴジラ対ヘドラ』のテーマ曲「かえせ! 太陽を」でもコーラスをつとめているのです。

『ゴジラ対ヘドラ』は、このブログで以前紹介しました。
ゴジラシリーズのなかでも、サイケデリック趣味を出した異色作……その作品にヒロインとして出演している麻里圭子さんがテーマ曲を歌い、そのバックにハニー・ナイツもコーラスとして参加しています。「か~えせ~」というコーラスは、あの映画にじつにぴったりでした。

こんなふうにみてくると、ハニー・ナイツというのはなかなかツボをおさえたアーティストです。
そんなハニー・ナイツがバックについた、かまやつひろしのデビュー曲「殺し屋のテーマ」は、実は日本音楽史に埋もれた名曲なのかもしれません。




貞子と伽椰子の戦いを振り返る

2021-01-25 19:38:29 | 過去記事

『貞子vs伽椰子』

映画記事として、最近“vsモノ”について書いています。その延長で、今回は『貞子vs伽椰子』という映画について書きましょう。この映画が公開されたのは、2016年。感覚として......


過去記事です。

映画『貞子VS伽椰子』について書いています。

その予告動画。


映画『貞子vs伽椰子』予告編

元記事でも書いたとおり、もはやホラーといっていいのかという映画ではあります。
先日『ドクター・スリープ』について書きましたが、基本的にはあの映画と同じことがここでも起こっています。人間に利用される存在に“なり下がった”うえに、二人が出てくることで結果としてお互いが相対化され、問答無用の絶対的存在ではなくなっているのです。

その意識は作り手の側にもあるようで、もはやコメディ扱いのプロモーションが行われました。
YouTube で、その手の動画がいくつも出てきます。一部を紹介しましょう。

「貞子vs伽椰子」デーモン閣下with貞子、伽椰子、俊雄 コメント映像

貞子vs伽椰子が恐怖の始球式(映画 リング)

「貞子vs伽椰子」総選恐 貞子 政見放送

貞子、“総選恐”で伽椰子に勝利!“無言のバンザイ”披露 映画「貞子VS伽椰子」初日舞台あいさつ2 #Sadako vs Kayako #movie

まあ、これはこれでいいんです。
あくまでも、夢の対決なので……



ムッシュかまやつ「 ノーノーボーイ」

2021-01-23 17:49:19 | 音楽批評


今回は、音楽記事です。

このカテゴリーでは、1960年ごろに「3ひろし」あるいは「4ひろし」と呼ばれていたアーティストたちについて書いてきました。今回は、その最後の一人であるかまやつひろしについて書きましょう。

かまやつひろし――またの名を、ムッシュかまやつ。

4ひろしのなかで、もっとも息の長い活躍をした人といえるでしょう。彼だけは、21世紀になってもテレビでその姿を見ることがごく普通にありました。
2017年に亡くなった際には、その訃報がワイドショーなどでも大きく取り上げられ、スパイダースの仲間だった堺正章さんや井上堯之さんともども、いまでも人気健在であったことを知らしめたのです。

以前あるテレビ番組に出た際、スパイダース時代に空港で荷物番をしていたら、たまたまそこにいたフーのキース・ムーンに「お前、スパイダースだろ」と声をかけられたというエピソードを語っていました。キース・ムーンも知っている。そんなスパイダースは、たしかに60年代の日本においてもっともロックンロールな場所にいたといえるでしょう。

父親は、ティーブ釜萢というジャズミュージシャン。

そこからくる音楽的素養が、スパイダースの活動に寄与していました。当時のGSグループとしては珍しくスパイダースは自作曲をやっていましたが、ムッシュの作曲能力がそこでいかされているのです。
そして、その楽才をもって、その後も、陰に日向に日本の音楽業界で活躍してきたのでした。裏方としては、ユーミンさんのデビューをプロデュースしたことでよく知られますが、この一事だけをとっても、日本歌謡曲史においてムッシュがどれだけ大きな存在であったかがわかるでしょう。


その長いキャリアは、活動範囲の広さにもつながってきます。

以前の音楽記事で、ひろしたちはロカビリーを放棄したと書きましたが……これは、かまやつひろしについてもいえるでしょう。
アニソンやCMソングなども手がけていて、そのオールラウンダーぶりから「カメレオンアーティスト」とも呼ばれたそうです。

これはネガティブにもとれる表現ですが……ただ、ムッシュが自身の音楽性を変化させていったのは、本邦音楽界における歌謡曲の圧力に屈してというよりも、もう少しポジティブな側面があるようにも感じられます。旺盛な探求心でさまざまな音楽ジャンルに進出していったというような……

その一環が、たとえば吉田拓郎さんとの共同作業でしょう。
拓郎さんの手になる「我が良き友よ」は、フォーク方面へ進んでいくきっかけとなりました。
意地の悪い見方をすれば、フォークが流行っているからそこに便乗というふうにもとれますが……これは小説の世界でいえば、高木彬光が社会派小説や歴史モノのジャンルに進出していったことと重ね合わせられるんじゃないかと思います。

であればこそ、「我が良き友よ」がヒットしても、ムッシュはフォークにこだわりはしませんでした。

まだまだ自分は成長したいし、もっと新しい音楽を見たいし、クリエイトしたい、と死ぬまで思い続けていた――ムッシュをリスペクトするChar さんは、彼の心境をそう評しています。

最後に動画をのせておきましょう。

Char さんの名前が出てきたので、Char さんとともに演奏している「ノー・ノー・ボーイ」です。
スパイダース時代にムッシュが作曲したもので、ソロでもセルフカバーしている曲。スパイダースバージョンや、ソロバージョン、そしてこのステージでやっているバージョンを聴き比べてみれば、いかにムッシュの音楽的守備範囲が広かったかがわかるでしょう。



Rock Free Concert - ノーノーボーイ(feat. ムッシュかまやつ)